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さて、私は毎週月水金、潔とゲームをするためにボランティアに通った。その日によって違うゲームをした。2ヶ月間、毎回別だった。潔がオセロのグループに入っていたのはほかのグループでは手ごたえのある相手がいなかったからのようだ。囲碁、将棋、バックギャモン、ジェンカ、ウノ、花札(これは途中で職員に止められた)、モノポリー、チェス。どうやら全部のゲームで私は及第がもらえたようで、毎回「また次回」といってもらえた。

とはいえ、平和な日々の間にも潔の事件の捜査は進んでいた。施設の職員も、潔の事件のことは知っており、入所者もうわさとして聞いていたようだ。潔のことは、施設内でも少し浮いた様子が見て取れた。ただ、潔が高齢であり身よりもないことから警察では逮捕したものか、逮捕したとしても状況が過剰防衛であるから起訴相当となるかの判断に迷っているようだった。

潔の起こした事件はかなり単純なものだった。電車で一緒になった男が酔って近くにいた女性を殴った。そしてそれを止めた潔も殴った。それで潔は、先のとがった傘で首筋を突いた。傘は偶然にも(ということになっている)首の裏の頭との境あたり、ちょうど盆の窪を陥没させた。潔は隠すつもりもほとんど無かったようだ。傘はそのまま先を雨どいの水で洗っただけで駅のゴミ箱に捨てた。そして傘のなくなった潔は雨にぬれて家に帰った。

私は、潔の逮捕は近いなと思った。潔の生活態度を見ていると、老人であるが潔の判断力に問題があって事件を起こしたのではないと思えるのだ。組織も私による監視の傍らいざというときの暗殺者の選定に入った。

私は、実を言うと、はじめて老人と仲良くなったので、潔が殺されないといいなと思っていた。組織に入る前に祖父母と暮らしていたが、祖父母は因業で、孫である私や兄に対してでさえ意地汚いことをよく言った。身近でないからあらが見えないということもあるだろうが、普段から潔は恬淡として揺らがない感じがあった。

私が潔の生活を表で監視しているほかに、裏で潔の監視をしている要員がいた。彼も潔に好感を持っているようだった。私や彼以外の監視要員もだろう。私たちのような仕事をしている人間が、同じ仕事をしている人間に好意を持つことは実は珍しいはずだ。

しかし、潔は殺さなくてはいけなくなるだろうと思ってはいた。