なんでお前は 生きるのかって?
生きてる限りは 毎日毎日
新たなひと日が 生まれるじゃないか

自分にとっちゃあ
この旅の 長さとくれば
今日が 最長記録であるし
日ごと日ごとに
未開の土地を
せっせと拓いて ゆきながら
じりじり 進んでいるわけだ
言うなればこれは
孤独な冒険 あるはまた
自分自身への
尽きることなき 課題かも知れず

いち日が 終わる頃には
いち日の姿も すっきりと
わたしの心に 入り込み
いつしか ふくよかな
よき思い出いろに 染まりゆき
言い知れぬ
心の滋養の 一部となりて
心の淵の 深みへと
閑かに果てなく
降りたってゆく

こうして僕らは 深みを増して
ますますいよいよ 豊かになって
いかねばならない 旅なんだ

そんな 不思議の宿命と
深い意味をも 懐きつつ
旅は 緑の風のなか
今日も 続いていくのです
陽光 (ひかり) と空とを 友として




 

 


ひとは一般に『青春』と言えば、およそ何歳ぐらいの人をイメージするだろうか。
彼らが大人や大人社会へ向ける視線というものは、とても鋭敏であり複雑な感情を秘めていることが多かろう。いわく反感、憤懣、嘲笑、羨望、それは一見矛盾に満ちた様々な情感のるつぼである。斯様なまでに繊細で鋭敏な神経の持ち主たちが、一体どのようにして凡庸な大人になってしまうのか。

大人社会への反発心は、決して捨てるべきではない。

『大人なんかになりたくない』などと叫びつつも彼らは、やがて平々凡々たるその大人種族の標本のような存在に成り下がる。

どうしてそんなに簡単に少年の心をかなぐり捨てて了うのか。大人になりたくないのならば、ずっと少年のままでい給え。なんなら生涯少年で居ればいいではないか。

少年の心、万歳である。大人なんて、ちっとも偉くも何とも無い。私は大人であることが恥ずかしいくらいだ。少年よ、願わくば己を卑下するな。

少年よ胸を張れ。自分が若く幼いことを、誇り給え。

こんな時、想起されるのは例のPRBの作品だ。

ジョン・ブレット1856年の作品『石割る人』。
ここに描かれた少年もまた、自分が特権の時代の最中に生きて在る者であることを、これっぽっちも自覚して居ない。いや寧ろ、自分が課せられた退屈至極な作業にうんざりしている。

ところが彼を取り囲む季節や、一望されるなだらかな丘陵の風景がこれ全て、他ならぬこの少年の身分を心憎いまでに表現している。即ち彼の『青春』という特別な時代である。ところが彼はその特権に飽き飽きし、今にも投げ出してやろうかとでも言うかのような風である。

そうなのだ。彼ら少年たちという種族は、自分が少年であることにうんざりしているのだ。そして数十年の時間を経たころになって、ある時ふと彼は、記憶の彼方に霞んだ嘗ての自らの姿の中に永遠の世界の反映を、その片鱗を見ることになるのだ。

仕方がないので私としては、死ぬまで少年で居ることに決めた。

 

 


 

 

哀しみは
あなたを 閉じ籠める
そうして
昏い迷路から 出られずに
虚しく 果てなく
さまよい続けることになる

そんな時には ほら
空を見て

そこには
果てなく続く
見えない道がある
それは 心の中まで続いている

風が優しく
あなたを包んでくれ
白い雲は 親しく穏やかに
いつの日にも
微笑みかけてくれる

そんなふうに
あなたも また
温かく和やかな
微笑みを 貰うためには
そっと 視線を上げて
空を見上げて みればいい

自然の
底さえ知られぬ
優美さと 典雅さとに
眼を 差し向けて
我を忘れて みればよい


例えば あの
見上げる大樹が
そうであるように
海も大地も 緑も河も
それらは あなたの生涯よりも
遙かに永く 生きている
 あなたは
ほんの小さな おさなごです

世の中に 絶望したり
淋しく吐息を
洩らしてみたり
孤独の淵に あえいでみたり
疲れ果てて
自暴自棄になったり
それらは 見えない迷路です
空を 見上げてごらんなさい

あなたは
すっかり忘れているけど
あなたは
確かに翼を持っている
ただ 気付いていないだけ

ゆえに 真実ありのまま
包み隠さず 申しますれば
心の翼を いっぱい広げ
深く果てなき世界への
畏敬と憧憬を 力に変えて
大きく羽ばたきさえすれば
いつでもあなたは 翔べるのですよ




 



いつの間にか 窓の外には
風の精たちが
秋の花束を
胸いっぱいに抱えて
やってきていることに
ついぞ 気付きもしないまま
のんきに過ごしていたようで

ごめんなさいね
風の精たち
さあどうぞ おはいり下さいな

まったく いまの人たちは
移ろう季節の いろどりなどは
どこ吹く風かと いう気色

日がな一日 窓を閉め切り
エアコンを使い続けているし
日がな一日
手許の電話を眺めては
飽きるようすも
ないのですもの

自然から
離れてゆけばゆくほどに
しあわせからも
遠く離れてしまうのに

当然至極の
こんな ことわりひとつすら
世間はまるで
全て忘れてしまったようす
なんと不幸なことでしょう

ごめんなさいね
風の精たち

 

 

 

 



気が付けば
  いいえ
気が付く人も 付かないひとも
 誰だって
今日という名の
 いちにちは
たったひとりの 自分独自の
唯一無二の 作品なんです

そんな 珠のような作品を
日ごと日ごとに作り続け 生み出し続けて
やがて一生涯という
大きな作品にするのです

だから どんな人でも アーティスト
自身のひと日を生みいだし 創り出しゆく芸術家
孤独な淋しいアーティスト
気が付く人も 付かないひとも

わたし独自の 色あいにして
ひと知れぬ 夢や想いを詰め込んで
ひそかな悦び 哀しみ抱いて
今日も すてきな作品めざし
どんな出来ばえに なるかしら

 

 

 



 



こちらが本気で
生きないことには
世界にしたって 当然ながら
本来の姿を
示してはくれぬ

本当の 世界の姿を
垣間見ようと するのなら
こちらの 生きゆく姿勢が
問いかけられる

それが前提となるからには
歩む足にも 心にも
キリリと気持ちの
ほとばしる

生きるからには
生命をかけて

 

 


どんな見方を してみても
世界のすべてを 見て知って
味わい尽くして いくことなどは
とても叶わぬ ことゆえに
せめて周りの ことがらの
親しく身近な ものごとくらいは
心豊かに 鄭重に
優しく大事に 扱うべきか

この世で私が 知れることなど
世界の中の 塵のひとかけ
あるか無きかに 過ぎぬもの
なれば身近な 人や物さえ
よくよく見れば なかなかに
意味深長の 含みの見ゆる

 

特に私に ゆかりも深く
現れ出でたる ものたちだもの
私のいのちと 変わるなく
無二の同志と こころにかけて
共に並んで 進んでいこう
こころ愉しく 歩いていこう

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

ある夜の夢の 中のこと
なぜか私は 鄙びた街の
喫茶店かと 思える店の
窓辺にひとり 物思い

店員姿の 女性がひとり
私の前で 立ちどまり
メニューの書物を 差し出して
ご注文はと 問いかける

店の不思議な 様子につられ
そっとメニューを 開いてみれば
中にはなんと 細かな文字で
あらゆる事件や 出来事などの
場面やシーンの 一覧表が
書物まるごと びっしりと
書いて 連ねて まとめてあった

これは何かと 問いかけみれば
夢に出てきて 体験される
出来事リストの 夢メニュー
ご注文はと またも問う
時間をかけて 注文したが
半信半疑で 旅に出た

夢の途上で 苦難を舐めて
苦心惨憺 振りかえ見れば
注文からして 余りに違う
違い過ぎると 腹が立ち
ふたたび店に 立ち戻る

店員女子の 現れ出でて
いかがせしやと 問いかける
怒り激しく 抗議をすると
典雅の微笑み 湛えつつ
娘は涼しく もの申す

思い通りに行かないことは
夢も世間も 同じこと
夢の舞台は 大事の摂理を
学ぶ処に あらずやと
娘は私に 訓えを垂れた
応える術も 何もなく
私はガックリ くび垂れた

 

 

 

 

 



 

 

 

 

ある朝のこと
通勤電車に 乗るために
私は懸命に 通りを急いでいた
とそのとき突然 足がもつれ
私は バランスを崩し
前のめりに 路上に倒れ込む

ところが 私は
前のめりの姿勢のまま
数メートルの道のりを
氷の上を ゆくように
フワリとたちまち 移動した

不思議の思いに 駆られたものの
とにかく私は 電車に乗った

この日のことが 頭を去らず
休みの日なかの 草はらに行き
私は 無心に駆けてみた
丘の上にて 地を蹴り立てて
風の中へと 身を乗り出せば
ついにフワリと 私は浮いた
身体は浮いて 空間のなか
泳ぐごとくに 滑り出す

それから私は ことあるごとに
遙か頭上へ 舞い上がり
浮遊の術を 繰り返す

ところがある日 心の中に
『そんな馬鹿な』と 思われだすと
それから やにわにどうした訳か
二度と私は 飛べなくなった

 

 

 

 

 



 

 

 

 

例えばそれは 電波のようなもの
無数の声や あらゆる情景たちが
眼には見えなくとも 絶えることなく
いずこにてもあれ 自在に飛び交う

そんなふうにして この世界の事物にも
さまざまな呟きが 囁かれている
私はただそれを 受信できないだけのこと

見わたせば 日ごと日ごとに陽光は
樹々や水の面の その上を
如何にも愉しく 軽やかに
それからそれへと 渡りゆく

いずこもそれは どこから見ても
平穏無事なる 春のよそおい
冬のあいだは 聞こえなかった
樹の呟きも 春めく中で
この耳に 徐々に電波が沿うごとく
世界の声も 聞こえだす
されば花壇の 樹や花たちの
陽気な会話も 耳につく

そんな世界を 見るにつけ
かくも平和の 光の中に
過ごす我が身の 有り難さ
幸せ余って 胸苦しくて

輝く春の 光のもとで
ひとりも多くの 人びとたちが
愉しい時間を 笑顔をもって
迎えることが できますように  どうか
どうか笑顔で ありますように