『一本の映画を観たみたい』



櫨ろうそくの灯火が

燃え尽きた時

拍手とともに



ろうそく一本が灯す時間は

45から60分間くらいでしょうか。

決して短くはない時間を

春馬さんが小さな一つのろうそくに

魅了された時間が綴られていました。




琵琶湖の湖西 高島市で

和ろうそくを100年以上

作り続けている大與さん

日本製滋賀県の取材です。



滋賀県 大與さんを読んでみて

和ろうそくを取り巻く環境がとても奥深くて

素人の私が和ろうそくを

読み伝えきれるものではありませんでした。

けれど

灯すとその力強い灯火に魅了されました




和ろうそくを灯してみて

最初想像していた"静かな火"ではなくて

生きてるような"動なる火"だったことに

まず驚き、見とれてしまいました。



自分が大與さんのお店に伺ったとき

日本製を読んだ後にもかかわらず

固定概念に囚われた私は

ろうそくはお仏壇で使いますと

言ってしまったことを痛く後悔しました(汗)


いろんな楽しみ方があると思うけど

見ていないともったいない^_^





大きく揺らぐ和ろうそくの火を見つめていると

火の動きが瞬く間に変化するのが面白くて

目で追ってしまいます。


灯火そのものに魅力があるので


見つめながら

ぼんやりリラックス。

時々パチパチと鳴る音を聞いたり

こんど何しようと考えたり


ゆったりとした時間が

訪れる感覚。





春馬さんが楽しげにろうそくの火に触れ

職人さんが作り出す灯火の時間に魅了される様子は

春馬さんが伝統を受け継ぐ人たちを

応援したい想いをより強くしたように見えました。


多岐に渡るので、項目ごとにお伝えします。

ご興味のある部分を読んで頂きましたら幸いです。










□念願の灯火はドラマチックだった



今回の春馬さんは

櫨ろうそくを灯した体験を

『念願の灯火はドラマチックだった』

と仰って、和ろうそくの魅力を

伝えて下さいました。


日本製連載初期に、和ろうそくの

材料である"い草"が熊本で生産量日本一なのを

知ってからずっと待っていた

春馬さんと和ろうそくの対面のようです。


櫨ろうそくがどうやって作られるのか

産地や材料 仕組みを教わった後

工程のひとつ 手掛けを

体験させて頂いた春馬さんですが


手掛け作業を体験した後

四代目若き社長の大西さんが

自ら作り上げた櫨ろうそくに

灯をともし


その一部始終を春馬さんと取材班の方たちが

注視する様子が綴られています








火をつけて暫くすると

芯がろうを吸い上げるので

炎がふわっと大きくなるそうです。





ろうそくに火をつけてから20から30秒くらい。
動画の5秒くらいで火が大きく揺らぎます。





『洋ろうそくと全然違いますね。

    火にたくましさがある』


と春馬さん語っています。




ちょっとくらい風があっても

動かしても全然大丈夫なんです。












□陰翳礼讃の美


和ろうそくの火は

電気の照明のように隅々まで明るくならないけど

陰翳礼賛のごとく

奥ゆかしい美しさが感じられるそうです。






陰翳礼賛は谷崎潤一郎の随筆で 電灯のなかった時代の暗がりの美しさをいろんな角度から綴っています。


日本座敷では障子に写る淡い光に対比して、奥にある暗い床の間は掛け軸や花によって、その陰翳の深みをいっそう増すとありました。





大與さんの店内はまさにこの言葉を表現したような雰囲気。

 



玄関戸を引いて入っていくと、店内の構えは土間の奥が一段上がった座敷になっており、正面の壁はあえて抑えた薄墨色の板張。板壁の中には赤いアクセントが効いた飾り棚が光っていて、天井全体が格子組のなっており竪桟の隙間から自然光がうっすらと差し込んでいます。


お寺の本堂を思い起こすような神聖な空間で、気持ちが引き締まります。



春馬さんは、のれんをくぐって店内に入ると

その和モダンな空間に

「うわっ!素敵なお店ですね」と

声を上げたそうです。



ほんとお洒落な空間です。

照明は陳列棚を除き極限まで抑えられて、ろうそくの火の灯りのようでした。




店内の奥にあるテーブルのある部屋は、日本製滋賀県の一枚目の写真で、春馬さんが覗きこむようにろうそくを観たあの部屋です。


天井の低い商品棚付近は明かりのトンネルのようで、その奥にあるテーブル室の緊張感が陰翳の美しさを引き立てていました。



春馬さんの写真は心なしか見つめてるものが多いですが、和ろうそくや原料となる櫨の実はこの座敷に展示されているので、見入ってついつい視線が下がるのですね。







□櫨ろうそくの構造


櫨ろうそくは、和紙にい草を巻き付けた芯に、中はストローのように空洞になっています。ろうの層を手作業でバームクーヘンのように幾重にも塗り重ねた作りが櫨ろうそくの特徴。


若干緑🟢掛かって見えるのは、櫨ろうの色味です。一年くらいすると真っ白に変化するのだけど、それは○○酸の影響と大西さんが仰っていました。

帰ってから○○が思い出せなくて調べてみると主成分の中性脂肪(パルミチン酸57%ステアリン酸10%オレイン酸12%)酸が白い粉を吹くようです。どの酸が影響してるのかな。


上掛けのろうは乾燥させた溶けにくい白蝋を一部使用しているので、火をつけたとき堤防のような役割で中心のろうを垂らさないそうです。


日本製の大西さんが「和ろうそくのろうは粘りけが強いので、洋ろうそくのように木綿の芯だとろうを吸い上げられない」和ろうそくの太い芯だとしっかり吸い上げて消えにくい強い炎になるそうです。


櫨ろうの成分には日本酸という粘り気が強い成分が3から5%入っていて

日本の良質な櫨には多く含まれているそうです。


春馬さんが手掛けの作業をさせて頂いたとき、ろうの質感を

「思ったよりヌメヌメしてる」と言っていたので、

ヌメヌメは日本酸のことなのかな。





□櫨の実

櫨ろうそくの原料は櫨の実そのものです。


最初実の成分を加工したり何かと混ぜることでろうを作ると勘違いしてまして。。

大西さんに優しく教えて頂きました。

櫨の実を蒸して熱し液体状になった実を押して抽出する。それも専門の業者さんが全て行うそうです。


櫨ろうの融点が低く、溶けた温度は約40度なので、手でろうを塗り重ねる「下掛け」「上掛け」作業が可能になるそうです。



櫨を栽培してる箇所は四国と九州に多いようで、こちらの動画では長崎の島原半島の櫨ろう業者 本田さんが行う昔ながらの製法「たま絞り」みることができます。


櫨の実が黄色になると、専門の「ちぎり子」が枝にのって収穫します。枝を切ると数年実がならないので枝に乗るのですが、職人さんは高齢化しており課題が多いそうです。


伝統を繋げていくには大変な努力が必要です。頭が下がります。




明日への扉に大西さんが出演。櫨の実からろうが絞られる工程が見られます。 

今より少し若い大西さんが櫨ろうそくを製作する様子も







中編に続きます

お読みくださりありがとうございます







大與