サンカ族遠征隊が帰還してしばらくすると一年間の訓練が終り、訓練生は兵卒コースと技術者コースにわかれていく。
これで竜崎とも会えなくなると思うと、広翔はさすがに心もとなさを感じもするが、そんな態度はおくびにも出さず、級友と握手をして、別れを告げた。
「これでおさらばだな」
「うん。立派なフェニックス乗りになれよ」
「ああ。おまえもいい研究者になってくれ。放射能除去装置を改良して、地上を元のように人間が暮らせる楽園にできるといいな」
「そうなれるよう頑張るよ。軍に入って、平和のありがたさをつくづく感じられるようになったよ」
「おれもだ。地中居住区にいるころは、平和がタダで手に入る地下水のようなものだと思っていたからな」
「軍の多大なる犠牲のうえに成り立っていることを国民が知らされることはないからね。けれど、それでいいと思う。ぼくらは自分の責務を全うするだけだ」
「おまえ変わったな。軍人らしくなってきた」
「やめろよ、恥ずかしい。きみはもっと軍人らしくなったよ。けど、命は粗末にするな。国を背負うのはきみ一人じゃないからな」
「ああ。胆に銘じるよ。じゃあ、本当にこれでおさらばだ」
小学校からこのときまで、なにかと広翔のブレーキを踏んでくれる存在だっただけに、竜崎との別れは肉体の一部を削ぎ落されたかのような痛みと寂しさを伴った。
「あ、それから……」
広翔は一瞬ことばを溜めた。「例のフェニックス獣は何かわかったか」
「フェニックス獣? ああ、いま読んでいるんだけど、トヨクニ語に苦戦しているよ。わかったら連絡する」
「頼むよ。おれも楽しみにしてるんだ。いったい何ものなんだ、あれは」
「敵か、味方か、単なる巨大獣か。巨大獣に過ぎなかったとしてもすごいことだけどな。まったく興味は尽きないよ。もし味方にできたら……」
「味方か……、サンカもどうだかな。大和連合とはいうものの、本当に味方なのか」
「不思議な民族だな、たしかに。あ、もう時間のようだ。ほんとうにこれでしばしの別れだな。次は地上で会おう」
「ああ、元気でな」
「きみも」
竜崎を載せた装甲車が地下深く沈んで行くのを見送ると、
「蚊帳野、早く」
と辻本に促されて、広翔は地上へ向かう装甲車に乗り込んだ。
これからは、訓練の半分を地上で行うことになる。より実戦を意識した、防護服を着用した訓練が果てしなく続くことになる。