「えっと、ここ、道があります。多分通用口みたいな感じで」

「ほんとだ、道がある」

淳はその間黙って周囲を見ている。

「水沢君、行こう」

類が声をかけ、4人は道を奥へ行った。足元はひたすら雑草に埋まり、それを類が慣れた様子で踏み分けるように進んでいった。

「あ、ここ、茶室と離れがありました。えっと、茶室が先で、それに今残っている座敷が増築されてました」

「茶室?茶道の建物?」

「はい、そこに飛び石がこう続いていて、手洗い鉢がありますよね。あそこが蹲で、またたどると途切れたところの大きな石、あれが沓脱ぎ石で、その上ににじり口がありました。小さい、正方形の入り口の・・・」

「わかんないわかんない。詳しいねえ」

「好きなんですよ」

なんとなく息があってきた後ろの女子二人が建物を見ている。淳と類が先行し、少し間が開いた。ふと振り返った香子が声を掛ける。

「そこ、池があります、とまって!」

淳が足元を見ると、丸い石が敷き詰められた岸があり、そこからいくつかの大きな庭石が突き立っている。苔と藻に覆われた池の底に古い水がわずかに残っている。過去の風景に焦点を合わせた香子には、大名庭園の形式を取って洗われた丸石が芝生に接する緩やかな弧を描く水際が見えていた。水は透明度が高く、わずかに風が水面を揺らせば、映りこんだ月が形を揺らす。

現実の世界では、ちょうど半月と満月の中間の月が出たころだった。空には4人ともに見える月明かりがある。それ以外は類とさらさが持っている懐中電灯しかない。

「うーん、なんか出そう」

「それ、このメンバーだとしゃれになってない気が」

「はは、まあじゃあ、ちょっと中見ようか。こんなに大々的に開いているなら入っちゃってもいいかな」

建物の雨戸は、みんな閉めてあったはずなのだがところどころ開けられてあり、ガラスが割れているところもある。ガラス戸が割れていないところを引き開けて中に入る。畳が上げられているところがほとんどで、その一部は床板も外れている。

「ここは多分座敷ですね」

「きれい、この部屋」

「そうなの?」

「ええ。宴会とかするところですよ。あそこ、今も3間分の床の間と違い棚がある」

淳は入ったすぐの広縁でぐるりと部屋中を見回している。そして、奥の部屋に行く襖の前を見ている。香子は、淳のそういう様子を前にも見たことがあったので、ああ、あそこに誰かいるのか、と思った。香子には、相変わらずなんとなく薄い人影のようなものが作る場面が次々に入れ替わり見えるだけだった。