あるとき彼女は泣いていた。
苦しかったのかもしれない。
誰もが声掛けさえしなかった。
彼女の笑くぼは伝う涙で濡れていた。
あるとき彼女は笑っていた。
嬉しかったのかもしれない。
陽気で快活でさえあった。
彼女の笑くぼはくっきりしていた。
うつ病の彼女は誠実な人で
頻繁に手紙を書いては人に手渡す。
「もう40になったし、今さら働かない」
笑って生活保護を受け入れていた。
隅田川へお花見に行く。
桜は散り始めているのだろう。
はらりと花びらが落ちて舞う。
桜の樹には
笑くぼがあるのだろうか。
あってもなくても
長く生きてほしい。