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10.引退
(1)
崇と私の最後の仕事の話をしよう。
私は、兄の件があった後、組織としては私を目立たせたくないと言う理由で殺しの仕事からははずされていた。やっていたのは新人の基礎訓練の相手だった。定のような相手もいたし、中学生くらいの女の子もいた。ただ、私が崇とやったようなマンツーマンの生活はせず、集団指導のなかでの担当としての師弟関係だった。
組織の方針も、このころから変わったのかもしれない。
これは、組織が個人主義を導入して徒弟制度のような方法を排除していくと言う判断したのであったら、精神面で各人の弱点を排除しようということだろうから、正しかったのだろうと思う。
この組織の判断は、私を結局最終的に破壊したのかもしれない。この方針のために、一度精神的に誰かをよりどころにすることを覚えてしまった私は、次に精神的よりどころにするべき相手を得ることができなかったのだ。
そして、たった一つのよりどころとともに私が壊れたと言うことは、組織の判断が正しかったことを証明したのだろう。