バナナン☆バナミン 第七話
バナナン☆バナミン 第七話 ~バナナタワー~
バナナタワーに入ると、バナナンは尻尾の灯りを掲げました。
石の壁に薄く残る奇妙な文字や、端に置かれた古びた毛布がぼんやりと浮かび上がります。
階段を上るバナナンについていくと、三日月の装置は、塔の上に静かにありました。
「完全に光が消えてるナン」
「壊れてるの?」
「今まで、こんなことなかったからナン」
バナナンは塔の端に飛び乗ると、暗い森と灯りの消えた街を見下ろしました。
「もしかして、変な時間にバナナを降らせたから……?」
「そんなことでは壊れないナン。たぶん、もう限界だったナン」
「修理できないの?」
「あいつが戻ってこないと無理ナン」
「魔法使いのこと? どこか行っちゃったの……?」
バナミンが尋ねると、尻尾の灯りがゆらりと揺れました。
「必ず戻ってくるって言ってたナン。だから毎日毎日バナナを降らして待っててやったのに……早く戻ってこないからこんなことになるんナン」
バナナンの尻尾がぱたぱたと塔のへりを打っています。
バナミンが眼下をのぞくと、街はぼんやりと薄れ始めていました。
「他に、魔力を集める方法はないの?」
バナミンが言うと、バナナンは首を振りました。
「町長は? 何か知らないかな」
「町長も街のやつらも、自分たちが魔法でできてるなんて知らないナン」
「じゃあ、このままみんな消えちゃうの? ……バナナンも?」
「バナナンは森の魔物に戻るナン。魔法が切れて街が消えれば、あいつが作ったバナナタウンのバナナキャット、バナナンの役も終わりナン」
バナナンはそう言うと振り向きました。
「その前に、おまえを森から出してやるナン。バナナンはおまえが外から逃げてきたと思ってたからバナナタウンに連れてったナン。でも、旅をしたいんナン?」
「そうだけど……バナナンはどうするの?」
「またここで暮らすナン」
「一人で?」
「ずっと昔はそうだったナン」
バナミンは、暗い家に一人で家族の帰りを待っていた夜を思い出しました。朝になっても、また夜が来ても、もう誰も帰っては来ないと知っていても、灯りがつくのを待って家を守り続けていたのでした。
「私と一緒に行かない? 私も一人なんだ」
バナミンは言いました。
「魔法使いを探しに行こうよ。そして、バナナタウンを戻してもらおう?」
そのとき、街の一角が眩しく光りました。
二人が目をやると、灯りの消えた街の中で一つだけ、バナナ色に輝く建物がありました。
「何あれ……?!」
「魔法の光ナン 行ってみるナン!」
二人は階段を駆け降りました。
「あれは、ノール兄妹の家ナン」
「ノール兄妹って?」
バナミンは息を切らしながら尋ねました。
「バナナカフェで会ったナン? オイゲ・ノールとポリフェ・ノールの兄妹ナン」
「オイゲには会ったけど……」
「ポリフェは引きこもりだからナン。バナナンもずいぶん見てないナン」
「それで、何でその兄妹の家から魔法の光が……?」
「まったくもってわからないナン」
バナナンは走りながら首をひねりました。
こうしてバナミンは、ノール兄妹の家に急ぐのでした。
☆第八話へ続く☆
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◆作者紹介◆
二月二二子
お話を書いて猫と戯れる日々です。
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