その再挑戦も接戦ながら広翔は負けた。このときは他からの不意討ちはなかったが、広翔はそれに備えて桐生への注意が散漫になったのはたしかだ。だが、それを負けの理由にするつもりはない。広翔がしょぼくれていると、桐生が声をかけてきた。

「どうだ、もう一回やらないか」

「ん?」

「今度は敵機の戦闘機とファイルの戦闘だ」

「F9戦闘機なんかの一般兵器のこと? いいね、より実戦に近い」

「そういうことだ。フェニックス同士の戦闘なんて実際にはないからな。そこでだ、次は当然お前が敵機の役だ。わかったか」

広翔は一瞬不満の表情を見せかけたが、すぐ真顔になって言った。

「当たり前だ、負けたんだからな。その代わりその次はおれがタゲリに乗るぞ、いいな。勝っても、負けてもだ」

「ま、いいだろ。敵機に乗るのも、相手の戦力を知るいい機会だ」

「敵を知るいい機会か。お前らしくもない、いいことを言うじゃないか。だから、今日は烈国の砂漠を選んだのか」

「いや、おれが選んだんじゃない」

「え、ということは、シミュレータが勝手に選んだってこと?」

「かもな。自分で選ばないと、シミュレータが不作為に選ぶのかもしれん」

「軍もいろんな仮想徹国を想定して、訓練してたのかもしれないな、昔から」

「ま、そんなとこだろ。だから、お前、敵機の勉強をしっかりして来いよ。すぐにへたらけても、つまらんからな。想定敵国は麦国。ここを叩かないと出日国に未来はないぞ」

「麦国か、相手にとって不足はない」

「まるでお前がフェニックスに乗るような口ぶりじゃないか。ま、いい、そんなんだから、次の対戦は一週間後だ、いいな」

「ああ、わかったよ。しっかり勉強しとく。おれレベルでな」

そう言って広翔はわらったが、桐生は口元ひとつ動かさなかった。こんなとき、竜崎だったら調子を合わせてわらってくれただろうにな、と広翔はふと地下研究所へ潜って行った竜崎のことを思った。