・被告人(夫)
千葉工業高校卒。会社員。自首、前科前歴なし。声が小さく終始俯き加減。弁護士ともほとんど会話せず。
一度拘置所内で自殺を図ろうともした。
・被害者(妻)
鬱病。夫が長年にわたり熱心に妻を看病。夫は妻の母親の面倒を見たり、妻の食事を作ったり。
フィットネスクラブの水中エアロに通いだし、友達もできて、鬱病も和らぎ、妹たちからみると、被害者は人生で最も幸せそうな時期にあったように見えた。
・被告人側の証人は被告人のいとこだが、それほど被告人と関係は深くない。
被告人には兄、姉がいるが、出廷せず。遺産相続で揉めて疎遠の関係の模様。
このいとこが今回の弁護士を探して依頼した。
→保護観察が弱い
・財産は所有マンションの他に、金融資産4,000万円。被告人の収入による貯蓄だが、半分以上は妻名義にしていたとのこと。
■争点
事件当時、被告人に責任能力があったか否か
心神耗弱状態だったか否か
判断能力、制御能力があったか否か
⇒鑑定医(検察側) VS かかりつけ医(弁護側)
の見解が真っ向から対立
・鑑定医は事件の一ヶ月後に鑑定
被告人の妄想によるものではない
被告人は完璧主義、プライドが高い、自尊心が強い性格
自分から手を挙げて自治体の会計係に立候補したのにその仕事が全うできなかった。妻が自治会長に会計係を辞任したい旨告げて了解をもらったものの、引き継ぎさえままならない状況だった。
今までは妻よりも上の立場(妻の面倒を見る立場)だったのが、著しくプライドが傷つけられた。
そして、引き継げないと妻に迷惑をかけると思った。
・かかりつけ医
東芝病院の医学博士、権威。
会計係を担当してから明らかに様子がおかしくなった。
重いうつ病にかかっており、薬を処方していた。
妄想のピークに達した。
本件は罪業妄想(※)によるものである。
動機は了解不可能。
※)
自分の行った行為が取るに足りないことでも、取り返しのつかない罪深いことをしてしまったと自らを責めるような状態。うつ病 において典型的にみられる。
何も悪いことをしているわけではないのに「皆さまに対して申し訳ないことをした、」などといってきかなくなる場合がその例である。
このかかりつけ医に対して、フクザキ検事が果敢に攻め。
始めは信頼できる権威ある医学博士の印象だったのが、はたして適切な心療、処方がなされたのか疑問を投げかける。
フクザキ検事は厚生労働省のホームページに書かれている、鬱病の薬の情報をかかりつ医が不知であることを明らかにする。
鑑定医はよりもかかりつけ医のほうが被告人を長年見てきているだけに説得力があるはずなのだが、フクザキ検事による攻めでその信頼が揺らぐ。
裁判員からの質問は公判全てを通してゼロ。
検察官は懲役8年を求刑。