9.兄
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今回は、普段とは違う、短い話をする。
暗殺者以外の組織の人間の話をしようと思う。いや、それは今から話そうとしていることの本質とは違う。正確に言おう。私の兄の話をしよう。
この話をすれば、おそらく私の身元やいろいろなことを調べられるようになってしまうと思うから、公開はしてもらうわけにはいかない。でも、私にとっては避けることができない話なので、聞いてほしい。
子どもの頃、私が組織に入る前、兄に最後に会ったのは、私が6歳、兄が10歳の秋だった。以来、兄の消息はわからなかったし、一度も兄を探すこともなかった。兄はいい家に引き取られ、裕福なその家を継ぐために勉強し、まともな仕事についていると思っていた。だから兄と関係を持つつもりはなかった。兄が幸福でいるだろうと信じていた、それだけで私には十分だったのだ。
でも、ちがった。探せばすぐに見つかるところにいた。組織の中だ。