かなりの時間が経過しているので、本当に今更ながらになるのですが、先々月の7月28日(水)に、滋賀県大津市の大津アレックスシネマまで鑑賞に出向いて来ました、細田守監督の話題の最新作アニメ『竜とそばかすの姫』の感想について、自らの備忘録的にも、次より記しておきたいと思います。
今年度の36本目の劇場鑑賞した作品。
(※今年度の大津アレックスシネマでの18本目の劇場鑑賞作品。)
「インターネット世界版・美女と野獣(21.7/28・2D鑑賞)」
ジャンル:ファンタジー
製作年/国:2021年/日本
配給:東宝
公式サイト:http://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/
上映時間:121分
上映区分:一般(G)
公開日:2021年7月16日(金)
監督・原作・脚本:細田守
VoiceCast(声の出演):
すず:ベル(中村佳穂) / 久武忍:しのぶくん(成田凌) / 千頭慎次郎:カミシン(染谷将太) / 渡辺瑠果:ルカちゃん(玉城ティナ) / 別役弘香:ヒロちゃん(幾田りら) / 吉谷さん(森山良子) / 喜多さん(清水ミチコ) / 奥本さん(坂本冬美) / 中井さん(岩崎良美) / 畑中さん(中尾幸世) / ジャスティン(森川智之) / ひとかわむい太郎:ぐっとこらえ丸(宮野真守) / すずのお母さん(島本須美) / すずのお父さん(役所広司) / 石黒賢 / ermhoi / HANA / 竜(佐藤健)/ イェリネク(津田健次郎) / スワン(小山茉美)
【解説】
「サマーウォーズ」「未来のミライ」の細田守監督が、超巨大インターネット空間の仮想世界を舞台に少女の成長を描いたオリジナル長編アニメーション。
高知県の自然豊かな田舎町。17歳の女子高生すずは幼い頃に母を事故で亡くし、父と2人で暮らしている。
母と一緒に歌うことが大好きだった彼女は、母の死をきっかけに歌うことができなくなり、現実の世界に心を閉ざすようになっていた。
ある日、友人に誘われ全世界で50億人以上が集う仮想世界「U(ユー)」に参加することになったすずは、「ベル」というアバターで「U」の世界に足を踏み入れる。
仮想世界では自然と歌うことができ、自作の歌を披露するうちにベルは世界中から注目される存在となっていく。
そんな彼女の前に、 「U」の世界で恐れられている竜の姿をした謎の存在が現れる。
主人公すず/ベル役はシンガーソングライターとして活動する中村佳穂が務め、劇中歌の歌唱や一部作詞等も務めた。
謎の存在「竜」の声は佐藤健が務めた。
ベルのデザインを「アナと雪の女王」のジン・キムが担当するなど、海外のクリエイターも参加している。
(以上、映画.comより、引用抜粋。)
今年のカンヌ国際映画祭の招待作品として現地で上映された際に、細田守監督が観客から14分間ものスタンディングオベーションによる称賛を受けたというニュースを耳にはしてはいましたが、それ以外は、特に事前に情報を入れずに鑑賞に臨みました。
率直な感想としましては、
この作品は映画と言うより、むしろ歌の力を借りた、ある種のPV(プロモーションビデオ)的な映画の様な感じがしましたね。
だからなのか、劇中歌などの歌の迫力や音楽の力には圧倒をされはするものの、映画の内容的には一体どうなのかと考えるとかなり疑問符が付く映画でしたね。
要は、これまでの細田守監督の一連のアニメ路線とは一線を画した、ある種のPV的なミュージカル風の映画と思えば合点が行くのかも知れないですね。
英語タイトルが<Belle>とある様に、これは明らかに【美女と野獣】を下敷きにしたミュージカル映画と観れば良いのかも知れないですね。
あの『サマーウォーズ』(2009年)に続いて、約10年を経過して、インターネット上の仮想空間という題材を描く作品に再度挑むに際して、現実とネット世界を交錯させ紡ぐのは、細田守監督が敬愛する、アニメ映画史上初めて、アカデミー賞作品賞にノミネートされた事でも話題を呼んだディズニーアニメの不朽の名作『美女と野獣』(1991年)を基にした、魂の救済の物語。
お話の流れ的には、
日本の高知県の片田舎に住む内藤鈴(声:中村佳穂さん)は内気な高校生。大好きだった歌も、歌う楽しさを教示してくれていた母親を六歳の時に水難事故で失って以降、そのトラウマから歌さえも歌えなくなってしまっていたのでした。
そんな或る日、親友のヒロちゃん(声:幾田りらさん)に誘われてアクセスしたのが、約50億人以上が集うインターネット上の仮想世界<U>。
そこは、生体情報から生成される分身<As>として生きる場所。
鈴は、自分とは正反対の華やかな<As>に戸惑いつつも、「ベル」(こちらの声も中村佳穂さん)と名付けるのでした。
自縛から解き放たれたように声を響かせるベル。SNSで拡散された歌声は評判が評判を呼び、またたく間に<U>の世界の大人気のディーバ(歌姫)に。
そこへ、自警団に追われた「竜」(声:佐藤健さん)が現れる。
誰彼構わず攻撃する嫌われ者でしたが、背中に沢山の傷を負った姿がベルには気になって仕方がなかったのでした。
性別も年齢も国籍も不明な竜。なぜ、敵意をむき出しにするのか。謎をはらみながらストーリーは進んでいく。
といったイントロダクションの映画でした。
先ずは、冒頭からスクリーンいっぱいに登場する仮想世界<U>の構造美に圧倒されると思いますが、壮麗で複雑な空間の、まさにデジタルアートといった域の表現手法には驚かされます。
その中を縫うようにカメラは動き、伸びやかに浮遊するベルや無数の<As>を捉えていく。
細田守監督があの『サマーウォーズ』(2009年)で試みた、仮想世界を可視化させる映像表現を、本作品では更にブラッシュアップし、そのスケール感は新たなる次元にたどり着いた感もありますね。
キーポイントとなったのは、多彩な才能を持つクリエーターとのコラボレーションでしょうか。
<U>をデザインしたのは、ロンドン在住の新進気鋭の建築家エリック・ウォン氏であったり、ベルのキャラクターデザインは、ディズニーの『アナと雪の女王』などでも名を馳せる名アニメーターのジン・キム氏が担当するなど、国内に留まらず海外にまで目を向けて、枚挙に暇が無いほどの数多くの有能な才能との融合による作品である点。
また、『美女と野獣』を下敷きにしたミュージカル風映画だけあって、歌唱シーンにかなりの比重が置かれており、今回は音楽も複数のクリエーターが手掛けており、映像もそうですが音楽・音響を担当した彼らの楽曲の出来映えに負うところが大きい作品だったとも言えるでしょうね。
そういった点からも、この作品を観ていると日本のアニメーション技術の水準の高さの凄さを改めて実感させられました。
映像の懲り具合もさることながら、良質な音楽映画・ミュージカル風映画である点からも、テレビモニターなどではなく、是非とも音響設備の環境の優れた最新の映画館でご覧頂くのが最適かとも思うアニメ映画でしたね。
映画のその訴求的な内容としては、
インターネット社会に対する問題提起として、インターネットはその匿名性から自由に自分の意見などを発信し、新たな出会いや夢をもたらしてくれる。
けれども、匿名では<本来的な信頼>を培うことは出来ないのではなかろうか、といった導きの下から、インターネット上で繋がる事による弊害とその恩恵についても考えさせる内容になっていました。
そこに加え、自警団やヒーロー像のあり方を皮肉り、正義とは?秩序とは何なのか?という事を考えさせたり、またネグレクト(児童虐待)問題を絡めたりと、あまりにも作品に込めたメッセージが多過ぎたり、またそれらがあまりに唐突すぎて、かなり強引なチカラ技的な脚本になっている点にも見受けられるのが、少々勿体なく感じたのは、おそらく私だけではないでしょうね。
この点などが、この作品を賛否両論を大きく分けてしまっている所以かも知れないですね。
本作は、前作の『未来のミライ』(2018年)に続き、細田守監督による単独脚本であり、あの『サマーウォーズ』などの一連の過去作でも脚本を務められた名脚本家・奥寺佐渡子さんとの共同脚本をやめられ細田守監督の単独脚本となられてからは、かなり脚本の浅さや、登場キャラクターが多い割りにはそれぞれのキャラクターが弱い点など、少々いびつな脚本仕立てになっているように感じてしまったせいなのか、私の場合にも、あの名作『サマーウォーズ』(2009年)ほどの感動までには至りませんでしたが、そこは本作のウリである映像美の凄さと歌と音楽のチカラで押し切っていくような作品でしたね。
高知県の仁淀川の川沿いのラストシーンは、清々しく、細田守監督の<真夏の映画>の本領発揮ではありましたね。
私的には、本作を初見した際には、それほどにも大きな感動もなかったのですが、但しながら、Millennium Paradeによる主題歌や中村佳穂さんが歌う挿入歌が、しばらくの間、脳内ループして仕方がなかったので、これらの曲を収録したサントラ盤などを購入して以降は、ヘビーローテーション状態で聴いております次第です。
私的な評価としましては、
前述しました通り、最新作の本作も、細田守監督による単独脚本作品ということもあるためか、かなり脚本の浅さや、登場キャラクターが多い割りにはそれぞれのキャラクターが弱い点など、かなりいびつな脚本仕立てになっているように感じてしまったせいなのか、私の場合、あの名作『サマーウォーズ』(2009年)ほどの感動までには至りませんでしたが、そこは本作のウリである映像美の凄さと歌のチカラで押し切っていくような作品でもあり、日本のアニメーション技術が高水準の域にある事を実証したような作りのアニメ映画でしたので、五つ星評価的には、満点には至りませんが、高評価の★★★★(80点)の四つ星評価も相応しい作品かと思いました。
現在の新型コロナウィルスの感染拡大状況が沈静化してきた暁には、特に、本作の場合には、劇場で観てこそナンボの映画かとも思いますので、是非とも劇場まで足をお運びの上、ご鑑賞下さればと思います。
HALU6700@HALU7100
@otsualexcinemas 「同じ映画を上映してるのなら、 #大津アレックスシネマ で観ようや!」との父親の言葉に従い、今朝『#竜とそはかすの姫 』を鑑賞。 映像美は凄いながらも何だかモヤモヤ感が残る帰結をさせた脚本の作品で… https://t.co/qjo2rZI0xe
2021年07月28日 22:17
HALU6700@HALU7100
#大津アレックスシネマ で『#竜とそはかすの姫 』鑑賞。 美女と野獣を下敷きにしたかの様なキャラ設定や脚本が浅く、名作『サマーウォーズ』程の感動は得られず。但し、ネット上で繋がる事による恩恵と弊害についての問題提起や映像、音楽など… https://t.co/dwWCMHsH0K
2021年07月28日 17:51
今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。




























