みるということ ①(1)


私が、自分がそれをできるようになったのは、まだ物心つく前だったらしく、劇的なきっかけなど何もなかった。

でも、私が2歳になった秋、私があまりにも話さずあまりにも動かないことに心配していた母は、私を本から引き離し、姉とともに散歩に連れて行くようになった。

その頃私の一家が住んでいたのは、かつて軍港があった古い街で、今もあちこちにその名残が残っているようである。もちろん私はその当時の記憶はほとんどない。町並みを歩くと、美しいレンガ塀の建物、整然とした商店、制服姿で談笑する丸刈りの見る目にもすっきりと見える男性たち。桜並木、銀杏並木、しだれ柳。

母は私を背負って姉の手を引き、ただ公園によった後、買い物に行くばかりだったから、いつも決まった道しか通ってなかっただろう。

しかし、私は、その何倍もの風景を見ていた。時代の層を、無意識に自由にくぐり抜けて。