バナナン☆バナミン 第三話
バナナン☆バナミン 第三話 ~バナナタウンへようこそ~
「ねえバナナン、バナナタウンってどんなところ」
「気になるナン?」
バナナンはニヤリと振り向きました。
「その昔、魔法使いが作った夢の街ナン。魔法使いの、こんな街があったらいいなっていう夢を叶えまくった街なのナン」
「へえ、楽しそう!」
「バナナタウンを見て回ったらきっと気に入るナン。下僕のおまえには、と・く・べ・つ・に! バナナンが直々に案内してやるナン。ほら、見えてきたナン」
森を抜けると、円形の広場が見えました。人の姿はなく、街はひっそりと静まり返っています。
(これが夢の街……?)
バナミンがきょろきょろしていると、バナナンは広場を囲む建物の一つに入って行きました。
バナミンがあわてて追いかけると、バナナンは一番奥の、カタカタカタカタ……と音が聞こえる部屋の前で待っています。
「さあ、入るナン」
バナミンがドアを開けると、ものすごいスピードでキーボードを打っていた人物は、モニターから顔を上げました。
「……何か」
言ったのは、魚の頭をした紳士でした。バナミンは、ドアをそっと閉めました。
「何してるナン」
「だって、おさかなが……」
「そのおさかなに会いに来たんナン。とっとと入るナン」
バナミンがそろりとドアを開けると、魚頭の紳士はまだこちらを見ていました。
「何なのかね。……おや? きみ、そのバナナは……」
紳士はバナミンが抱えているバナナに気付くと、すぐにバナナンを見つけました。
「バナナン、きみの仕事は何だったかね」
「バナナムーンの魔力を街に補充することナン」
「そう、正しい時間に、ね」
魚紳士は皮肉な口調で言いました。
「バナナを降らせて魔力を満たすと、バナナタウンは朝になる。きみはバナナタウンの朝と夜の管理人、大事な任務を負っているんだ。それを、真夜中に突然朝にするとは……」
魚紳士のお頭が、ぶるぶると震えました。
「おかげで問い合わせ殺到、被害届多数、おかしな流言まで飛び交って、住人はシェルターへ避難してしまった。私は対応に追われっぱなしだ」
(ゆ……夢の街が……)
バナミンのバナナタウンのイメージが、がらがらと崩れ落ちました。
「それはこいつのせいなのナン。こいつが、飢え死ぬ助けて、なんて言うから、バナナを降らせて食わしたナン。バナナンの下僕にして、こき使うから許すナン」
ほら、おまえも謝るナン、とバナナンはバナミンを前に押しました。
「ごめんなさい……」
「いや、きみはいいんだ。どうせ、バナナンが考えなしにバナナを降らせたんだろうからね。大体バナナン、日頃から、きみにはバナナキャットの自覚が……」
「まあまあ、それはそうと、このバナナをよく見るナン」
バナナンは魚紳士の机に飛び乗ると、バナミンの手からバナナを一本渡しました。魚紳士は魚眼をぎょろりと動かしました。
「……ほう。これは」
魚紳士はバナナを取り上げると、いろいろな角度から眺めました。
「ふむ。これは実にいいバナナだ。腕を上げたな、バナナン」
「バナナンじゃないナン」
バナナンはニヤリとしました。魚紳士は首をひねり、バナミンを見て、はたとひらめいたように言いました。
「……まさか、きみが?」
「は、はい……」
「何と! きみはバナナハンターだったのかね」
「……バナナハンターって何ですか?」
バナミンが聞くと、魚紳士は眼をかっと見開きました。
「バナナン、きみは何も説明していないのかね、こんな逸材に」
「そのうちするつもりだったナン」
「ああもう! きみはいつもだらだらとして! もういい私が説明する! いいねお嬢さん」
「バナミンです」
「いいかねバナミン。バナナとは技術でハントするんじゃない、心でハントするんだ。それができるのがバナナハンターなんだよ」
魚紳士は何か気付いたように、口をぱかっと開けました。
「そうか! きみはバナナで命を救われたんだったね。なるほど、バナナに対する尊敬の念、感謝の気持ち、それが魔力のこもったバナナに伝わって、きみの手のなかで奇跡を起こすに違いない。わかるね!?」
「よくわかりません……」
「要するに、きみはバナナハントの天才ってことさ。よし、きみを二代目バナナハンターに任命しよう!」
「おお、バナミンすごいナン」
「す、すごいの?」
「すごいナン。町長直々に任命されたナン。バナナタウン公認バナナハンターナン」
「ん? ……町長!?」
魚頭の紳士は立ち上がりました。
「はじめまして、町長です。バナミン、バナナタウンへようこそ」
こうしてバナミンは、なんだかよくわからないうちに二代目バナナハンターになったのでした。
☆第四話へ続く☆
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◆作者紹介◆
二月二二子(にがつににこ)
お話作りで食べていくのが夢☆ ゆるーく朝バナナ中。
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