この島国には神々を信仰する文化が根強く残っている。
"私"は神様なんてものの存在は信じていない。
だから「拝む」という行為が理解できない。
祭りの行事で神を拝むのは間違っている。祭りの準備で頑張った者達を激励すべきだ。
何もしてくれない神様なんて必要ない。



6.祭政━再生



 雨水を全身に浴びるナギに条件を二つ突きつけた。
まずはイベントを他の者に任せること。
昨日の今日で立て続けにハリケーンの不備を出すのは会社のイメージダウンに繋がる。
跡取り息子である俺達の面子もあるが、父の名前に傷をつけることだけは避けなくてはならない。
ナギは動かせそうな雰囲気ではないし俺はハリケーンの操縦が苦手だ。
フランシスカ会長に頼んで代理を出してもらえばいい。


 二つ目の条件。
それはまだ言わないでおく。
俺の力による支配を持続させるためにまだ言わない。


 仰向けに寝転がりながらナギが言った。
「雨が降らなかったらどうしていた?」
「声が聞こえないくらい遠い場所で戦うだけさ。雨は偶然降ったんだ」
「いつからこの作戦を考えていた?」
「高校入学したその日の晩。考えだけなら四・五年前から」
「一人で考え付いたのか?」
「内緒」
「俺をどうする?」
「内緒」


 質問に答えるのが面倒臭くなったので、俺から聞きたかったことを一つ。
「ナギはその力で何がしたかったんだ?」
「エロいこと」
「それは手段だろ。相手に屈辱を与えることが究極の支配だって言ってたじゃん」
「俺はバカだから、将来のこととか関係なくその場の感情で生きたがるんだ」
「それは悪いことじゃないよ。だけどやっぱり、自分さえ良ければ良いという考えは間違ってると思う」
「言うなよ。あんな形で思い知らされたからこうして頭を冷やしているんじゃないか」


 雨足が弱まってきていた。
ナギはきっと、明日以降も支配の力を使って生きていくだろう。
使わざるを得ない力なのだ。
顔は常に相手に見られているのだから、自らの意思に限らず力は放出され続ける。
自分の頼みごとがすべて実現する世界は魅力的で刺激的で悲しい世界。
血を分けた俺には支配の力はおろか、対抗する力すら与えられはしなかった。
だからこそ俺は別の力を手に入れる必要がある。


「俺、生徒会に入るよ」
ナギは無言で答えた。
雲の隙間から光が差し込んでいた昼下がり。



 神様なんてものはいない。
では存在したとして神様とはなんだ。
母を奪い、姉を奪い、姉の体に宿る命まで奪い去ったあの会社を神は生かすというのか。
ふざけるな。


 絶望の底にいた"私"に生きる力を与えてくれたのは人だった。



To be continued…