任意規定と強行規定 | 制限速度20~30km/h

任意規定と強行規定

 前にも書いたことがあるかと思いますが、民法の醍醐味はなんといっても任意規定であると思います。民法91条には「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う」という規定があり、例えば松林大学に少林寺拳法部という部があったとして、その部には「挨拶をしなかった者はスクワット20回、できないなら退部」という規則を部内に作っていたとします。さらに今年入部したばっかりの不真面目な桜田という新入部員がいたとして、桜田はふてぶてしく先輩に挨拶すらしないし、罰であるスクワットだって全然やろうとしません。そんな桜田を退部させようとすればすればで、桜田は「ふざけんなぁぁぁぁぁ~~!そんな法律は民法にはねぇ~~!」と泣き叫んでいつまでも畳の上にうずくまって、これでは練習どころではないという騒ぎです。しかしお分かりのように、民法91条は任意規定は有効であることを定めているので、紛争解決の手段としての部内規定を破った桜田は少林寺拳法部を退部せざるをえないというわけです。しかし前にも書いたように、民法90条には「公序良俗規定」があるので、「挨拶を忘れたら裸になって逆立ちをしなくてはならない」といった倫理秩序に反する行為は許されません。


 ただし、任意規定は法律行為の中でも最下層に位置づけられます。例えば「少林寺拳法部では重婚が認められる」などと勝手に規定を作っても、任意規定に優越する強行規定というものがあって、例えば労働基本法や著作権法のように、公益を守り弱者を保護する目的で、絶対に守らなければならないモノというものがあるわけです。だから強行規定である家族法によって重婚は認められません。それと補足的に注意しておきたいことがあるのですが任意規定には優越するが強行規定には負ける「慣習」という概念があります。例えば「少林寺拳法部では年功序列的に後輩は先輩のお茶やら座布団やらの世話をしなくてはならない」といった慣習がある場合、特に規則として決まってはなくても、暗黙の了解としてそうした決まりごとが実際に力を持ちます。よって、仮に少林寺拳法部の規定で「先輩は後輩に寛容であるべきだ」という決まりがあったとしても、慣習として先輩はお茶やら座布団の世話をされているのだから、そうした慣習は任意規定に優越し、よって桜田のように「先輩、お茶を忘れたからってそんなに怒ることはないじゃないすか?」なんて言ったにしても、それはやっぱり失礼なわけです。大体いままで説明してきた概念の効力を分かり易くならべてみると、強行規定>意思表示>慣習>任意規定って感じです。意思表示については、次のエントリーで説明しますので楽しみにしておいてください。