(8)

 定のことは、実は話すことはここまでだけで、もうあまりない。

 定は翌日うまく相手をしとめ、もっと大人数での作戦の訓練のために、その夜私たちの宿舎を出て行った。私は(私としては異例なことに)定とホットラインになる電話番号を交換したけれども、それ以後一度もかかってきたことはない。組織での正式が決まると名前は変わることが多いはずだから(それまでの社会的経歴がなくはじめからほぼ同じ組織内の通称で通している私は少数派だ)、今ももし定が組織にいるなら定という名前は使っていないはずだ。だから、定は次の名前で組織にいるか、組織から出て行ったかしたはずだから、もう消息を追うこともできない。

 でもいいのだ。

 定は私のお兄さんで、弟で、始めての弟子だ。