こんにちわ。皆さんご機嫌いかがですか?コーネリアスです。今回は、あり意味前回語った国家有機体説の続編的な話になりますが、天皇と国家に関わる事、天皇機関説なるものについて語ってみたいと思います。

 この説、いわゆる憲法学界での学説ですが、これは、大正元年1912年に当時の東京帝国大学の憲法学者であった美濃部達吉教授が提唱した考え方です。以下、簡単に概要を纏めてみました。

天皇機関説

 

 

美濃部達吉博士

 

★天皇機関説

国家学説のうちに、国家法人説というものがある。これは、国家を法律上のひとつの法人だと見る。国家が法人だとすると、君主や、議会や、裁判所は、国家という法人の『機関』だという事になる。この説明を日本に当て嵌めると、日本国家は法律上はひとつの法人であり、その結果として、天皇は、法人たる日本国家の『機関』だという事になる。これが、『天皇機関説』または単に『機関説』と呼ばれるものである。      憲法学者 宮沢俊義による

 

これをもう少し分かり易く箇条書きにすると…

①国というものは、一つの団体で法律上の人格を持つ。

②統治権というものは、法人たる国に属するものである。

③国は機関によって行動し、日本の場合その最高機関は天皇である。

④統治権を行使する最高決定権たる主権は、天皇に属する。

⑤最高組織の異同によって、政体の区別が発生する。

 

因みに言うと、大日本帝国に於いては、国家元首に関して明確に記載があります。国家元首=天皇陛下です。これは帝国憲法第四条にあります…

帝国憲法第四条

『天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ』と明確に規定があります。尚、現行のGHQ作の日本国憲法に於いて国家元首が誰か皆さんご存知ですか?答えは、『居ません』…現行憲法下では、何とこの国には国家元首不在なのです!そもそも国家元首について、何ら記載、規定がありません。なので、天皇陛下なのか、総理大臣なのか本当に分からないのです。有り得ないですよね。今でもアメリカ🇺🇸なら大統領、イギリス🇬🇧ならエリザベス女王、こんな感じでどの国にも特定の元首なる存在が居て、ちゃんと憲法で規定されているもの。なのにこの日本だけは現状では憲法上『不在』なんですよ…だからやっぱり『憲法改正』しなきゃダメだって…いつまでGHQが作った『臨時憲法』に縋るつもりなのか、我々は…そもそも、百田尚樹さんじゃありませんが、いくら戦勝国とは言っても、アメリカには勝手に他国の憲法を弄る権利は無い筈で、これをやった場合、国際条約違反なんですよ!良い加減にしろと言いたいですよ!これじゃ、世界に対して恥ずかしい限りだ、全く…明らかに現行日本国憲法は欠陥憲法だ。そう考えたら、戦前の大日本帝国憲法の方がよっぽど立派な憲法に思えるのは、私だけでしょうか?おっと、すません、脱線してしまいましたね。

 この学説は、発表以降様々なところで大きな議論を巻き起こしました。学界のみならず、政界、財界、皇族、軍部、果ては一般庶民まで、実に広く多くの人々を巻き込んでの議論となったようです。ま、そうかもしれませんね。明治以降それまで、いわゆる『現人神』的存在であらせられた天皇陛下の事を憲法的には、『一機関』(役割)だと断言したわけですから…ところで、上記の中に、『国家法人説』というものがありますが、これは一体何なのでしょうか?

 

国家法人説とは…

国家を法人と見做し、その統治権は国家に帰するものとする考え方。19世紀にドイツの法学者ゲオルグ・イェリネック(ユダヤ系)によって説かれた。

 

で、調べてみたところ、この『国家法人説』の基礎となる思想が、前回ご紹介した、『国家有機体説』なのだそうです。そう、国家を人体に例えて説明した、あの思想ですね。大日本帝国憲法作成時、『日本の国体』説明の論理的後ろ盾となったドイツ発祥のいわゆる『国体思想』です。で、ですね、この美濃部達吉博士の天皇機関説なるものも、上記にあるように国家法人説に基づいているというのなら、そのベースとなる根本思想は、同時に国家有機体説になるという事なのです。という事は、これはまさに憲法上も日本の国体に合致しているという事になります。即ち、この学説は少なくとも帝国憲法上は『正しい』という事になると思います。また、当時の天皇であらせられた大正天皇も、摂政であり皇太子であらせられた後の昭和天皇も、実はこの学説を容認。支持なさっていたとの事なのです。ですが、残念な事に、この学説は最終的に取り下げられる羽目になり、学界からも教授禁止とされてしまいました。何故なんでしょうか?天皇陛下も認めておられるのにです…

天皇機関説反対派の急先鋒、上杉慎吉教授

 

 天皇機関説により、議会の役割が重視される事となった。しかしながら当時の政党政治は腐敗しており、汚職が絶えない状況でした。また、議会の統制を受けない勢力として、軍部が台頭して来ると、軍国主義が叫ばれ始め、彼等が中心となり天皇絶対視の思想が生まれ始めました。これは、機関説と対峙する思想でありました。また、海外に目を向けると、ドイツに於いて、ナチス党が政権を取ると、1933年にユダヤ人による著作の焚書が行われ、前出のイェリネックの国家法人説も焚書とされたようなのです。こうした様々な事が原因要因となり、天皇機関説は敵視されるような流れが作られてきた。そんな中で、同じく憲法学界に於いて、憲法学者の上杉慎吉教授が天皇機関説に対し、天皇主権説なるものを発表。美濃部達吉博士と真っ向から対峙しました。こうした中、世の中は分断され、一部軍部も加わり上杉慎吉率いる天皇主権説側が勢いを増す流れになって行きました。しまいには、『美濃部達吉博士は、陛下に対する不敬罪に当たるのではないか?』といった話まで出るようになり、とうとう重い腰を上げた時の内閣の岡田総理は、『天皇が統治権執行機関だという思想は、國體の間違った捉え方だ。』と断定し、公式に天皇機関説を排除し、大学での教授も禁止とされてしまいました。要するに論理的考えから生まれる天皇という御存在を捨て、天皇こそが『現人神』であらせられるのだ、というハッキリ言って何の根拠も無い思想に走ってしまったんだと思います。何でか?ハッキリ言ってそう言っていた方が『気持ち良い🎶』からです…国民としても、民族としてもね。私はこの背景には明らかに日清、日露での連勝、更には第一次世界大戦戦勝国となった我が国のいわゆる『奢り』のようなものがあったからだと思っています。折角、美濃部博士が論理的且つ、記紀の思想にも通ずる実に良い思想を打ち立てられたのに、誠に残念無念という他ありません。

 

 さて、こんな風に時代が移り変わって行く中、当のご本人様、昭和天皇はこうした動向をどのように見られていたのでしょうか?当時陛下が鈴木貫太郎侍従長にこう話されたそうです…

★昭和天皇陛下から、鈴木貫太郎侍従長への御言葉

『主権が君主にあるか、国家にあるかを論じるのなら判るけれども、機関説が良いとか悪いとかいう議論をする事は、何か無茶な話をしているように思えるね…(上杉教授の言う)天皇主権説は、私から言わせれば、それよりも寧ろ、国家主権の方が良いように思うがね…美濃部の事をあれこれ言っているようだが、美濃部は決して不忠なのでは無いと思うよ。だってそうだろう。今日、美濃部ほどの優秀な学者が一体何人居ると言うのかね。ああいう学者を葬ってしまう事は、全くもって惜しい事だ…』

 

 これは、私コーネリアスの推測、勝手な意見ですが、戦前から昭和天皇陛下は、御自分が神の如く扱われる事を疎ましく思われていた、嫌っておいでだったのではないかと考えます。上記のお話をみてもそれが垣間見られます。御自分を『現人神』化される事を心から嫌っておられたのではないでしょうか?なので、美濃部博士が唱える、天皇機関説を、記紀神話思想にも迎合でき、憲法上の日本の國體にも合致する説を支持なさっていたのではないでしょうか?そうした意味からすると、これは、歴史ユーチューバーの茂木誠先生も言明されてますが、昭和天皇陛下こそ、いわゆる『真の日本🇯🇵の保守主義者』と呼べるのではないかと私も思います。

若き日の昭和天皇陛下