(8)

 そんなことをやっているうちに最終日になった。

 観と私はずいぶん仲良くなった。といってももちろんせいぜい食堂でかち合ったら一緒に食事をする程度だったが。私はここで一週間をすごしただけだったが、観は基礎訓練で3ヶ月をすごし、どういう仕事をするか決まったら、その仕事を実際にするようになるまでここで訓練を続けることになるという。14歳と言うのは組織に入る年齢としたら標準的なレベルに入れることはできるが、その中では若い方である。観はこれから結構もまれるのだと思った。大変だな、と。

 最後の日、私が観と別れる前に、最後に話をしたのは、お互いの将来のことだった。

 その頃は、私たちには本当は将来なんかないのだと思ってた。私も観も、組織の方針で仕事をする。仕事をやめることも組織の許可が必要だし、辞めてからも報告は続けなくてはいけない。やめる前に死ぬ可能性のほうが高い。もしかしたら、崇みたいに子どもを預かることがあるかもしれない。でも、家庭を持つことはないんだろうなと思った。

 それでも、やっぱり将来の話をした。

 「観は、将来どこ行きたい?」

 「うーん、外国」

 「えっ、そうなの?」

 観の考えは結構しっかりしていると思ったからそんな子どもみたいな返事があると思っていなかったから、ちょっと驚いた。

 「そうだよ、だって俺日本にいたくないもん」

 「あー、そっちかー」

 「なんで、お前は日本でいいのかよ」

 「うーん、もういっぱいやってるから海外行くと時効止まっちゃうしねー」

 「そういう理由かよ」

 「それに崇もいるしなー」

 「えっ、お前まじであいつが好きなの」

 「いや、あの、恋愛じゃないよ。でもさ、やっぱ崇が今一番大事な人なんだよね」

 「うわ、俺にはわかんねえなあ」

 「うーん、私も家族運悪いけどね、それを崇が拾ってくれたからさ、崇がいていいって言ってくれる間は崇といたいなあ」

 「お前、甘えてんなー」

 「いいじゃん」

 「崇だって組織の命令でお前といるんじゃん」

 「…そうだよ。それでもいいんだもん」

 「…ふーん」

 観はそこで追及をやめた。それは多分観のほうが私よりやさしかったからだろう。

 「やっぱ見ていることが違うよな、俺はどこに行くかでお前はだれといるかだもん」

 何によって違うといっているのかは触れないことにしたのだろう。

 「性格じゃない?」

 私はあえてはぐらかした。

 「そうかー?」

 そこで私を駅まで送る車が来た。

 「なあ、もしさ、俺が外国行けなくて、日本で仕事することになったらさ、俺と組まない?」

 「え、うーん」

 「崇だって俺らがまじでやるようになったころには引退だろうしさ」

 「は?崇と何か関係があるの?」

 「あるよ、俺が崇に勝てるようになんないといけないしさ」

 私ははぐらかした。ほかに選択の余地がないからそういっているだけだと思ったからだ。

 「…味方に暴力振るうなよ。私暴力振るう人と一緒にいたくないぞ」

 「ははっ…じゃあな」

 最後まで笑うのが下手だなと思った。でも、最後が一番うまかった。