鑑賞【機動警察パトレイバー2 THE MOVIE】 | 今日もまた、陽は昇る

鑑賞【機動警察パトレイバー2 THE MOVIE】

 およそ現実世界とそんなに世界観が違わない臨場感が生きる西暦2002年の日本、及び世界。この作品では、首都・東京に「戦争」を持ち込むという、実験的な試みを主たる目的として描かれ、主人公・泉野明(いずみ のあ)、篠原遊馬(しのはら あすま)を中心とする特殊車両2課(以下、特車2課)の面々の活躍を縮小し、代わりに影の主人公と目される、特車2課第二小隊長・後藤喜一警部補と、第一小隊長・南雲しのぶ警部補を軸に、、アニメーションによるカメラワークの表現法にも徹底してこだわり、当時の世相の反映もさることながら、時代を先取りする諸問題にも触れている、実に押井守監督ならではのこだわり、哲学、持論が目立つものとして仕上がっている。


 90年代初頭にすでに「破壊活動防止法」や「PKO協力法」に基づく自衛隊の海外派遣などの、オウム事件でクローズアップされた「破防法」、憲法論議で問題とされる「イラク派遣」などの事柄がすでにここで取り上げられており、実際に物語冒頭、東南アジアの紛争地帯に自衛隊が国連軍とともに派遣され、今回の事件の首謀者である「柘植行人(つげ ゆきひと)」がレイバーとともに参加、そこで目の当たりにした「戦争」により、帰国後行方を晦まして、のちに自衛隊による首都攻撃を実行する。彼が海外の紛争地帯で見たものはなんだったのか。



「欺瞞に満ちた平和」



「正義のための戦争」



「血まみれの経済的繁栄」



これら、戦後日本が高度経済成長とともに生み出してきた産物とする会話が本編で語られる。


「それでもおれたちはこの平和を守る義務がある」。


後藤はそう話す。血なまぐさい偽りの平和、それでも街では人々が日々生活し、生きている現実を考えれば、偽物だろうが本物だろうが、それこそが現実であるのだ。

 「戦争という非日常」を見事「東京」に演出した柘植は、ただ純粋に「戦争」を平和・日本に作り出すことだけを考えていたようだ。

 要するに、映画自体が実験的な要素を持ち、柘植という人物を通して「虚構」の世界への検証が行われている。そしてさらに、南雲しのぶと柘植の過去の関係が、より物語を切実なものとしている。

 この作品で、私はあらためて押井監督の先見性や趣向、哲学、持論的な面を見ることができ、『攻殻機動隊』『イノセンス』などの超難解なアニメ作品への系譜を目の当たりにできた。前作の劇場版第1作目について、あえて触れることはしない。


 日本が誇る映像クリエーターにしてアーティスト「押井守」。その才能に、ただ感服するのみである。