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1-F


 部活後、柴矢は風紀委員の西塔に呼ばれました。
そして誰もいない教室に二人きり。


「あんたも大変ね」
「しょうがないんです。……部長命令ですから」
本心は「惚れてしまいましたから」が続くのだが柴矢はぐっとこらえました。


「僕は今日大事なことを学びました。
人は誰でも立ち入られたくない自分の空間を持っているということです。
痴漢は極端な例ですが、自分の領域に土足で踏み入られて気分を害さない人はいません。
海崎部長と西塔先輩の間に昔あった事件のことはよく知りませんが、それも同じことでしょう?」


 警察に任意同行された柴矢は、そこに親も呼ばれる騒ぎに発展。
終始女子生徒の格好をしたまま必死に警察に訳を話し、なんとか口頭注意で済んで今に至る。
女装した姿を親に見られるのは中々こっ恥ずかしく、まさに自分の領域に土足で踏み入られた気分になったのでした。



 そんな柴矢を哀れんでか、新聞部全体を毛嫌いしてる西塔が精一杯の笑顔を作って言いました。
「よし、今日は特別にご馳走してあげるわ。
駅前においしいイタリアン料理の店が出来たんだけど、一緒にどう?」


「あ、今日は無理です。
ブーゲンのダンジョンに万能薬を取りに行く約束をしてて。
僕の使う魔法じゃないと倒せない敵がいるので外せないんですよね。
それじゃ」


 柴矢はそう言い残してそそくさと教室を後にします。
一人取り残された西塔さん。


「人は誰でも立ち入られたくない自分の空間を持っている、か…」


 やっぱり新聞部は変人だらけだ。
西塔は改めてそう思いました。



 こうして、新聞部の活動は今日も続いていくのであった!