こんにちわ。皆さんお元気ですか?コーネリアスです。今回は、何故かあまり学校の授業では深く取り扱われませんが、我が国の江戸時代の実情というものを当時の国際経済的観点から比較し再考してみたいと思います。そして、それを通し、江戸時代の我々の先人たちの事に思いを馳せてみたいと思います。

徳川幕府勘定方→現在の財務省→当時から相当優秀だったそうです。

 

 江戸時代については、以前も当blogで扱いました。その際は鎖国について取り上げましたね。学校の日本史の授業なんかでは、『日本は鎖国なんかしていたから、多くの面で世界に遅れたんだ…』みたいな教え方しているようなのですが、見方を変えて見るとそんな事ばかりでは無い。良い事も一杯あったというものでした。

特にこの点については、私コーネリアスも実際に証拠を挙げて説明しました。幕末日本を訪問したドイツ人の書いた本で、鎖国に関して高評価していたからです。この時、この日本訪問者から我が国の事情を聞いて改めて日本の鎖国及び当時の日本の内需経済事情にとても高い評価を与えていた人が、ドイツの哲学者フィヒテでした。当時の日本が幕末の頃、ヨーロッパではイギリスが産業革命に成功し大きく躍進していました。世界各地に自分たちの植民地を獲得し、そこから富を本国へ吸い上げていました。この頃のドイツは、ヨーロッパの中でもある種後進国でした。で、そんなドイツ国内で2つの考え方があったようです。一つがいわゆるグローバリズム、もう一つがナショナリズムでした。この時このグローバリズム思想の旗手だった人が、かの有名なエマニエル・カントです。彼はこう主張しました…『ヨーロッパの国同士は、互いに戦争なんて止めて平和を維持すべきだ。そして互いに貿易を推進すべきだ。活発な経済活動を行えば、双方お金が儲かりウインウインで丸く収まる。今後はそうやって経済を重視し、国境を超えて経済活動をドンドンやるべきだ!』…これに異を唱えたのが、同じく哲学者だったフィヒテでした。そして彼は、その際極東の日本を引き合いに出して論を展開しているのです。『…カントの言っている事はよく分かる。でも、本当にそれで良いのか?国の垣根を越えて自由に経済活動をする事は成る程聞こえは良いが、本当に大丈夫なのか?例えば今のイギリスとドイツでは、国の富の規模が大きく違う。イギリスには圧倒的な富がある、それに比べ残念ながら我がドイツは少ない。そもそも経済力に大きな隔たりがある。経済活動というのは、原則自由競争である。がしかし、こんな状況で自由に競争して我々に勝算はあるのだろうか?私にはそうは思えない。国同士の垣根を越え、自由に経済活動をするという事は、そこに必ず『勝者』と『敗者』が生まれるのではないか?カントの言う、『ウインウイン』というのはあくまで理想論であって、現実的では無いと思う。そしてこれが加速すれば、勝者は勝ち続け、敗者は負け続ける。結果そこに国単位での大きな格差が生じる恐れがある。これは聞いた話だが、極東に日本という国がある。この国は現在政府の方針でいわゆる鎖国をしている。一部の限られた国(清国&オランダ)とのみ貿易しているようだ。しかしながら此処を訪れた人の話によると、民の中には一人も貧困者が見当たらないとの事だ。貧乏人は沢山居るようだが、貧困者はゼロだと言う。我々のヨーロッパを見渡すがいい。彼方此方貧困者だらけではないか。今日のパンにも窮して居る者がどれだけ居る事か…日本の状況を見るに、先ず、内需経済が上手く回っているようだ。海外と取引していない為、お金は国内でのみ流通している訳で、即ち富が国外へ出て行っていない。つまり他国から経済的に搾取されていないと言う事だ。そして日本人たちは、上手に景気刺激を行い、内需経済を活性化させているとの話だった。そう、我々も今はこの国を見倣った方が良い。今ドイツがやるべき事は、カントの言う様な路線では無く、ドイツ経済の強化である。即ち、内需拡大強化。国内の企業を外国勢力から保護し、育成して国際競争力を付けさせ、そして、その結果ドイツ経済にある程度の力が付いてから他国との経済活動、貿易にシフトすべきである…』

 何と、江戸時代末期の日本経済の事を当時のドイツ人が評価していたのです。確かに鎖国したせいで色々遅れた部分はあった事でしょう。それは私も認めます。ですが、世の中何でもプラスもあればマイナスもあると思います。しかし学校では、このマイナスの面しか教えていない様に思います。私が受けて来た授業が実際そうでしたから…マイナス面はこれまで嫌と言うほど聞いて来たので、ここでプラス面を見てみましょう。

★鎖国のプラス面

①外国から植民地にされなかった→アジアの事例:フィリピン→スペインに植民地化された

②大きな感染症等が流行らなかった→人の移動が制限されていた為

③お金が海外へ流出しなかった→国の富が死守出来た

④③のお陰で、内需経済が潤った

⑤③④のお陰で、生活困窮者、貧困者が極めて少ない社会が実現出来た

⑥独自の江戸文化が発生、発展した

 ざっとみただけでも、これだけあると思います。どうでしょうか?これでも『鎖国は悪だった』と言い切れるのでしょうか?なので私は、良い事もあれば、悪い事もあるねと言いたいのです。そもそも人の世の事を全て善悪の様な二元論で片付けようとするところに私は疑問を感じますが、読者の皆さんは如何でしょうか?尚、上記で言う貧困者が極めて少なかった点については、私はお金の影響、経済の影響以外のものが大きく影響していたと思います。それは我々日本人が本来持つ相互扶助の精神、いわゆる助け合いの精神の賜物だと思います。そして有難い事にこれは今でも失われてはいません。東日本大震災の時の我々日本人の対応を見れば一目瞭然かと思います。

 さて、こんな我が国日本の状況ですが、経済的にその当時の他国と比較する事も実は現在可能になっています。歴史書や過去の資料を元にそれぞれの国の実質GDP推移を推計する『マディソン・プロジェクト』と呼ばれるものがそれです。で、この統計に従って1850年(嘉永3年)時点での実質GDP値の上位国を見てみると…

         一人当たりGDP値(1990年国際ドル)   『経済成長の日本史』名古屋大学出版会刊行より

第1位 イギリス🇬🇧       2997

第2位 オランダ🇳🇱                           2355

第3位 アメリカ🇺🇸                            ?(詳細データ不明。但し当時既に英蘭に匹敵するGDPではあった。)

第4位 ベルギー🇧🇪                          1847

第5位 イタリア🇮🇹                          1481

第6位 ドイツ🇩🇪                              1428

第7位 スペイン🇪🇸                          1079 

第8位 スウェーデン🇸🇪                  1076

第9位 ポルトガル🇵🇹                        923

第10位  日本🇯🇵                              904

 

 何と、日本はこの時点で世界の第10位なんです。そしてこれは凄い事で、産業革命を経験した欧米を除けば、アジア、中東、南米、アフリカ地域でトップだと言う事なんです。大国と言われる清国、インドを抜いてです。で、これが明治維新直後、僅か24年後の1874年(明治7年)になると、以下の様に変化します…

 

         一人当たりGDP値(1990年国際ドル)   『経済成長の日本史』名古屋大学出版会刊行より

第1位 イギリス🇬🇧                          4191

第2位 アメリカ🇺🇸             詳細データ不明(推測)

第3位 ベルギー🇧🇪                         2890

第4位 オランダ🇳🇱                         2721

第5位 ドイツ🇩🇪                             2124

第6位 イタリア🇮🇹                         1542

第7位 スウェーデン🇸🇪                  1487

第8位 スペイン🇪🇸                         1459

第9位  日本         1013

第10位 ポルトガル🇵🇹                     966

 

 日本は、ポルトガルを抜いて9位に躍進しています。ポルトガルも含め、いわゆる『欧米列強』と呼ばれる国々はこの時皆他国を侵略し、植民地なるものを所有していました。これに対し、日本は持っていません。純粋に日本列島のみでの実質GDPという事です。内容的にもこれ凄くないですか?よってこの時点で、既に我が国は経済的には立派な、いわゆる『先進国』であったと言って差し支えないでしょう。そしてこれを支えていたのが、凡そ250年続いていた江戸時代の経済力だったわけです。今日、この様にさまざまな証拠、論拠が明らかになっているわけですから、文科省も学校の歴史教科書の記述を見直して頂きたいものです。再度申し上げますが、歴史上の事柄には必ず『プラスとマイナス』、『良い点と悪い点』が出て来ると思われます。今回の鎖国も良い例ですが、他にも例えばモンゴル帝国のユーラシア大陸の席巻も、確かに他国への侵略ですからマイナスポイント、悪い点なのですが、見方を変えて経済的視点から見ると違った一面が浮かび上がって来るのです。モンゴル帝国(元王朝)は、世界で最初に紙幣(交鈔)を発行しています。これを後々ヨーロッパ諸国も模倣しました。また、広大な帝国内で貨幣の統一も実施しています。モンゴル帝国自身はそんな事考えてもいなかったと思いますが、これが後々『世界的貨幣経済』の発展に大きく寄与する事となりました。それまで貨幣支払いと物々交換を半々でやっていたような所でも、一気に貨幣決済が進展して行ったといった具合です。これは、経済的視座からは大きなプラスポイント、良い点になります。

 そもそも歴史という教科を学ぶ意義ですが、個人的見解を言わせて貰えば、それは、①過去の事実認識をし、現在の状況を把握する事、②過去の多くの事を通し、自国に愛国の念、誇りを持てるようにする事この2点に尽きると思います。でなければ、歴史など学ぶに値しないとさえ思っています。戦前まではこの点はしっかりとしていたように思います。それですから、例えば鎖国の教え方も、『江戸時代日本は鎖国を開始した。成る程、そのせいで海外との交流の場も減り、情報も入って来づらくなり、結果科学技術や政治システム等々で日本は欧米に遅れを取ってしまった部分も確かにあった。実際にこの間に欧米は産業革命なるものに成功していたからである。がしかし、鎖国した事によるメリットも沢山あった。内需経済の独自の発展、外来の感染症ゼロの実績、安全保障策の成功(日本植民地化防止)等々である。特に我々が胸を張って言える事は、江戸時代日本国は経済的には既に世界の『経済先進国』であったという事実である…現代に生きる我々日本人も今日、こうした過去の先輩たちの努力を誇りに思い、現在の日本をより豊かで、皆が安心して暮らせる良い国にするよう、努力精進、切磋琢磨して行こうではないか!』こう教えたら良いように思います。こう教えれば少なくとも生徒の側は、ヤル気と勇気と誇りを学べるように思いますが…