銅だって輝いてるよ 北口榛花さん やったね!
本当に力が無ければ、決勝の最終投てきで自己最高記録に迫る距離は出せない。こんな少女っぽいあどけなさが残る北口榛花さんのどこにそんな力があるのか不思議でならない。分かっているよ、練習したんだ、死に物狂いで練習したんだ。この大会直前のDLで優勝した自信が、今回の結果を産んだのだろう。
最終投てきのスタートで、槍を担いで、オレゴンの抜けるような青い空を見つめた。ふ~っと息を吐いた。その時、私は彼女がやってくれる予感がした。
ここで、中断。私はずっと前、オレゴン州はポートランドに行ったことがある。重要な会議が中止になり、やることがないので、泊まっていたホテルの真ん前にあるNike のショップに行き、ゴルフ・セット一式を買い、近くの河川敷パブリック・ゴルフ・コースに行った。ポートランドはあのコロンビア大河河口から上流に向かって広がる平原に開けた大都市である。私のそのコースでの2サム・パートナーはそのコースの常連会員の黒人のおじさんだった。そのおじさん、#1コースのティーに立った時、私に話しかけた。ダウンヒルのコースでは、あの青い空に向かって撃つんだよ、お兄さん、・・・と。よくある教え魔である。ドライバーのロフトはせいぜい10°から13°である。黙ってダウンブローすれば、ボールはその角度で飛び出すから、コースが平らであれば、フェアウエイの地面と平行に飛び出し、重力でどこかに落ちる。#1コースはダウンヒルだから、フェアウエイを見て撃ってはいけない、おじさんが言う様に、空のある一点を目標に撃つのがよい。ちなみに、米国製クラブは日本のクラブより1インチ長い。その小指の先ほどの長さの違いは、初めてのコースで買ったばかりのクラブで練習もせずにいきなりコースに出るハンデを加味しても、とんでもないミスショットを誘発する。空に向かって撃ったつもりが、擦ってチョロしてしまった。ダウンヒルのフェアウエイを横切る小川の中に吸い込まれた。かくして、ポートランドの暇つぶしゴルフはそうしてスタートしたのだった。
話しを戻そう、今回の世陸はポートランドの遥か南に位置する大都市のEugeneで行われているそうだ。勿論、私はオレゴンはポートランドしか行ったことがないので、その都市は知らないのだが、陸上競技の聖地であるそうな。そう言えばNike の原点もそこにあったのかもしれない、・・・。娘にバスケット・シューズをお土産に買ったのだが、なんで箱がないのだ、と泣きつかれた。娘はシューズよりもロゴが入った箱の方が大事だった様だ。かさばる荷物をできるだけ減らす苦労を娘は知らない、中身よりロゴが大事な娘を大人に育てる苦労も私は知らない。と言う訳で、北口榛花さんが見上げたオレゴンの大空こそ、ビッグ・スロウを予感させるスタートの景色だった。 おめでとう、貴方の槍はオレゴンの大気を裂いて、見事に63m27を飛行したよ、メダルは貴方の裂いた空間から刺し込む陽光をはね返す様に輝いていたよ!