わかきふたりは
なにもせず
なにもいはずに
ためいきばかり。

逢つたらあれも聞きたい、これも言はう、と
胸一杯に「つもる思ひ」を持つてゆくのに、
さて逢つて顔を見ると、
もうなにもかにも心が充ちたりて、
何も言ふことがないやうな気がして、
手のおきどころに困りながらだまつてゐる
といふのである。

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「風のふく日」

ふとどうかしたはづみに
あの子のうつり香が 鼻について消えない。

はやく仕事をすまして 逢ひにゆきたい。


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可愛い子だと初めは思い
好きな娘と或る時思い
今はなかなか憎らしい








『竹久夢二 恋の言葉』 石川佳子編 河出書房新社 2004