「もしこれが正当防衛でないなら、この国はもう、どんな暴力を受けても反撃してはいけないのと同じことになってしまう。
・・・・・・皆さんは刑事裁判という、この国の司法の要である裁判員の仕事をされました。法廷に集中されました。裁判所の職員ではなく、裁判員として参加している皆さんは、自分の心で証拠を見、自分の経験と常識で判断するためにここにいるんです。もしも裁判官の判断が常に正しいなら、皆さんがここにいる必要はありません。
議論してください。自分が正しいと思うなら、それを貫いてください。間違っていると思ったら変えてください。それは恥ずかしいことではありません。ひとりの男の運命が決まってしまうのですから。Aさんの運命は皆さんの手のひらの中あります。その手のひらを握りつぶすことだけはしないでください」