私(以下は記録者である佐藤)は、光の手紙(といってもまちまちの紙に全然違う筆跡で書かれており、多分一通として書かれたものではない)を受け取った後、光を探した。光は、仕事先である道具店をやめ、住んでいたアパートを引越し、振込先になっていた銀行口座を解約していた。非常時用にと聞いていた携帯電話は常に留守電になり、彼女が使っていたフリーメールのアドレスは解約されてエラー表示が続くばかりだった。

 おそらく、これがはじめての組織の検査を通していない光からの手紙だとわかったから、私は組織にも相談できず、異常事態だという焦りばかりを募らせた。

 私は未練たらしく幾度も留守番電話に連絡がほしいといれ、光につながりそうな場所を歩き回った。光が残した手がかりはとても少なかった。話にあったかもしれない繁華街、彼女が野外訓練に使ったかもしれない射撃場、唯一明確に場所がわかっていたいつか行ったという地方の大学図書館にすら行ったのだ。

しかし、光はいなかった。

私は、彼女が死んだことを受け入れた。少なくとも、暗殺者としての彼女はもう死んでいて、ただ彼女の影が生きていたに過ぎないのだから、その体も一緒に死んでしまったっとしても不思議はない。

ただ、願うのは、暗殺者としての彼女は死んでも、新しい、光という名前以外の何かをもって、別の命として彼女が生きていることだ。命ぜられるままに道具として人を殺したからといって、無条件で彼女が死ななくてはいけない道理はないはずだ。彼女は、ただ暗殺者として生きていただけで、本当にそれがあまりにも大きな特殊条件であっただけで、ほかには私ともなにも変わるところのない人間だった。

私は、実はこの物語に登場している。幾度会っても「彼女」は僕のことを思い出さなかったし、手紙と電話だけでやり取りをしていた「彼女」は、そのことを知らない。私は、いや、この先は、当時と同じように僕と書こう。僕は彼女と始めてあった日を覚えている。僕は結局公務員ではなく事件記者の道を選んだ。彼女にあえることを期待したわけではない。だから、この仕事が始まってから、彼女とは電話でしか話をしていない。

僕の中で彼女はあの時と印象は変わらない。薄暗い、古い本のにおいの似合う静謐な場所にふさわしい雰囲気の少女のままの印象だ。

彼女の問いかけに、僕も答えを見失っている。

彼女は今どうしているだろう。僕はそう、考え続けている。

僕は、彼女の過去を探すことに決めた。そして、彼女を探すことに決めた。