前回、


『イヌ科野生動物である〝オオカミ〟〝キツネ〟〝タヌキ〟などに外見がよく似ている犬種』


および


『全身の毛が短いまま伸びてこない〝スムース犬種〟』


は耳の中の毛が伸びてくることはないが、


『全身をはじめ、マズル(←鼻や口まわり)の毛が伸びる犬種』


は、耳の中にも毛が生えるとお伝えした


何故これらの犬種だけ耳の中の毛が伸びてくるようになったのだろうか?


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前回お伝えしたように、本来イヌは耳の中の毛は伸びない


スムース犬種や、ハスキー・スピッツなどの耳の中は、なんなら


〝見た目ツルッツル〟


である


なのにどうしてプードルやマルチーズ・シーズー・シュナウザー・ビションフリーゼなどの犬種は、耳の中の毛がボーボーになったのだろうか


それは実はとっても単純なこと


〝身体中の毛が長く伸びる〟


ように品種改変していくうちに


〝必要ない箇所の毛も長く伸びる〟


ようになってしまったのである


芸人風にツッコミを入れるなら


「そこ伸びてこんでええやん!」


って感じなのだ


当然、耳の穴の中がボーボーだと、耳の中に綿を詰めているような状態なので聞こえにくいだろうし、通気性が悪くなるので湿っぽくなって細菌繁殖しやすい状況になる


当サロン《Kelev》では、特にオーナー様からのご要望がなければ通常は耳毛を〝抜く〟ことで除去するが、オーナー様が希望される場合や、耳が悪かったり耳の中の皮膚が赤い子、耳毛抜きを極端に嫌がる子などはこちらからご提案して〝耳毛カット専用ハサミ〟を使って耳毛を〝切る〟ことで除去する場合もある


「毛を抜くなんて、痛いんじゃないの?」


とご心配の方もおられるかと思うが、私たちが鼻毛を抜いたり眉毛を抜いたりするのと同様で、しかもわんこの毛は人間の毛よりも細いので、たいていのわんこは痛がることはない


耳の中を触られたり、異物(←鉗子や綿花)が入る違和感に、無言で動かず耐えてくれている感じのわんこもいるけれど、抜かずに切る方法でもハサミを耳の中に入れなければならないし、異物が入るということに関してはどちらも同じである


人間が品種改変したことによりそういう身体に生まれてしまった以上、


『人間の手によるお手入れは必須』


であるため、それらの犬種のわんこたちには慣れてもらう必要がある


わんこたちに慣れてもらうためには、


〝経験を積んだトリマー〟


によって


〝適正な保定(※)〟で


〝速やかに施術する〟


ことが大切で、こういった〝技〟は


『小児科のお医者さんが赤ちゃんの気をそらしながら泣かすことなくパッと注射を打つ』


のとよく似ている


わんこの動き、わんこの心をしっかり読み取り、


『ちょっとだけイヤだけど、ちょっとガマンすれば褒めてもらえる』


と思ってもらえるように、私たちは日々わんこ達と向き合いながら〝技〟を磨いている



(※〝保定(ほてい)〟とは、施術の妨げにならないようわんこの動きを制する身体の支え方であり、長年の経験を要する技である)