昨日なんとなく「ビック」と言う映画をお部屋で見てたら、その映画のワンシーンにお家の前に集めて山にしてある落ち葉の中に子供が入って遊んでいる場面があった。

一瞬のことだったけれど、とっても懐かしい気持ちでいっぱいになって、テレビの画面を見たまま、だけど、内容が全然入って来なくなった。
よく、ドラマや漫画であるみたいな周囲の音がなくなるような感じ。
時が止まったよう。とは違う、時間はいつも通り流れて行くのに自分1人だけ時空の中に立ち止まって、その横を情景が流れて行く感覚。

小学生の頃、秋になると学校の庭は落ち葉の絨毯が敷かれる。

メガネをかけた、すごく細身の日焼けしたおじさん。
笑うと深く刻まれたシワがくしゅっと寄ってとても優しい顔になる。
なんだか自分のおじいちゃんに似た雰囲気を漂わせていたけど、おじいちゃんより少し力弱そうな印象だった。

教室の窓から落ち葉で埋め尽くされた庭が見えて、授業中にはよくぼーっと外を眺めてた。
夏の間の草刈りやプールの掃除で日に焼けたおじさんが涼しくなってもなお汗を流しながら落ち葉を集めて山を一つ、二つ、三つ、作って行く。

あの優しかった用務員のおじさんはとても働き者だった。
毎日どの先生よりも早く学校に来ていた。どの生徒よりも早く来ていた。
私が一番乗りで誰もいない学校に登校した時もおじさんだけはもう作業着を着て学校にいた。

体育館の掃除をしてくれているおじさんと休み時間に男子は相撲をとってた。細くて弱々しいと思っていたおじさんもさすがに小学生には負けなかった。それでも2.3回に1回のペースでおじさんは負ける。勝った男子達は嬉しそうにしていて、他の子も「次は僕!」と列を作っていたけど、私はおじさんの優しさに気づいていたような気がする。遠い記憶なので確かではないのだけれど。

外に出た時の匂いが大好きだった。
秋の匂い。

季節にははっきりとした匂いがある。

春、夏、秋、冬。
全ての季節にそれぞれの匂いがある。
私が通っていた小学校も、住んでいた町も、その匂いが強く強く香る場所だった。

山になっている落ち葉に飛び込む。
耳元で聞こえる乾いた落ち葉が擦れる音。
あれは秋の音。
まだ半袖を着ている腕にチクチクと刺さる小枝や割れた落ち葉が痒い。

あの感覚、
あの音、
あの匂い。

すごく好きだった。
懐かしい。
懐かしい。
懐かしい。

全部が一瞬で頭の中を駆け抜けて行った。落ち葉で遊ぶ子供を見た瞬間に。

思い出すことなんてなかったのは、私が大人になったからなのかな。
すごく幸せで温かい幼少期を過ごして今の私がいる。


男子と相撲をとった後、バドミントンの相手をしてくれたおじさんは私が小学校を卒業する一年前に定年退職した。
今も元気であの町にいますか?




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