○戦後の歌唱Ⅱ(中央公論社)



    長崎の鐘(作詞 サトウ・ハチロー 作曲 古関裕而)


 こよなく晴れた 青空を
 悲しと思う せつなさよ
 うねりの波の 人の世に
 はかなく生きる 野の花よ
 なぐさめ はげまし 長崎の
 ああ 長崎の鐘が鳴る


 召されて妻は 天国へ
 別れてひとり 旅立ちぬ
 かたみにのこる ロザリオの
 鎖に白き わが涙
 なぐさめ はげまし 長崎の
 ああ 長崎の鐘が鳴る


 つぶやく雨の ミサの声
 たたえる風の 神の歌
 かがやく胸の 十字架に
 ほほえむ海の 雲の色
 なぐさめ はげまし 長崎の
 ああ 長崎の鐘が鳴る


 こころの罪を うちあけて
 ふけゆく夜の 月すみぬ
 貧しき家の 柱にも
 気高く白き マリア様
 なぐさめ はげまし 長崎の
 ああ 長崎の鐘が鳴る



    白い花の咲く頃(作詞 寺尾智沙 作曲 田村しげる)


 白い花が咲いてた
 ふるさとの とおい夢の日
 さよなら といったら
 だまって うつむいてた お下げ髪
 かなしかった あの時の
 あの白い花だよ


 白い雲が浮いていた
 ふるさとの 高いあの峰
 さよなら といったら
 こだまが さよならと 呼んでいた
 さみしかった あの時の
 あの白い雲だよ


 白い月が泣いてた
 ふるさとの 丘の木立に
 さよなら といったら
 涙の 眸でじっと みつめてた
 かなしかった あの時の
 あの白い月だよ



    花の街(作詞 江間章子 作曲 団玖麿)


 七色の谷を越えて 流れていく
 風のリボン 輪になって
 輪になって かけていったよ
 春よ春よと かけていったよ


 美しい海を見たよ あふれていた
 花の街よ 輪になって
 輪になって 踊っていたよ
 春よ春よと 踊っていたよ


 すみれ色した窓で 泣いていたよ
 街のかどで 輪になって
 輪になって 春の夕暮れ
 ひとりさびしく 泣いていたよ



    さくら貝の歌(作詞 土屋花清 作曲 八洲秀章)


 うるわしき 桜貝ひとつ
 去りゆける 君に捧げん
 この貝は 去年の浜辺に
 われひとり 拾いし貝よ


 ほのぼのと うす紅染むるは
 わが燃ゆる さみし血潮よ
 はろばろと かようかおりは
 君恋うる 胸のさざなみ


 ああ なれどわが思いは儚く
 うつし世のなぎさに果てぬ



    原爆許すまじ(作詞 浅田石二 作曲 木下航二)


 ふるさとの街やかれ
 身よりの骨うめし焼土に
 今は白い花咲く
 ああ許すまじ原爆を
 三度許すまじ原爆を
 われらの街に


 ふるさとの海荒れて
 黒き雨喜びの日はなく
 今は船に人もなし
 ああ許すまじ原爆を
 三度許すまじ原爆を
 われらの海に


 ふるさとの空重く
 黒き雲今日も大地おおい
 今は空に陽もささず
 ああ許すまじ原爆を
 三度許すまじ原爆を
 われらの空に


 はらからの絶え間なき
 労働に築きあぐ富と幸
 今はすべてついえ去らん
 ああ許すまじ原爆を
 三度許すまじ原爆を
 世界のうえに


    母さんの歌(作詞・作曲 窪田聡)


 母さんが夜なべをして
 手袋あんでくれた
 木枯らし吹いちゃ 冷たかろうと
 せっせと編んだだよ
 故郷の便りはとどく
 囲炉裏のにおいがした


 母さんが麻糸つむぐ
 一日つむぐ
 お父は土間でわら打ち仕事
 お前もがんばれよ
 故郷の冬はさびしい
 せめてラジオ聞かせたい


 母さんのあかぎれ痛い
 生味噌をすりこむ
 根雪もとけりゃ もうすぐ春だで
 畠が待ってるよ
 小川のせせらぎが聞える
 懐かしさがしみとおる



    手のひらを太陽に(作詞 やなせ・たかし 作曲 いずみ・たく)


 ぼくらはみんな生きている
 生きているから うたうんだ
 ぼくらはみんな生きている
 生きているから 悲しいんだ
 手のひらを太陽に すかしてみれば
 まっかに流れる ぼくの血潮
 みみずだって おけらだって あめんぼだって
 みんなみんな 生きているんだ
 ともだちなんだ


 ぼくらはみんな生きている
 生きているから わらうんだ
 ぼくらはみんな生きている
 生きているから うれしいんだ
 手のひらを太陽に すかしてみれば
 まっかに流れる ぼくの血潮
 とんぼだって かえるだって みつばちだって
 みんなみんな 生きているんだ
 ともだちなんだ



    夜明けの冬(作詞 岩谷時子 作曲 いずみ・たく)


 夜明けのうたよ
 わたしの心の きのうの悲しみ
 夜明けのうたよ
 わたしの心に 若い力を
 みたしておくれ


 夜明けのうたよ
 わたしの心の あふれる想いを
 わかっておくれ
 夜明けのうたよ
 わたしの心に 大きな望みを
 抱かせておくれ


 夜明けのうたよ
 わたしの心の 小さな僥せ
 守っておくれ
 夜明けのうたよ
 わたしの心に 思いださせて
 ふるさとのこと



    おもちゃのチャチャチャ(作詞 野坂昭如 作曲 越部信義)


 おもちゃのチャチャチャ 
 おもちゃのチャチャチャ
 チャチャチャ おもちゃのチャチャチャ


 空にキラキラ お星様
 みんなすやすや 眠るころ
 おもちゃは箱を とびだして
 おどるおもちゃの チャチャチャ


 きょうはおもちゃの お祭りだ
 みんな楽しく うたいましょう
 子羊メーメー 子猫はニャー
 子豚ブースカ チャチャチャ


 空にさよなら お星さま
 窓にお日さま こんにちは
 おもちゃは帰る おもちゃ箱
 そして眠るよ チャチャチャ


 おもちゃのチャチャチャ  
 おもちゃのチャチャチャ
 チャチャチャ おもちゃのチャチャチャ



    ばらが咲いた(作詞・作曲 浜口庫之助)


 ばらが咲いた ばらが咲いた
 真赤なばらが
 さびしかった ぼくの庭に
 ばらが咲いた
 たったひとつ 咲いたばら
 小さなばらが
 さびしかった ぼくの庭が
 あかるくなった
 ばらよばらよ 小さなばら
 そのままで そこに咲いておくれ
 ばらが咲いた ばらが咲いた
 真赤なばらが
 さびしかった ぼくの庭に
 ばらが咲いた


 ばらが散った ばらが散った
 いつのまにか
 ぼくの庭は まえのように
 さびしくなった
 ぼくの庭の ばらは散って
 しまったけれど
 さびしかった ぼくの心に
 ばらが咲いた
 ばらよばらよ 心のばら
 いつまでも ここで咲いてておくれ
 ばらが咲いた ばらが咲いた
 ぼくの心に
 いつまでも 散らない
 真赤なばらが

○お別れの挨拶


 役目を終えたら、アメーバから去ります。ご訪問ありがとうございました。たまに「記事の追加」をするかもしれませんが。

○唱歌・文部省唱歌など(中央公論社)



    蛍の光(小学唱歌)


 ほたるのひかり まどのゆき

 書よむつき日 かさねつつ

 いつしか年も すぎのとを

 あけてぞ けさは わかれゆく


 とまるもゆくも かぎりとて

 かたみにおもう ちよろずの

 こころのはしを ひとことに

 さきくとばかり うたうなり


 つくしのきわみ みちのおく

 うみやま とおく へだつとも

 そのまごころは へだてなく

 ひとつにつくせ くにのため


 千島のおくも おきなわも

 やしまのうちの まもりなり

 いたらんくにに いさおしく

 つとめよ わがせ つつがなく



    蝶々(作詞 野村秋足 スペイン民謡)


 ちょうちょう ちょうちょう

 菜の花にとまれ

 なのはにあいたら 桜にとまれ

 さくらの花の さかゆる御代に

 とまれよ あそべ あそべよ とまれ



    あおげば尊し(小学唱歌)


 あおげば とうとし わが師の恩

 教えの庭にも はや いくとせ

 おもえば いと疾し このとし月

 今こそ 別れて いざさらば


 互いにむつみし 日ごろの恩

 わかるる後にも やよ わするな

 身をたて 名をあげ やよ はげめよ

 今こそ わかれめ いざさらば


 朝ゆう なれしに まなびの窓

 ほたるのともし火 つむ白雪

 わするる まぞなき ゆくとし月

 今こそ わかれめ いざさらば



    うさぎとかめ(作詞 石原和三郎 作曲 納所弁次郎)


 「もしもし かめよ かめさんよ

 せかいのうちに おまえほど

 あゆみの のろい ものはない

 どうして そんなに のろいのか」


 「なんと おっしゃる うさぎさん

 そんなら おまえと かけくらべ

 むこうの小山の ふもとまで

 どちらが さきに かけつくか」


 「どんなに かめが いそいでも

 どうせ ばんまで かかるだろ

 ここらでちょっと一ねむり

 グーグーグーグー グーグーグー


 「これはねすぎた しくじった」

 ピョンピョンピョンピョン ピョンピョンピョンピョン

 「あんまりおそい うさぎさん

 さっきのじまんは どうしたの」



    きよしこのよる(賛美歌)


 きよしこのよる ほしはひかり

 すくいの御子は みははのむねに

 ねむりたもう ゆめやすく


 きよしこのよる みつげばうけし

 ひつじかいらは 御子のみまえに

 ぬかずきぬ かしこみて


 きよしこのよる 御子の笑みに

 めぐみの御代の あしたのひかり

 かがやけり ほがらかに



    春が来た(作詞 高野辰之 作曲 岡野貞一)


 春がきた 春がきた どこにきた

 山にきた 里にきた

 野にもきた


 花がさく 花がさく 里にさく

 山にさく 里にさく

 野にもさく


 鳥がなく 鳥がなく どこでなく

 山でなく 里でなく

 野でもなく



    ふじの山(文部省唱歌)


 あたまを雲の上に出し

 四方の山を見おろして

 かみなりさまを下にきく

 ふじは日本一の山


 青ぞら高くそびえたち

 からだに雪のきものきて

 かすみのすそをとおくひく

 ふじは日本一の山



    虫のこえ(文部省唱歌)


 あれ松虫が鳴いている

 チンチロチンチロ チンチロリン

 あれ松虫も鳴き出した

 秋の夜長を鳴き通す

 ああおもしろい虫のこえ


 キリキリキリキリ きりぎりす

 ガチャガチャガチャガチャ くつわ虫

 あとから馬おい おいついて

 チョンチョンチョンチョン スイッチョン

 秋の夜長を鳴き通す

 ああおもしろい虫のこえ



    われは海の子(文部省唱歌)


 われは海の子白波の

 さわぐいそべの松原に

 煙たなびくとまやこそ

 我がなつかしき住家なれ


 生れてしおに浴して

 浪を子守の歌と聞き

 千里寄せくる海の気を

 吸いてわらべとなりにけり


 高く鼻つくいその香に

 不断の花のかおりあり

 なぎさの松に吹く風を

 いみじく楽と我は聞く


 丈余のろかい操りて

 行手を定めぬ浪まくら

 百尋千尋海の底

 遊びなれたる庭広し


 幾年ここにきたえたる

 鉄より堅きかいなあり

 吹く潮風に黒みたる

 はだは赤銅さながらに


 浪にただよう氷山も

 来らば来れ恐れんや

 海まき上ぐるたつまきを

 起らば起れ驚かじ


 いで大船を乗り出して

 我は拾わん海の富

 いで軍艦に乗り組みて

 我は渡らん海の国



    かたつむり(文部省唱歌)


 でんでん虫々 かたつむり

 お前の頭は どこにある

 角だせ槍だせ あたまだせ


 でんでん虫々 かたつむり

 お前のめだまは どこにある

 角だせ槍だせ めだま出せ



    桃太郎(文部省唱歌)


 桃太郎さん桃太郎さん

 お腰につけた黍団子

 一つわたしに下さいな


 やりましょうやりましょう

 これから鬼の征伐に

 ついて行くならやりましょう


 行きましょう行きましょう

 あなたについて何処までも

 家来になって行きましょう


 そりゃそりゃ進め

 一度に攻めて攻めやぶり

 つぶしてしまえ鬼が島


 おもしろいおもしろい

 のこらず鬼を攻めふせて

 分捕物をえんやらや


 万々歳 万々歳

 お伴の犬や猿雉子は

 勇んで車をえんやらや




    浦島太郎(文部省唱歌)


 昔々浦島は

 助けた亀に連れられて

 竜宮城へ来て見れば

 絵にもかけない美しさ


 乙姫様の御馳走

 鯛や比目魚の舞躍

 ただ珍しく面白く

 月日のたつのも夢の中


 遊びにあきて気がついて

 お暇乞もそこそこに

 帰る途中の楽しみは

 土産に貰った玉手箱


 帰ってみればこは如何に

 元居た家も村も無く

 路に行きあう人々は

 顔も知らない者ばかり


 心細さに蓋とれば

 あけて悔しき玉手箱

 中からぱっと白烟

 たちまち太郎はお爺さん



    紅葉(文部省唱歌)


 秋の夕日に照る山紅葉

 濃いも薄いも数ある中に

 松をいろどる楓や蔦は

 山のふもとの裾模様


 渓の流れに散り浮く紅葉

 枝にゆられて離れて寄って

 赤や黄色の色様々に

 水の上にも織る錦



    雪(文部省唱歌)


 雪やこんこ霰やこんこ

 降っては降ってはずんずん積る

 山も野原も綿帽子かぶり

 枯木残らず花が咲く


 雪やこんこ霰やこんこ

 降っても降ってもまだ降りやまぬ

 犬は喜び庭駈けまわり

 猫は火燵で丸くなる



    茶摘(文部省唱歌)


 夏も近づく八十八夜

 野にも山にも若菜が茂る

 「あれに見えるは茶摘みじゃないか

 あかねだすきに管の笠」


 日和つづきの今日此頃を

 心のどかに摘みつつ歌う

 「摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ

 摘まにゃ日本の茶にならぬ」



    村祭(文部省唱歌)


 村の鎮守の神様の

 今日はめでたい御祭日

 どんどんひゃらら どんひゃらら

 どんどんひゃらら どんひゃらら

 朝から聞える笛太鼓


 今年も豊年満作で

 村は総出の大祭

 どんどんひゃらら どんひゃらら

 どんどんひゃらら どんひゃらら

 夜まで賑わう宮の森


 治まる御代に神様の

 めぐみや仰ぐ村祭

 どんどんひゃらら どんひゃらら

 どんどんひゃらら どんひゃらら

 聞いても心が勇み立つ



    朧月夜(文部省唱歌 作曲 岡野貞一)


 菜の花畠に 入日薄れ

 見わたす山の端 霞ふかし

 春風そよふく 空を見れば

 夕日にかかりて におい淡し


 里の火影も 森の色も

 山の小路を たどる人も

 蛙のなくねも かねの音も

 さながら霞める 朧月夜



    故郷(文部省唱歌 作曲 岡野貞一)



 兎追いしかの山

 小鮒釣りしかの川

 夢は今もめぐりて

 忘れがたき故郷


 如何にいます父母

 恙なしや友がき

 雨や風につけても

 思いいずる故郷


 こころざしをはたして

 いつの日にか帰らん

 山はあおき故郷

 水は清き故郷



※ここで取り上げた歌は全て「明治時代から大正時代初期」に作られた。今の日本では「最後まで歌わない歌」が多いことがわかる。

○明治後半から昭和初期の歌唱(中央公論社)



    お正月(作詞 東くめ 作曲 瀧廉太郎)


 もういくつねると お正月

 お正月には まりついて

 おいばねついて 遊びましょう

 はやく来い来い お正月


    荒城の月(作詞 土井晩翠 作曲 瀧廉太郎)


 春高楼の花の宴
 めぐる盃かげさして
 千代の松が枝わけいでし
 むかしの光いまいずこ


 秋陣営の霜の色
 鳴きゆく雁の数見せて
 植うるつるぎに照りそいし
 むかしの光いまいずこ


 いま荒城の夜半の月
 替らぬ光たがためぞ
 垣に残るはただかつら
 松に歌うはただあらし


 天上影は替らねど
 栄枯は移る世の姿
 写さんとてか今もなお
 嗚呼荒城のよわの月



    花(作詞 武島羽衣 作曲 瀧廉太郎)


 春のうららの隅田川
 のぼりくだりの船人が
 櫂のしずくも花と散る
 ながめを何にたとうべき


 見ずやあけぼの露浴びて
 われにもの言う桜木を
 見ずや夕ぐれ手をのべて
 われさしまねく青柳を


 錦おりなす長堤に
 くれるばのぼるおぼろ月
 げに一刻も千金の
 ながめを何にたとうべき



    箱根八里(作詞 鳥居枕 作曲 瀧廉太郎)


    第一章 昔の箱根


 箱根の山は 天下の険 函谷関も物ならず
 万丈の山 千仞の谷 前に聳え 後に支う
 雲は山をめぐり
 霧は谷をとざす
 昼猶暗き杉の並木 羊腸の小径は苔滑か
 一夫関に当たるや万夫も開くなし
 天下に旅する剛毅の武士
 大刀腰に足駄げ 八里の岩ね踏み鳴らす
 斯くことありしか往時の武士


    第二章 今の箱根

 

 箱根の山は 天下の阻 蜀の桟道数ならず 
 万丈の山 千仞の谷 前に聳え 後に支う
 雲は山をめぐり
 霧は谷をとざす
 昼猶暗き杉の並木 羊腸の小径は苔滑か
 一夫関に当たるや万夫も開くなし
 山野に狩する剛毅の壮士
 猟銃肩に草鞋がけ 八里の岩ね踏み破る
 斯くこそありけれ近時の壮士



    青葉の笛(作詞 大和田建樹 作曲 田村虎蔵)


 一の谷の 軍破れ

 討たれし平家の 公達あはれ

 暁寒き 須磨の嵐に

 聞こえしはこれか 青葉の笛


 更くる夜半に 門を敲き

 わが師に託せし 言の葉あわれ

 今わの際まで 持ちし箙に

 残れるは「花や 今宵」の歌



    早春賦(作詞 吉丸一昌 作曲 中田章)


 春は名のみの風の寒さや

 谷の鶯 歌は思えど

 時にあらずと 声も立てず

 時にあらずと 声も立てず


 水解け去り葦は角ぐむ

 さては時ぞと 思うあやにく

 今日もきのうも 雪の空

 今日もきのうも 雪の空


 春と聞かねば知らでありしを

 聞けば急かるる 胸の思いを

 いかにせよとの この頃か

 いかにせよとの この頃か



    ゴンドラの唄(作詞 吉井勇 作曲 中山晋平)


 いのち短し恋せよ乙女

 朱き唇あせぬ間に

 熱き血潮の冷えぬ間に

 明日の月日はないものを


 いのち短し恋せよ乙女

 いざ手を取りてかの舟に

 いざ燃ゆる頬を君が頬に

 ここには誰も来ぬものを


 いのち短し恋せよ乙女

 波に漂う舟のように

 君が柔手をわが肩に

 ここには人目のないものを


 いのち短し恋せよ乙女

 黒髪のいろ褪せぬ間に

 心のほのお消えぬ間に

 今日は再び来ぬものを



    浜辺の歌(作詞 林古渓 作曲 成田為三)


 あした浜辺を さまよえば

 昔のことぞ しのばるる

 風の音よ 雲のさまよ

 よする波も かいの色も


 ゆうべ浜辺を もとおれば

 昔の人ぞ 忍ばるる

 寄する波よ かえす波よ

 月の色も 星のかげも



    かなりや(作詞 西条八十 作曲 成田為三)


 唄を忘れた金糸雀は 後の山に棄てましょか

 いえ いえ それはなりませぬ


 唄を忘れた金糸雀は 背戸の小藪に埋けましょか

 いえ いえ それはなりませぬ


 唄を忘れた金糸雀は 柳の鞭でぶちましょうか

 いえ いえ それはかわいそう


 唄を忘れた金糸雀は

 象牙の船に 銀の櫂

 月夜の海に浮べれば

 忘れた唄をおもいだす



    てるてる坊主(作詞 浅原鏡村 作曲 中山晋平)


 てるてる坊主 てる坊主

 あした天気に しておくれ

 いつか夢の 空のよに

 晴れたら 金の鈴あげよ


 てるてる坊主 てる坊主

 あした天気に しておくれ

 私の願いを 聞いたなら

 あまいお酒を たんと飲ましょ


 てるてる坊主 てる坊主

 あした天気に しておくれ

 それでも雲って 泣いてたら

 そなたの首を チョンと切るぞ



    赤蜻蛉(作詞 三木露風 作詞 山田耕筰)


 夕やけ小やけの あかとんぼ

 負われて見たのは いつの日か


 山の畑の 桑の実を

 小籠に摘んだは まぼろしか


 十五でねえやは 嫁に行き

 お里のたよりも 絶えはてた


 夕やけ小やけの 赤とんぼ

 とまっているよ 竿の先



    どんぐりころころ(作詞 青木存義 作曲 栗田貞)


 どんぐりころころ どんぶりこ

 お池にはまって さあ大変

 どじょうが出てきて 今日は

 坊ちゃん一緒に 遊びましょ


 どんぐりころころ よろこんで

 しばらく一緒に 遊んだが

 やっぱりお山が恋しいと

 泣いてはどじょうを 困らせた



    雀の学校(作詞 清水かつら 作曲 弘田龍太郎)


 ちいちいぱっぱ ちいぱっぱ

 雀の学校の 先生は

 むちを振り振り ちいぱっぱ


 生徒の雀は 輪になって

 お口をそろえて ちいぱっぱ

 まだまだいけない ちいぱっぱ

 も一度一緒に ちいぱっぱ

 ちいちいぱっぱ ちいぱっぱ



    月の砂漠(加藤まさを 佐々木すぐる)


 月の砂漠をはるばると

 旅の駱駝がゆきました


 金と銀との鞍置いて

 二つならんでゆきました


 金の鞍には銀の甕

 銀の鞍には金の甕


 二つの甕はそれぞれに

 紐で結んでありました


 さきの鞍には王子様

 あとの鞍にはお姫様


 乗った二人はおそろいの

 白い上着を着てました


 曠い砂漠をひとすじに

 二人はどこへゆくのでしょう


 朧にけぶる月の夜を

 対の駱駝はとぼとぼと


 沙丘を越えて行きました

 黙って越えて行きました



    肩たたき(作詞 西条八十 作曲 中山晋平)


 母さん お肩をたたきましょう

 タントン タントン タントントン


 母さん 白髪がありますね

 タントン タントン タントントン


 お縁側には日がいっぱい

 タントン タントン タントントン


 真赤な罌粟が笑ってる

 タントン タントン タントントン


 母さん そんなにいい気持ち

 タントン タントン タントントン



    ゆうやけこやけ(作詞 中村雨紅 作曲 草村信)


 ゆうやけこやけで 日が暮れて

 山のお寺の 鐘が鳴る

 お手々つないで 皆帰ろ

 烏と一緒に 帰りましょ


 子供が帰った 後からは

 円い大きな お月さま

 小鳥が夢を 見るころは

 空にはきらきら 金の星



    春よ来い(作詞 相馬御風 作曲 弘田龍太郎)


 春よ来い 早く来い

 あるきはじめた みいちゃんが

 赤い鼻緒の じょじょはいて

 おんもへ出たいと 待っている


 春よ来い 早く来い

 おうちのまえの 桃の木の

 蕾もみんな ふくらんで

 はよ咲きたいと 待っている



    酒は涙か溜息か(作詞 高橋掬太郎 作曲 古賀政男)


 酒は涙か

 ためいきか

 こころの憂さの

 捨てどころ


 遠いえにしの

 かのひとに

 夜ごとの夢の

 せつなさよ


 酒は涙か

 ためいきか

 悲しい恋の

 捨てどころ


 忘れたはずの

 かのひとに

 のこるこころを

 なんとしょう



    こいのぼり(作詞・作曲不明)


 やね より たかい こいのぼり

 おおきい まごい は おとうさん

 ちいさい ひごい は こどもたち

 おもしろそう に およいでる



    チューリップ(作詞 武内俊子 作曲 井上武士)


 さいた さいた

 チューリップ の

 はな が

 ならんだ ならんだ

 あか しろ きいろ

 どの はな みて も

 きれい だ な



    椰子の実(作詞 島崎藤村 作曲 大中寅二 編曲 矢沢保)


 名も知らぬ遠き島より

 流れ寄る椰子の実一つ


 故郷の岸を離れて

 汝はそも波に幾月


 旧の樹は生いや茂れる

 枝はなお影をやなせる


 われもまた渚に枕

 孤身の浮寝の旅ぞ


 実をとりて胸にあつれば

 新なり流離の憂


 海の日の沈むを見れば

 激り落つ異郷の涙


 思いやる八重の潮々

 いずれの日にか国に帰らん



    一杯のコーヒーから(作詞 藤浦洸 作曲 服部良一)


 一杯のコーヒーから 夢の花咲くこともある

 街のテラスの 夕暮れに

 二人の胸の灯が

 ちらりほらりと つきました


 一杯のコーヒーから 夢はほのかにかおります

 赤い模様の アラベスク

 あそこの窓の カーテンが

 ゆらりゆらりと ゆれてます


 一杯のコーヒーから 小鳥囀る春もくる

 今宵ふたりの ほろにがさ

 角砂糖ふたつ 入れましょか

 月の出ぬまに 消えぬまに



    誰か故郷を想わざる(作詞 西条八十 作曲 古賀政男)


 花摘む野辺に 日は落ちて

 みんなで肩を 組みながら

 唄をうたった かえりみち

 ああ 誰か故郷を想わざる


 一人の姉が 嫁ぐ夜に

 小川の岸で 淋しさに

 泣いた涙の 懐かしさ

 幼馴染みの あの山 あの川

 ああ 誰か故郷を想わざる


 都に雨の降る夜は

 涙に胸も しめりがち

 遠く呼ぶのは 誰の声

 幼馴染の あの夢 この夢

 ああ 誰か故郷を想わざる


○戦後の歌唱(中田喜直 作曲 中央公論社)



    めだかの学校(作詞 茶木茂 作曲 中田喜直)


 めだかの学校は 川のなか
 そっとのぞいて みてごらん
 そっとのぞいて みてごらん
 みんなでおゆうぎ しているよ


 めだかの学校の めだかたち
 だれが生徒か 先生か
 だれが生徒か 先生か
 みんなでげんきに あそんでる


 めだかの学校は うれしそう
 水にながれて つーいつい
 水にながれて つーいつい
 みんながそろって つーいつい 



    べこの子うしの子(作詞 サトウ・ハチロー 作曲 中田喜直)


 べこの子うしの子 まだらの子
 かあさんうしに よくにた子
 おおきくなったら おもちを出して
 ふもとのまちの あかちゃんそだて
 もうもう なかずに なかずにおあそびね


 べこの子うしの子 あかげの子
 とうさんうしに よくにた子
 おおきくなったら とんぼをよんで
 ふたつのつのの あさつゆすわせ
 もうもう おなかは おなかはいっぱいかい


 べこの子うしの子 すぐねる子
 おばさんうしに よくにた子
 おおきくなったら ちょうちょをよんで
 みっつよっついつつ せなかにのせて
 もうもう おひるのじかんだよ



    夏の思い出(作詞 江間章子 作曲 中田喜直)


 夏がくれば 思いだす
 はるかな尾瀬 遠い空
 霧のなかに うかびくる
 やさしい影 野の小径
 水芭蕉の花が 咲いている
 夢みて咲いている 水の辺り
 石楠花色に たそがれる
 はるかな尾瀬 遠い空


 夏がくれば 思いだす
 はるかな尾瀬 野の旅よ
 花のなかに そよそよと
 ゆれゆれる 浮島よ
 水芭蕉の花が におっている
 夢みてにおっている 水の辺り
 まなこつぶれば 懐かしい
 はるかな尾瀬 遠い空 



    雪の降るまちを(作詞 内村直也 作曲 中田喜直)


 雪の降るまちを 雪の降るまちを
 思い出だけが通りすぎてゆく
 雪の降る町を 遠い国から落ちてくる
 この思い出を この思い出を
 いつの日かつつまん
 あたたかき幸福のほほえみ


 雪の降るまちを 雪の降るまちを
 あしおとだけが追いかけてゆく
 雪の降るまちを 独り心にみちてくる
 この哀しみを この哀しみを
 いつの日かほぐさん
 みどりなす春の日のそよかぜ


 雪の降るまちを 雪の降るまちを
 息吹とともにこみあげてくる
 雪の降るまちを 誰も分からぬわが心
 このむなしさを このむなしさを
 いつの日か祈らん
 あたらしき光ふる鐘の音  



    ちいさい秋見つけた(作詞 サトウ・ハチロー 作曲 中田喜直)


 だれかさんが だれかさんが
 だれかさんが みつけた
 ちいさい秋 ちいさい秋
 ちいさい秋 みつけた
 めかくしおにさん 手のなるほうへ
 すましたお耳に かすかにしみた
 よんでる口笛 もずの声
 ちいさい秋 ちいさい秋
 ちいさい秋 みつけた
 
 だれかさんが だれかさんが
 だれかさんが みつけた
 ちいさい秋 ちいさい秋
 ちいさい秋 みつけた
 おへやは北向き くもりのガラス
 うつろな日の色 とかしたミルク
 わずかなすきから 秋の風
 ちいさい秋 ちいさい秋
 ちいさい秋 みつけた

○おかあさんのばか(作詞 古田幸 作曲 中田喜直・磯部俶)



1.ちかいのことば(開始の音楽 作曲は中田喜直)


 おかあさんへ。
 幸は、おかあさんが死んでも、
 正しいいい人になって、おとうさんを助けてあげます。
 いつもわたしやおにいちゃんの事をはげましてくれたおかあさん、
 いい神様に会ってください。
 そしていつまでも私を天から見ていてください。
 わたしの事は、豊子おばちゃんが見てくれるそうです。
 おばあちゃんやおじいちゃんは、
 私やお兄ちゃんのことを考えると、
 かわいそうでむねがいっぱいになってなみだが出てくるそうです。
 私は、おかあさんと三つの約束をします。
 一つは、どんなことがあってもくじけたりしません。
 それから、なんでも最後までやって、やり始めたらやりとげます。
 だれにも迷わくをかけないで、
 親せきのおじさんやおばさんにいろいろこれからの事を教えていただきます。
 おかあさん、私はりっぱないい人になりますから、
 おかあさんは私を見ていてください。
 やさしくて理かいのあるおかあさん、わたしのそばにずっといてください。
 それから、おかあさんから特に注意されていたことばづかいを、
 いいことばづかいにします。
 どうか、神様、おかあさんをいい天国に連れていってください。
 いつまでも幸せにくらせますように。


   神様    幸



2.語りの音楽(作曲は磯部俶)


 私のおかあさんは、一カ月前に、
 のう出血という、おそろしい病気で死んだ。
 このごろ、おかあさんの夢ばかりみる。
 さいだんの前にすわって、
 にらみつけたりする。
 友だちのおばさんにあうと、
 おかあさんていいなと、
 急に思い出してしまう。
 おかあさんは病院で目をあけた時もあった。
 その時、おかあさんはなみだを出してないていた。



3.じんちょうげ(作曲は磯部俶)


 げんかんの戸をあけたら
 プーンといいにおい
 あっ じんちょうげだ
 いつのまにさいたの
 おかあさんが死んでから
 うら口ばかり
 出はいりしていたので
 少しも気がつかなかった
 おかあさん
 おかあさんのすきな
 じんちょうげがさいたよ
 私はげんかんの戸を
 いっぱいあけた



4.すきやき(作曲は中田喜直)


 私の一番とくいな料理は
 すきやき
 かんたんで
 うち中 みんなすき
 一週間に一度はする
 白いヘッドで
 なべをジャージャーやいて
 ねぎに しらたきに やきどうふ
 牛肉の色が
 うす土色に変わったとき
 私は つまみぐいをする
 とってもおいしい
 私はこのときの味がすき



5.おかあさんのばか(作曲は磯部俶)


「お父さんの語り」


 「おかあさんのばか」。 
 今まで、子どもの口からこんな言葉を一度も聞いたことのない私は、
 みゆきのこのふんまんやるかたのない母を思う叫びを聞いてしばらくは、
 何もいえなかった。
 子どもたちのとって母親くらい大事な存在はない。
 母なきあと、父の私がどんなにつくしても、
 子どもたちはおそらく、これから何度か、
 おかあさんのばかを発する時があろう。
 私は、それを思うと、いたたまらなくなり、
 強く生きてやらねばと思う。


 おかあさん
 のう出血で死んじゃって
 ばか
 おいにいちゃんは スキーに
 おとうさんは 学校に
 いっちゃった
 みゆきはひとりぼっち
 おかあさんのすきな
 おもちがとどいたのよ
 おかあさんは
 おもちをきるのが
 とってもじょうずだった
 おかあさんのばか



6.おにいちゃんの成績(作曲は磯部俶)


 おにいちゃんの父兄会に
 おとうさんが出た
 おにいちゃんは
 午前中で帰ってきたが
 なんだか 落ちつかない
 やっぱり
 あまり成績が よくなかった
 よるおそくまで
 勉強していたのに
 かわいそうだなあ
 おにいちゃんは
 こんどこそがんばるぞ とは
 いっているけれど



7.白いカーネーションはいや(作曲は中田喜直)


 きょうは母の日
 きょねんの母の日には
 お料理の上手な
 おかあさんに
 エプロンと
 赤いカーネーションをあげた
 おかあさんが死んじゃった ことしは
 白いカーネーションが
 ほんとうだけど
 わたしはいやよ
 白いカーネーションは
 みるのみいや
 赤いカーネーションを三本と
 一番さきにさいた
 庭の赤いばらの花を一つ
 私は さいだんに
 そなえた
 

8.バイオリン(作曲は中田喜直)


 初めてのバイオリンだった
 私は
 あまり練習していかなかった
 だから
 せんがあがったり さがったりして
 こまってしまったの
 キーキー
 とてもいやな音
 なれてきたら
 ギーギーと
 うまくいった
 よかったな



9.雨のふる日(作曲は中田喜直)


 雨の降る日
 大きらい。
 おかあさんが 入院してたとき
 雨の日に
 ようだいが へんになった。
 その時
 おとうさんは
 こどもみたいに
 声を出して 泣いたって
 水天宮さまの
 ばちがあたったんじゃないかと
 おとうさんは いってたそうだ。


 雨のふる日に
 学校から帰ってくると
 シーンとしていて
 こわいみたい。
 おとうさんが また
 思い出して泣いているんじゃ
 ないかと
 思うと よけいかなしくなる。


「お父さんの語り」


 子どもでなくても雨のふる日はいやなものだ。
 うちでは、洋が生まれる時も、
 幸が生まれる時も雨がふっていた。
 妻が倒れたのも、水。
 妻と私が見合いした所は海。
 結婚式には雪がふった。
 迷信めいたことになるが、
 なんだか雨の日がおそろしくなる。
 子どもたちも雨の日は、
 だまりこくって妻の霊にあかりをつけたりする。
 雨の日また楽しからずやなどいう雰囲気は、
 当分生まれそうにもない。



10.知能テスト(作曲は磯部俶)


 ニ、三時間目
 知能テスト
 私はいっしょうけんめいにやった
 でもやっぱりできないところが
 十以上あった
 みんなかんたんなものばかりなのに
 問題が なかなか早く読めない
 おわってから 頭のよい人にきくと
 「できたわ あんなのかんたんよ」と
 私の顔をみた
 くやしい
 その人の顔が おにのようにみえた



11.七夕(作曲は中田喜直)


 こんやは たなばた
 また 雨空。
 たなばたって
 どうしていつも晴れないのかしら。
 夢でもいいから
 おかあさんにあいたいと思って
 となりのせっちゃんの
 ささに
 「おかあさん」とかいて
 たんざくをさげた。



12.シーツ(作曲は磯部俶)


 よごれていた
 うちじゅうのシーツを
 ぜんぶあらった
 早めにふとんをしいて
 みんなのシーツをかけた
 太陽のにおいが
 へやじゅう ぷんぷんした
 はだかで
 その上に ゆうゆうと
 ねそべったら
 とってもきもちがよかった



13.おくり火(作曲は磯部俶)


 夕食のあと
 げんかんで
 おくり火のよういをした
 おむかえ火のとき
 おじいちゃんが
 おがらの火をみてないていた
 おくり火は
 私たち五人でやった
 おにいちゃんも 私も
 だまったまま
 おさらの上の火をみて
 なきそうになった
 おとうさんは
 なかなか
 うちの中へはいってこなかった



14.教会の神様(作曲は中田喜直)


 おかあさんが死んでから
 さびしい日がおおい。
 おとうさんやおにいさんは
 神様なんていないというけれど
 私はやっぱり神様をしんじる。
 教会へ来てよかったな。
 神様に聞いてほしいことがいっぱいある。
 神様に力になってもらいたいこともある。
 教会へ行くと
 私はおかあさんにあえるようなきがする。

○野口雨情歌唱集(中央公論社)



    しゃぼん玉(作曲 中山晋平)


 しゃぼん玉 とんだ
 屋根までとんだ
 屋根までとんで
 こわれて消えた


 しゃぼん玉 消えた
 飛ばずに消えた
 うまれてすぐに
 こわれて消えた


 風 風 吹くな
 しゃぼん玉 とばそ



    船頭小唄(作曲 中山晋平)


 己は河原の枯れ芒
 同じくお前も枯れ芒
 どうせ二人はこの世では
 花の咲かない枯れ芒


 死ぬも生きるもねえお前
 水の流れに何変ろ
 己もお前も利根川の
 船の船頭で暮そうよ


 枯れた真菰に照らしてる
 潮来出島のお月さん
 わたしゃこれから利根川の
 船の船頭で暮すのよ



    七つの子(作曲 本居長世)


 烏 なぜ啼くの
 烏は山に
 かわいい七つの
 子があるからよ


 かわいかわいと
 烏は啼くの
 かわいかわいと

 啼くんだよ


 山の古巣に
 いって見て御覧
 丸い眼をした
 いい子だよ



    青い眼の人形(作曲 本居長世)


 青い眼をした
 お人形は
 アメリカ生まれの
 セルロイド


 日本の港へ
 ついたとき
 一杯涙を
 うかべてた


 「私は言葉が
 わからない
 迷子になったら
 なんとしょう


 やさしい日本の
 嬢ちゃんよ
 仲よく遊んでやっとくれ
 仲よく遊んでやっとくれ



    赤い靴(作曲 本居長世)


 赤い靴 はいてた
 女の子
 異人さんに つれられて
 行っちゃった


 横浜の 埠頭から
 船に乗って
 異人さんに連れられて
 行っちゃった


 今では 青い目に
 なっちゃって
 異人さんのお国に
 いるんだろう


 赤い靴 見るたび
 考える
 異人さんに逢うたび
 考える



    黄金虫(作曲 中山晋平)


 黄金虫は 金持ちだ
 金蔵建てた 蔵建てた
 飴屋で水飴 買って来た


 黄金虫は 金持ちだ
 金蔵建てた 蔵建てた
 子供に水飴 なめさせた



    兎のダンス(作曲 中山晋平)


 ソソラ ソラ ソラ 兎のダンス
 タラッタ ラッタ ラッタ ラ
 ラッタ ラッタ ラッタ ラ


 脚で 蹴り蹴り
 ピョコ ピョコ 踊る
 耳に鉢巻き ラッタ ラッタ ラッタ ラ


 ソソラ ソラ ソラ 可愛いダンス
 タラッタ ラッタ ラッタ
 ラッタ ラッタ ラ


 とんで 跳ね 跳ね 
 ピョコ ピョコ 踊る
 脚に赤靴 ラッタ ラッタ ラッタ ラ



    証城寺の狸囃子(作曲 中山晋平)


 証 証 証城寺  
 証城寺の庭は
 ツ ツ 月夜だ
 皆出て来い来い
 己等の友達ア
 ぽんぽこのぽん


 負けるな 負けるな
 和尚さんに負けるな
 来い 来い 来い 来い来い来い
 皆出て 来い来い来い


 証 証 証城寺  
 証城寺の萩は 
 ツ ツ 月夜に花盛り
 己等は浮かれて
 ぽんぽこぽんのぽん



    雨降りお月さん(作曲 中山晋平)


 雨降りお月さん
 雲の陰
 お嫁にゆくときゃ
 誰とゆく
 ひとりで傘
 さしてゆく
 傘ないときゃ
 誰とゆく
 シャラ シャラ シャン シャン
 鈴つけた
 お馬にゆられて
 濡れてゆく


 いそがにゃお馬よ
 夜が明ける
 手綱の下から
 ちょいと見たりゃ
 お袖でお顔を
 隠してる
 お袖は濡れても
 干しゃ乾く
 雨降りお月さん
 雲の陰
 お馬にゆられて
 濡れてゆく



    あの町この町(作曲 中山晋平)


 あの町この町 日が暮れる
 日が暮れる
 今きたこの道 帰りゃんせ
 帰りゃんせ


 お家がだんだん 遠くなる
 遠くなる
 今きたこの道 帰りゃんせ
 帰りゃんせ


 お空に夕べの 星が出る
 星が出る
 今きたこの道 帰りゃんせ 
 帰りゃんせ



    波浮の港(作曲 中山晋平)


 磯の鵜の鳥ゃ 日暮れにかえる
 波浮の港にゃ 夕やけ小やけ
 あすの日和は
 やれほんにさ なぎるやら


 船もせかれりゃ 出船の支度
 島の娘たちゃ 御神火ぐらし
 なじょな心で
 やれほんにさ いるのやら



    紅屋の娘(作曲 中山晋平)


 紅屋の娘のいうことにゃ
 サノいうことにゃ
 春のお月様うす曇り
 トサイサイ うす曇り


 お顔に薄紅つけたとき
 サノつけたとさ
 私も薄紅つけよかな 
 トサイサイ つけよかな

○北原白秋歌唱集Ⅱ(中央公論社)



    ペチカ(作曲 山田耕筰)


 雪のふる夜はたのしいペチカ
 ペチカ燃えろよ お話しましょ
 むかしむかしよ 燃えろよ ペチカ


 雪のふる夜はたのしいペチカ
 ペチカ燃えろよ おもては寒い
 栗や栗やと 呼びます ペチカ


 雪のふる夜はたのしいペチカ
 ペチカ燃えろよ じき春来ます
 いまに楊も 萌えましょ ペチカ


 雪のふる夜はたのしいペチカ
 ペチカ燃えろよ 誰だか来ます
 お客さまでしょ うれしい ペチカ


 雪のふる夜はたのしいペチカ
 ペチカ燃えろよ お話しましょ
 火の粉ばちばち はねろよ ペチカ



    からたちの花(作曲 山田耕筰)


 からたちの花が咲いたよ
 白い 白い 花が咲いたよ


 からたちのとげはいたいよ
 いつも いつも とおる道だよ


 からたちは畑の垣根よ
 いつも いつも とおる道だよ


 からたちも秋はみのるよ
 まろい まろい 金のたまだよ


 からたちのそばで泣いたよ
 みんな みんな やさしかったよ


 からたちの花が咲いたよ
 白い 白い 花が咲いたよ



    待ちぼうけ(作曲 山田耕筰)


 待ちぼうけ 待ちぼうけ
 ある日 せっせと 野良かせぎ
 そこへ兎が飛んで出て

 ころり ころげた 木のねっこ


 待ちぼうけ 待ちぼうけ
 しめた これから寝て待てか
 待てば獲ものは駆けて来る
 兎ぶつかれ 木のねっこ


 待ちぼうけ 待ちぼうけ
 昨日鍬とり 畑仕事
 今日は頬づえ 日向ぼこ

 うまい伐り株 木のねっこ


 待ちぼうけ 待ちぼうけ
 今日は今日はで 待ちぼうけ
 明日は明日はで 森のそと
 兎待ち待ち 木のねっこ


 待ちぼうけ 待ちぼうけ
 もとは涼しい黍畑
 いまは荒野の箒草
 寒い北風 木のねっこ



    あめふり(作曲 中山晋平)


 あめあめ ふれふれ かあさん が
 じゃのめ で おむかい うれしいな
 ピッチピッチ チャプチャプ ランランラン


 かけましょ かばんを かあさんの
 あとから ゆこゆこ かね が なる
 ピッチピッチ チャプチャプ ランランラン


 あらあら あのこ は ずぶぬれだ
 やなぎ の ねかた で ないている
 ピッチピッチ チャプチャプ ランランラン


 かあさん ぼくのを かしましょか
 きみきみ このかさ さしたまえ
 ピッチピッチ チャプチャプ ランランラン


 ぼくなら いいんだ かあさんの
 おおきな じゃのめ に はいってく
 ピッチピッチ チャプチャプ ランランラン



    この道(作曲 山田耕筰)


 この道はいつか来た道
 ああ そうだよ
 あかしやの花が咲いている


 あの丘はいつか見た丘
 ああ そうだよ
 ほら 白い時計台だよ


 この道はいつか来た道
 ああ そうだよ
 お母さまと馬車で行ったよ


 あの雲はいつか見た雲
 ああ そうだよ
 山査子の枝も垂れてる


    松島音頭(作曲 山田耕筰)


 ああ 松は松島 磯馴れた松の
 松の根かたに 桔梗が咲いた
 見たよ見ました ひともと桔梗
 見たよ見ました ひともと桔梗 や ほーれほい
 舟ばた たたいて や ほーれほい


 ああ さんまさんまは ありゃ松風よ
 誰を待つやら 桔梗が咲いた
 見たよ見ました ひともと桔梗
 見たよ見ました ひともと桔梗 や ほーれほい
 舟ばた たたいて や ほーれほい


 ああ ここは松島 雄島が崎よ
 星のちろりに 桔梗が咲いた
 見たよ見ました ひともと桔梗
 見たよ見ました ひともと桔梗 や ほーれほい
 舟ばた たたいて や ほーれほい


 ああ さんまさんまで 待つ身はさぞや
 露の夜露に桔梗が咲いた
 見たよ見ました ひともと桔梗
 見たよ見ました ひともと桔梗 や ほーれほい
 舟ばた たたいて や ほーれほい


 ああ 歌え囃せや 松島音頭
 松の根かたに 桔梗が咲いた
 見たよ見ました ひともと桔梗
 見たよ見ました ひともと桔梗 や ほーれほい
 舟ばた たたいて や ほーれほい



    ちゃっきり節(作曲 町田嘉章)


 唄は ちゃっきり節 男は次郎長
 花たちばな 夏たちばな 茶のかおり
 ちゃっきり ちゃっきり ちゃっきりよ
 きゃあるが鳴くんで 雨ずらよ


 茶山 茶どころ 茶は緑どころ
 ねえねえ行かずか やあれ行かずか お茶つみに


 お山見れ見れ あの笠雲を
 ねんね着て出や 今朝は看て出や 菅の笠


 茶はお茶の葉 鶯染めよ
 赤い襷の そろた襷の 程のよさ


 お茶の茶山の 茶の木の中で
 おまっち何というた いつか何というた お茶山で


 茶の実とんとろりと しめ木にかけて
 かわいおまっちにの じつはおまっちの髪油


 日永そよかぜ 南が晴れて
 茶摘鋏の お手の鋏の 音のよさ


 昔ぁ火の中 草薙さまよ
 いまは茶の中 茶山茶の中 茶んぶくろ


 山で啼くのは やぶ鶯よ
 茶摘み日和の 晴れた日和の 気のとろさ


 歌え歌えよ 茶山の藪で
 惚れて歌わにゃ そろて歌わにゃ 日がたたぬ


 どんどんと 積み出すお茶は
 とても新茶の 揉んだ新茶の 濃い緑


 お茶は清水へ お月さんは山へ
 わたしゃ蜜柑の ぬしと蜜柑の 花かげへ


 出たよぼんやりこと 花待ち雲も
 さきの茶山の 宵の茶山の はなに出た


 なにをくよくよ お晩の茶揉み
 月にあの子も とろりあの子も 揉みに来る


 夏じゃ五月じゃ 新茶じゃ粉茶じゃ
 やあれえれえれ やあれえれえれ ごせっぽい


 やっさもっさよ お茶屋の前で
 こっちゃお抹茶 あっちゃお抹茶 はりこんぼ



    落葉松(作曲 井上武士)


 からまつの林を過ぎて
 からまつをしみじみと見き
 からまつはさびしかりけり
 たびゆくはさびしかりけり


 からまつの林を出でて
 からまつの林に入りぬ
 からまつの林に入りて
 また細く道はつづけり


 からまつの林の奥も
 わが通る道はありけり
 霧雨のかかる道なり
 山風のかよう道なり


 からまつの林の道は
 われのみか ひともかよいぬ
 ほそぼそと通う道なり
 さびさびと急ぐ道なり


 からまつの林を過ぎて
 ゆえしらず歩みをひそめつ
 からまつはさびしかりけり
 からまつとささやきにけり


 からまつの林を出でて
 浅間嶺にけぶり立つ見つ
 浅間嶺にけぶり立つ見つ
 からまつのまたそのうえに


 からまつの林の雨は
 さびしいけどいよよしずけし
 かんこ鳥鳴けるのみなる
 からまつの濡るるのみなる


 世の中よ あわれなりけり
 常なけどうれしかりけり
 山川に山がわの音
 からまつにからまつのかぜ



    空に真赤な(作曲 シャルル・ルルー)


 空に真赤な雲のいろ。
 玻璃に真赤な酒のいろ。
 なんでこの身が悲しかろ。
 空に真赤な雲のいろ。



○北原白秋歌唱集Ⅰ(中央公論社)



    今度生れたら(作曲 中山晋平)


 今度生れたら驢馬に乗っておいで
 驢馬はよいもの 市場へつれて
 そこで燕麦しこたま貰て
 かわい女子と乗って帰ろ


 今度生れたら金箱もっておいで
 金はよいもの 呉服屋を呼んで
 そこで緋繻子をどっさり買って
 かわい女子と寝て暮そ


 今度生れたら鵞鳥抱いておいで
 鵞鳥はよいもの 香水屋を呼んで
 そこで卵と品よく代えて
 かわい女子のおめかしに


 今度生れたら酒樽負っておいで
 酒はよいもの たらふく飲んで
 そこでまたまた卒倒して死んで
 かわい女子を置き去りに



    にくいあん畜生(作曲 中山晋平)


 にくいあん畜生は おしゃれな女子
 おしゃれ浮気で 薄情ものよ
 どんな男にも 好かれて好いて
 飽いて別れりゃ 知らぬ顔


 飽いて別れりゃ 別りょとままよ
 外に女子が 無いじゃなしよ
 何をくよくよ 明日もござる
 男後生楽 またできる


 男後生楽 踊らぬ奴は
 やもめ男か いくじなしよ
 何をくよくよ 躍りさえおどりゃ
 すぐに女子も 来てたかる



    さすらいの唄(作曲 中山晋平)


 行こか戻ろか北極光の下を
 ロシャは北国はて知らず
 西は夕焼け東は夜明け
 鐘が鳴ります中空に


 泣くにゃ明るし急げば暗し
 遠い燈火もちらちらと
 とまれ幌馬車やすめよ黒馬よ
 明日の旅館がないじゃなし


 燃ゆる思いを荒野にさらし
 馬は水の上を踏む
 人は冷たし吾が身はいとし
 街の酒場はまだ遠し


 わたしゃ水草吹くままに
 流れ流れてはて知らず
 昼は旅して夜は夜で躍り
 末はいずくで果てるやら



    恋の鳥(作曲 中山晋平)


 捕えてみればその手から
 小鳥は空へ飛んで行く
 泣いても泣いても泣ききれぬ
 かわいいかわいい恋の鳥


 尋ね探せばよう見えず
 気にもかけねばすぐ見えて
 夜も昼も知らず気儘鳥
 来たり住んだり風の鳥


 捕えようとすれば飛んで行く
 逃げようとすれば飛びすがり
 好いた惚れたと追っかける
 翼火の鳥 恋の鳥



    花園の恋(作曲 中山晋平)


 くるしき恋よ 花うばら
 かなしき恋よ 花うばら
 二人は逢いぬ しのびかに
 ふるえて 人目はばかりぬ


 くるしき恋よ 花うばら
 かなしき恋よ 花うばら
 二人は寄りぬ 今さらに
 ふるえて 眼をば見合わせぬ


 くるしき恋よ 花うばら
 かなしき恋よ 花うばら
 二人は泣きぬ たえだえに
 ふるえて 熱く息づきぬ


 くるしき恋よ 花うばら
 かなしき恋よ 花うばら
 二人はふれぬ おそろしく
 ふるえて 紅く口吻けぬ


 くるしき恋よ 花うばら
 かなしき恋よ 花うばら
 二人は死にぬ 血みどろに
 ふるえて 人に殺されぬ



    城が島の雨(作曲 梁田貞)


 雨はふるふる
 城ヶ島の磯に
 利休鼠の
 雨がふる


 雨は真珠か
 夜明けの霧か
 それともわたしの
 忍び泣き


 舟はゆくゆく
 通り矢のはなを
 濡れて帆あげた
 ぬしの舟


 ええ 舟は 櫓でやる
 櫓は唄でやる
 唄は船頭さんの 心意気


 雨はふるふる
 日はうす曇る
 舟はゆくゆく
 帆がかすむ



    酒場の唄(作曲 中山晋平)


 ダンスしましょか
 かるた切りましょうか
 ららんら ららんら ららんら

 赤い酒でも飲みましょうか


 ピアノ弾きましょうか
 笛吹きましょうか
 ららんら ららんら ららんら
 赤い月でも待ちましょうか


 闘牛見ましょうか
 花投げましょうか
 ららんら ららんら ららんら
 赤い槍でも振りましょか


 女賭けましょうか
 玉突きましょうか
 ららんら ららんら ららんら
 赤い心臓でもあげましょうか


 さあさ退散しましょうか
 まあだ飲みましょうか
 ららんら ららんら ららんら
 赤い橇にでも乗りましょうか



    赤い鳥小鳥(作曲 成田為三)


 赤い鳥 小鳥
 なぜなぜ赤い
 赤い実を食べた


 白い鳥 小鳥
 なぜなぜ白い
 白い実を食べた


 青い鳥 小鳥
 なぜなぜ青い
 青い実をたべた 



    雨(作曲 弘田龍太郎)


 雨がふります 雨がふる
 遊びにゆきたし 傘はなし
 紅緒の木履も 緒が切れた


 雨がふります 雨がふる
 いやでもお家で 遊びましょう
 千代紙折りましょう たたみましょう


 雨がふります 雨がふる
 けんけん小雉子が 今啼いた
 小雉子も寒かろ 寂しかろ


 雨がふります 雨がふる
 お人形寝かせど まだ止まぬ
 お線香花火も みな焚いた


 雨がふります 雨がふる
 昼もふるふる 夜もふる
 雨がふります 雨がふる



    あわて床屋(作曲 成田為三)


 春は早うから 川辺の岸に
 蟹が店出し 床屋でござる
 チョッキン チョッキン チョッキンナ


 小蟹ぶつぶつ 石鹸を溶かし
 親爺自慢で鋏を鳴らす
 チョッキン チョッキン チョッキンナ


 そこへ兎がお客でござる
 どうぞ急いで 髪刈っておくれ
 チョッキン チョッキン チョッキンナ


 邪魔なお耳は ぴょこぴょこするし
 そこで慌てて チョンと切りおとす 
 チョッキン チョッキン チョッキンナ


 兎ァ怒るし 蟹ァ恥ょかくし
 為方なくなく 穴へと逃げる
 チョッキン チョッキン チョッキンナ


 為方なくなく 穴へと逃げる
 チョッキン チョッキン チョッキンナ



    揺籃のうた(作曲 草川信)


 揺籃のうたを
 カナリヤが歌う よ
 ねんねこ ねんねこ
 ねんねこ よ


 揺籃のうえに
 枇杷の実が揺れる よ
 ねんねこ ねんねこ
 ねんねこ よ
  
 揺籃のつなを
 木ねずみが揺する よ
 ねんねこ ねんねこ
 ねんねこ よ


 揺籃のゆめに
 黄色い月がかかる よ
 ねんねこ ねんねこ
 ねんねこ よ



    ちんちん千鳥(作曲 近衛秀麿)


 ちんちん千鳥の
 啼く声は
 ガラス戸しめても
 まだ寒い


 ちんちん千鳥の
 啼く声は
 燈を消しても
 まだ消えぬ


 ちんちん千鳥は
 親ないか
 夜風に吹かれて
 川の上


 ちんちん千鳥よ
 お寝らぬか
 夜明けの明星が
 早や白む


    かやの木山(作曲 山田耕筰)


 かやの木山の
 かやの実は
 いつかこぼれて
 ひろわれて


 山家のお婆さは
 いろり端
 粗朶たき 柴たき
 燈つけ


 かやの実 かやの実
 それ爆ぜた
 今夜も雨だろ
 もう寝よよ


 お猿が啼くだで
 早よお眠よ



    砂山(作曲 山田耕筰)


 海は荒海
 向うは佐渡よ
 すずめ啼け啼け もう日は暮れた
 みんな呼べ呼べ お星様出たぞ


 暮れりゃ砂山
 汐鳴りばかり
 すずめちりぢり また風荒れる
 みんなちりぢり もう誰も見えぬ


 かえろかえろよ
 茱萸原わけて
 すずめさよなら さよなら あした
 海よさよなら さよなら あした



    五十音(作曲 下総皖一)


 水馬赤いな ア イ ウ エ オ
 浮藻に小蝦もおよいでる


 柿の木 栗の木 カ キ ク ケ コ
 啄木鳥こつこつ 枯けやき


 大角豆に酸をかけ サ シ ス セ ソ
 その魚浅瀬で刺しました


 立ちましょ 喇叭で タ チ ツ テ ト
 トテトテタッタと飛び立った


 蛞蝓のろのろ ナ ニ ヌ ネ ノ
 納戸にぬめって なにねばる


 鳩ぽっぽ ほろほろ ハ ヒ フ ヘ ホ
 日向のお部屋にゃ笛を吹く


 蝸牛 螺旋巻 マ ミ ム メ モ
 梅の実落ちても見もしまい


 焼栗 ゆで栗 ヤ イ ユ エ ヨ
 山田に灯のつく宵の家


 雷鳥は寒かろ ラ リ ル レ ロ
 蓮華が咲いたら瑠璃の鳥


 わい わい わっしょい ワ ヰ ウ エ オ
 植木屋 井戸換え お祭りだ

○ふるさとの民謡(中央公論社)



    さくら(日本古謡)


 さくら さくら
 野やまも里も 見わたすかぎり
 かすみか雲か 朝日ににおう
 さくら さくら 花ざかり


 さくら さくら
 やよいの空は 見わたすかぎり
 かすみの雲が 匂いぞ出ずる
 いざや いざや 見にゆかん



    江戸子守唄(東京)


 ねんねんよい子だ
 ねんねしな
 坊やはよい子だ
 ねんねしな


 坊やの子守は
 どこへ行った
 あの山こえて
 里へ行った


 里のお土産に
 なにもろた
 でんでん太鼓に
 笙の笛



    中国地方の子守唄


 ねんねこしゃっしゃりませ
 寝た子のかわいさ
 起きて泣く子の ねんころろ
 面憎さ
 ねんころろん ねんころろん


 ねんねこしゃっしゃりませ
 きょうは二十五日さ
 あすはこの子の ねんころろ
 宮詣り
 ねんころろん ねんころろん

 宮へ詣ったとき
 なんというて拝むさ



    五木の子守唄(熊本)


 おどんま盆ぎり盆ぎり
 盆からさきゃおらんと
 盆がはよくりゃはよ戻る


 おどんま勧進勧進
 あんひとたちゃよか衆
 よか衆よか帯よか着物


 おどんが打死ちゅうて
 誰が泣いてくりょか
 裏の松山蝉が鳴く


 おどんが打死ちゅうたば
 道端いけろ
 通る人ごち花あげろ


 花はなんの花
 つんつん椿
 水は天から貰い水



    坊さん坊さん 遊戯歌(栃木)


 (合唱)坊さん 坊さん どこ行くの
 (独唱)わたしは田圃へ 稲刈りに
 (合唱)わたしも一緒に 連れしゃんせ
 (独唱)お前が来ると 邪魔になる
 (合唱)このかんかん坊主 くそ坊主 うしろの正面だァれ



    山寺の和尚さん 手鞠唄(東京)


 山寺の和尚さんは
 毬がお好きで毬はなし
 猫を紙袋へへしこんで
 ポンと蹴りゃ ニャンと鳴く
 ニャンポンそこにか
 わたしゃここに
 さらば一貫貸しました



    あんたがたどこさ 手鞠唄(東京)


 あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ
 熊本さ 熊本どこさ せんばさ
 せんば山には 狸がおってさ
 それを猟師が 鉄砲で打ってさ
 煮てさ 焼いてさ 食べてさ
 それを木の葉で チョイトかぶせ



    お月さんいくつ わらべ歌(東京)


 お月さんいくつ 十三 七つ
 まだ年ァ若いね あの子を生んで
 この子を生んで 誰に抱かしょ
 お万に抱かしょ お万どこ行った
 油買いに茶買いに 油屋の前で
 すべってころんで 油一升こぼした
 その油どうした 太郎どんの犬と
 次郎どんの犬と みんな舐めてしまった
 その犬どうした 太鼓に張って
 鼓に張って
 あっち向いちゃ ドンドコドン
 こっち向いちゃ ドンドコドン
 たたきつぶしてしまった



    ホーホー蛍こい わらべ歌(秋田)


 ホー ホー 蛍こい
 あっちの水は 苦いぞ
 こっちの水は 甘いぞ


 ホー ホー 蛍こい
 山路 こい
 行燈の光で
 またこいこい



    開いた開いた 遊戯歌(東京)


 開いた 開いた
 何の花が開いた
 蓮華の花が開いた
 開いたと思ったら
 いつのまにかつぼんだ
 
 つぼんだ つぼんだ
 何の花がつぼんだ
 蓮華の花がつぼんだ
 つぼんだと思ったら
 いつのまにか開いた



    通りゃんせ 遊戯歌(東京)


 通りゃんせ 通りゃんせ
 ここはどこの細道じゃ
 天神様の細道じゃ
 ちいっと通してくだしゃんせ
 ご用のない者通しゃせぬ
 この子の七つのお祝いに
 お札を納めにまいります
 行きはよいよい 帰りは恐い
 恐いながらも 通りゃんせ 
 通りゃんせ



    かごめかごめ 遊戯歌(千葉)


 かごめ かごめ
 かごの中の鳥は
 いついつ出やる
 夜明けの晩に
 鶴と亀とすべった
 うしろの正面だァれ



    ずいずいずっころばし 遊戯歌(東京)


 ずいずい ずっころばし
 胡麻味噌 ずい
 茶壺に追われて
 トッピンシャン
 抜けたら ドンドコショ
 俵の鼠が米食って チュウ
 チュウ チュウ チュウ
 お父さんが呼んでも
 お母さんが呼んでも
 行きっこなし(よ)
 井戸のまわりで
 お茶碗欠いたのだァれ



    そうらん節(北海道)


 ヤーレン ソーラン ソーラン ソーラン
 ソーラン ソーラン ハイハイ


 にしん来るかと 稲荷に聞けば
 どこの稲荷も コンとなく チョイ


 ヤサエーリャーサーノ ドッコイショ
 ア ドッコイショ ドッコイショ


 沖の鴎の なく声聞けば
 船乗り稼業はやめられぬ


 余市よいとこ 一度はござれ
 海に黄金の 波が立つ


 沖の鴎が ものいうならば
 たより聞いたり 聞かせたり


 男度胸なら 五尺のからだ
 どんと乗りだせ 波のうえ