バナナン☆バナミン 第四話
バナナン☆バナミン 第四話 ~甘焦喫茶~
「じゃあ町長、後はよろしくナン」
「……今回だけだぞ」
町長の机に賄賂のバナナを山盛りにして、二人は町役場を出てきました。
相変わらず街は静まりかえっています。
「街の人たち、大丈夫なのかな」
「まあそのうち出てくるナン。そ・ん・な・こ・と・よ・り! バナナタウンの案内ナン」
「この状態で?」
「たぶん、あいつならいるはずナン」
バナナンはさっさと歩き始めると、円形広場から伸びる通りの一本に入っていきました。
「さあ、ここナン」
バナナンは『甘蕉喫茶』と看板のある店の前で立ち止まりました。
バナミンが扉を開けると、女の子の声が聞こえてきます。
「ねえセロトン、早くシェルターへ行きましょうよ」
「僕はいいよ。オイゲは行ったら」
「セロトンと一緒じゃなきゃ行かない!」
「あ、バナナン。と、きみは?」
カウンターの中にいた少年が、バナミンに尋ねました。
「バナミンです、はじめまして」
「はじめまして、僕はセロトン」
「よかった、普通の人間もいるんだ……」
安堵のため息をついたバナミンは、カウンター席の少女にじろじろ見られていることに気付きました。
「えっと、あなたは?」
「オイゲ」
少女はバナミンに短く答えると、セロトンの方に向き直りました。
「どうしてシェルターへ行かないの? みんな、何か起こるに違いないって噂してるのよ」
「大丈夫だよ。たぶん、今日は普通に夜が来て、明日は普通に朝が来るよ。ねえバナナン」
セロトンはそう言うと、バナナンに向って目くばせしました。
「そ、そうナン。きっとそうなるナン」
「何でそんなことが言えるのよ。セロトンに何かあったらどうするの?!」
納得いかない様子のオイゲは、バナミンの手に残っている数本のバナナに気付くと、怪訝そうに言いました。
「どうしてあなたがバナナを持ってるの」
「え? 森で倒れてたらバナナンが……」
「ストップナン!」
バナナンはカウンターに飛び乗ると、バナミンの口を前足でふさぎました。
「これからは、こいつがバナナを運ぶナン。その挨拶に来たのナン」
「何でこの子が? バナナンでいいじゃない」
オイゲは眉をしかめました。
「こいつは町長も認めたバナナハンターナン。バナナの品質も保証済みナン」
「バナナハンター この子が?」
オイゲはびっくりした顔で、バナミンを上から下まで眺めました。
「バナミン、すごいんだね」
セロトンも驚いたように言いました。
「あはは……そんな、バナナを捕っただけなのに」
「バナミン、そもそもバナナを捕ることがすごいんだよ」
「そうよ。捕ろうとしても、普通、触ったら消えちゃうんだから」
セロトンとオイゲは真面目な顔で言いました。バナナンが、そっとバナミンの耳元で囁きます。
「バナナムーンの魔力は、バナナハントして初めてバナナになるナン」
バナミンは、森で見た、バナナが地上に降っては消えていく光景を思い出しました。そして、手の中で光るバナナを見つめます。
(なんだかよくわからないけど、バナナハントって、すごいんだ……)
「私、すごいなんて言われたの、はじめて」
(おまえがバナナを捕れるのには、理由があるんだけどナン)
バナナンは、うれしそうににまにましているバナミンを眺めました。
(……ま、それは言わないでおいてやるナン)
「さあセロトン、こいつにバナナタウン名物を味わわせてやるナン」
バナミンからバナナを受け取ると、セロトンはカウンターの中で何か作り始めました。
「はい、バナナカフェ特製・ムーンバナナジュースだよ」
三人の前に、バナナムーン色に光るジュースが出てきました。セロトンもグラスを手に持ちます。
「うん、いい色だ。じゃあさっそく、バナミンのハントしたバナナをいただこう。乾杯」
「乾杯!」
「乾杯ナン」
「……ま、いただくわ」
一口飲むと、全員の目が輝きました。
「おいしいわね」
「うまいナン」
「うん、いい出来だ」
(本当に、おいしい……)
バナミンは、うれしいような、どきどきするような、今まで味わったことのない気持ちになりました。
こうしてバナミンは、少しだけバナナタウンが好きになったのでした。
☆第五話へ続く☆
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◆作者紹介◆
二月二二子(にがつににこ)
お話作りで食べていくのが夢☆ ゆるーく朝バナナ中。
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