私がこうしてIT業界に片足を突っ込んでいるのも、
この本を探すためだったと言って過言ではないのだけれど、
その話は、長くなるのでまたの機会に。


10年間、ネットの海を探し続けて、ようやく再会できた本です。


児童文学とは思えないほど、不条理で混沌とした短編集。
幼い頃に読んで以来、私の心に焼き付いています。


三田村さんの描く世界の中では、
子供はあまりにも、無知で無力・・・


この本の題となっている、
『おとうさんがいっぱい』も面白いのだけれど、
秀逸なのは、ラストを飾る『かべは知っていた』


『かべは知っていた』


人生に疲れた父親が、壁の中に入ってしまう。
彼の存在を否定し、わが道を歩む母親。


そして彼らを、なす術なく、ただ見守る息子が主人公。

社会復帰の道を閉ざされた父親は、壁の中から
淡々と、自分の生涯を語りだす。

やがて、彼は壁の中に消えていく。
息子への僅かなお金と、最期の言葉を残して。


11歳の時に読んだ話ながら、
未だに私の心に深く焼き付いているお話。


薄っぺらくて、冷たくて、空間を仕切るための存在の中に、
自分の生みの親の存在が、消えていくと知ったら・・?


ただ事態に流されることしかできなかった息子が、
自分の人生を選択していく最後のシーンには…圧巻。



『おとうさんがいっぱい』


ある日突然、おとうさんが三人に増えてしまう。


主人公である息子が、本当の父だと思う一人を選び、
他の二人は遠くの施設に追いやられてしまうという。

自分の選択が、父たちの運命を変える。
突然、降りかかってきた現実。そして責任。


息子の選択とは…?
そして、その代償とは…?


突然の逆転に、鳥肌が立って、
ただ、本を抱えて、震えるしかなかった。