「やるじゃないか」

思わず口に出して、広翔は意味のない苦笑を浮かべた。その心理の隙間にまたしてもどこからか水素砲が撃ち込まれ、広翔のタゲリは左翼のかなりの部分を失った。

「いったいだれが?」

一対一の戦いにどうやって他のフェニックスが参戦できるのか、広翔にはわからなかった。今度も石胞がトランフォームして再起してくれるだろうと期待したが、赤いランプが点滅し、けたたましい警戒音が鳴り響いた。

「やられたか……」

こうなってはもう覚悟を決めるしかないのか。実戦なら死か脱出を意味する絶望が目の前に垂れこめている状況だ。しかし、シミュレータがはじき出さない限り可能性はゼロではない。

広翔は諦めなかった。地底では否応なくはじき出されたが、まだ負けが決まったわけではない。なにかやれることはないのか……、思い巡らして出した結論は……。

片翼しかない機体で飛翔を続けながら広翔は桐生のタゲリにロックオンし、水素砲を照射した。だが、ロックオンはかすかにずれていて、桐生のタゲリを撃ち抜くことはできなかった。石胞をかなり失ってしまった広翔のタゲリは急速に失速した。

すると、桐生は急展開して向き直り、水素砲を撃ち込んできた。広翔にもうこれを回避する余力は残っていなかった。頑強に造られている頭部を撃ち抜かれ、なす術なく樹林の只中に墜落していった。

広翔は操縦シミュレータから弾き出された。桐生もシミュレータから出てきて、広翔の前に立ちはだかった。

「そんなんでどうする。すぐにも実習が始まるぞ」

「ああ、今日はちょっと気を抜いた。次は負けないさ」

「口だけは相変わらずだな。あんな無様な負け方をしといて」

「そう無様でもないさ。おれは複数の敵と一人で戦ったわけだからな」

「なんだ、それ。負け惜しみもいいところだな」

そのとき、広翔が金魚のフンと揶揄する三枝と間宮が斜め前に姿を現した。その目は皮肉な笑みを浮かべ、口元は苦々しく歪んでいた。

「おまえら」と広翔は桐生の後ろに控える二人に呼びかけた。「仕留める時は一発で仕留めろ。撃ち損じたら、とんでもない反撃を喰らうぞ」

「なんのことだ」

「自分の負けをおれたちのせいにするのか」

「いや、おれの負けをとやかく言う気はない。ただ、次もおまえらついて来いよ」

そう言うと、広翔は二人にわざとらしい媚びるような視線を投げかけた。三枝は煮え切らないような憤懣顔で広翔を睨み返したが、間宮はなぜかわらっていた。

「というわけで、次はおれからの挑戦状だ。もちろん受けて立つよな、桐生」

「ふん」

桐生は鼻でわらうと、侮蔑的な眼差しを広翔に向けたが、挑戦状は受けて立ち、二日後に対戦が決まった。