「光の大河」
ありがとう
わたしはこうしてあなたに出会った
それがわたしのすべてです
とどまることのない光の大河のなかを
わたしは泳いでいきます
あらゆるものが去りわたしはいやおうもなく
新しい光の流れのなかを
どこかにある永劫の光の海にむかって
泳いでいきます
めくるめくように時は過ぎていく
昨日と同じ今日はなく
茜色の雲も、宵やみの金星も、砂漠を吹く風も
永遠に回転する万華鏡のように
再びわたしとめぐりあうことはありません
でも、わたしはあなたと出会った
ありがとう
それがわたしのすべてです
あなたにはわたしがどんなふうに見えたでしょうか
柔らかいうす緑色の新芽におおわれた春の土手の道を
駆けぬけていくわたしは幸せそうでしたか
桜花の舞い散る四月の校庭で
横笛を吹く私はものうげでしたか
銀色の光を投げ返す川原のあの笹の茂みを
漕いでいく私は旅立つ水鳥のようだった?
あのころも、そしていまも
わたしは生きています
生きてそして変わり続けています
とどまることのない光の大河のなかを
わたしは泳いでいきます
あらゆるものが去りわたしはいやおうもなく
新しい光の流れのなかを
どこかにある永劫の光の海にむかって
泳いでいきます
わたしは変わってしまいました
たくさんの哀しみや、たくさんの嘆きが
闇を編む樹木のように幾重もの影を落とし
嘆き、叫び、ときには憎み、
狂おしいほどの感情が渦を巻き
強く冷たい風を浴びて
わたしは無数の葉を落とし
それでも節くれだった両の手で
にぎりしめようとしているわたしの命
激しい光の波に揺れまどい打ちひしがれ
時には岸を見失い溺れそうになりながらも
それでもわたしは生きています
生きてそして変わり続けています
とどまることのない光の大河のなかを
どこかにある永劫の光の海にむかって
わたしは泳いでいきます
でも、わたしはあなたと出会った
ありがとう
あなたにはわたしがどんなふうに見えたでしょうか
群青色の夕闇を泳いでいくヤマメのようだった?
あなたを思って泣いているわたし、
あなたを愛して迷っているわたしは
はぐれた金色の子狐のように見えたでしょうか?
わたしはあなたと、あなたのいる世界が心から好きでした
あのときの祈り、あのときの願い
そのすべてをあなたにあずけて
わたしは光の大河を泳いでいきます
すべては光のなかに溶けていく
わたしの形もわたしの意味も
すべては光のなかに溶けていく
哀しくはないけれど、
わたしはときおり問いかけます
あなたの目にわたしはどう見えた?
ただひとつ、それがわたしのこの世での姿
ありがとう
わたしはこうしてあなたに出会った
それがわたしのすべてです
とどまることのない光の大河のなかを
わたしは泳いでいきます
『ぐるぐる日記』