オネーギンの手紙 | 旧ブログ

オネーギンの手紙



岸 仁美さんの月刊「ぺるそーな」10月号の
私の映画は、オネーギンの手紙

岸さんはこの夏、そのオペラを実際にイギリスの町で
見てきたのです。
その紹介をまず、

「英国ロンドンから南へ約90キロメートル、
ルイス(Lewes)という田舎町に、夏になると、
ブラックタイとイヴニングドレスを身に纏った紳士淑女が集まる。

有名なオペラフェスティバル、
グラインドボーン音楽祭(Glyndebourne Festival Opera)が
毎年夏に開かれるのだ。

オペラ鑑賞の幕間に、16世紀に建てられた
邸宅の庭園でワイングラス片手にピクニックを楽しむ。

愛する妻のためにと敷地内に建てられたオペラハウスは、
貴族たちの社交場であった。
しきたりを重んじる伝統的な鑑賞スタイルは、
今もなお形を残し、当時の優雅さと品位を高め合う空間を蘇らせている。」

岸さんもイギリスの習わしに従い
日本女性の正装として着物で音楽祭に出席したそうです。
日本の女性には和服という最高の武器があります。

そこでのオペラの演目は、まさに
チャイコーフスキイ作曲「エヴゲーニイ・オネーギン」だったそうです。

そこで今月の岸さんの映画鑑賞は
「オネーギンの手紙」

「・・・1820年頃のロシアの田舎が舞台。

・・・オネーギンの突然の訪問に戸惑いつつ、
理知的で且つニヒルな眼差しの彼に
タチアーナはたちまち心を奪われてしまう。

夢に現れた憧れの人が目の前に現れたのだ。
彼を一目見て、「この方だわ!」と
運命的な出会いを確信する。彼女の心は愛の炎で熱くなり、・・・

・・・オペラ「手紙の場」では、
「あなたと出会うために生まれてきた。
これは宿命、私はあなたのもの。」と、
タティアナの愛の告白が熱唱される。

偽善と虚飾に彩られた人間社会に、
虚しさと嫌気がさしているオネーギン。
(タティアナの純情な愛を認めながらも)

・・彼の高慢なプライドが、それを許さなかった。
この気持ちを認めれば、今までの人生を否定することになると……。

変化を恐れ素直になる勇気を持てなかったオネーギンは、
・・・タティアナの前からも姿を消した。

・・・彼は宿命に逆らう人生を一路辿るのであった。
数年後、流浪の旅から帰国したオネーギンは、
久しぶりの舞踏会で、従兄の公爵夫人と
なって美しく成長したタティアナと再会する。

・・・オペラ作品として有名なこの「エヴゲーニイ・オネーギン」は、
ロシアの文豪プーシキンによって書かれた韻文小説である。

・・・プーシキンの詩が旋律になっているとは言え、
音楽を聴くとチャイコーフスキイの想像力はやはり天才である。

・・・惨めで孤独な人生を送っているオネーギンが、
真の幸福と愛を獲得しようと、
過去の過ちを認め、
初めて自分に素直になって告白しようとする。

・・・・手紙を書く時の彼は、
昔の冷ややかな眼差しから正気の輝きを放っていた。

映画ではチャイコーフスキイの音楽が一切出てこない。
オペラとは独立した作品である。

まったく異なる音楽で場面をデザインすることにより、
オペラでは見えなかったプーシキンの言葉が、
より一層立体的に色付けされて届いてくる。」

恋に香りをもたらした
恋文など望むべくもない今日です。
ゆっくりと進んだ時代が悲しく懐かしく。

恋文といえば、私は、
写真の富豪の令嬢だった平泉三枝子さん、
結婚前の鹿島三枝子さんへ
三島由紀夫が出した恋文を思い出します。