春になり暖かい南風が吹くと、人々は重い衣服を脱ぎ、陽気に歌い踊った。そのようすを見て、南風が北風に言った。

「君はみんなの嫌われ者なんだよ。ずっと岩屋にでも隠れているといいさ」

 北風は怒って、岩屋に隠れてしまった。人々は暖かい季節が続くことを始めは喜んでいたが、夏が過ぎても、稲や麦、果実が一向に実ろうとしないので焦り始めた。それに、気温が高くなりすぎて、老人や幼子にたくさんの死者が出た。

 人々は岩屋の前で北風に出て来てくれるよう嘆願した。北風は困っている人々を見て、岩屋から顔をのぞかせた。すると、人々は首をすくめて背中を丸めながら、そそくさと冬支度を始めた。

 礼を言うこともなく……