(5)
「じゃあ行こうか」
私はいつも使っている固い素材のトートバッグにマグナムをいれ、ユニクロのスニーカーをはいて外に出た。冬だとある程度厚いコートを着ているからジーンズのベルトに差し込んでいけるから手ぶらでもいいのだけれど、今はもうそろそろ春になるころだからそうも行かない。大きい武器を選んだのだから仕方がない。
そして私は、スニーカーをおもちゃのようなパンプスに履き替え、目的のビルの前に行き、人待ち顔で立っていた。かなり露出が大きい格好だったから普通の街娼と見分けがつかないはずだ。
そして、約束の25時、対象が出てきた。私は返り血の届かない5mの距離を確保して肩にかけたトートバッグから銃を出し、スタンダードに足を肩幅に広げ、やや前傾姿勢をし、構え、3発撃った。
といって、かかった時間は10秒ほどだ。
撃ち終わると、当たったことは撃った瞬間にわかったのでバッグに銃を放り込み、そのまま身を翻し、ダッシュで走り出した。5分ほどのところで路地に走りこみ、ヒールを脱ぎ捨てゴミ箱に叩き込み、スニーカーになると露出の高い服のうえにひざ下までの長い羽織物にできるシャツワンピースを羽織ってそのまま路地を走りぬけた。そして、駅の改札を抜け、満員に近い終電に駆け込み地味なメガネをかけた。メガネは車内の異常に高い湿度のためにたちまち曇って、私の目を世間から隠した。
私が家に着いたら、崇と定が待っていた。
「ただいま、崇」
「おかえり」
「定、おかえり。ちゃんと帰れたんだね」
「はい、一本前で」
「そう、余裕見ておいてよかった」
「光、君の仕事の感想は聞かなくていいの?」
崇は思わずという感じで苦笑して聞いてきた。
「聞く必要ないよ、明日同じことをやってもらうから」
「え?」
「訓練、明日、同じようにやってもらう。街路を設定して、走り抜けてもらう。本当は抜き打ちのつもりだったけどいいや、定、そのつもりでいて」
定の顔色にほんの少しあせりの色が見えた。