国民の映画と私
昨日初日で、今日当日券がラッキーなことに取れたのでマチネで観てきた。DVDでは何度となく観てきた作品だが、やはり舞台は舞台がいい。終盤のどんでん返しから舞台の空気と照明ががらっと変わり、そのまま静かな終幕へと続く流れには鳥肌が立ったよ。空気が変わってから息を抜く暇がないので、観客も拍手するタイミングをつかめてないという戸惑いが少なからずあったように思う。カーテンコールは1回。二日目のマチネということを差し引いても少なすぎる。どうした観客。なぜ呼び戻さないのだ。役者さんたちはみんなすごかったぞ!!○役者さん別感想ゲッベルス・小日向文世…ゲッベルス、ハマりすぎ。悲しむべき小市民で愛すべきキャラクターでありながら確実に狂っている。時代のせいなのか、彼が生来持ったものなのか判然としないあたりがコヒさんの力量なのだろう。ヒムラー・段田安則…上手い。芝居のキーパーソン。コメディ・リリーフでありながらあらゆる出来事のトリガーを引いている。チョビヒゲが似合ってかわいいんだけど、彼もまた狂気にとらわれている。ゲーリング・渡辺徹…実は今回の国民の映画再演で一番見たかった人。素晴らしかった!初演の白井さんがノーブルなゲーリングだとしたら、渡辺徹のゲーリングはより大らかになっている印象。温かいようにさえ見える。去り際の台詞が本当にかっこいい。肉襦袢は着すぎだと思うけどwマグダ・吉田羊…初演ではゲッベルスの愛人エルザをやっていた吉田羊が妻にステップアップ。ケストナーの今井さん、旦那のコヒさんといいケミストリー。海外ドラマとか映画を見ているような垢抜けた仕草がとてもステキ。フリッツ・小林隆…裏の主役。フリッツの生の声というものがほんの僅かしか垣間見られないのが残念だと思う。何を考え、どういう思いでそこにいたのか、語って欲しい。完全に抑制された芝居のコバさん、執事役が日本一ハマる役者である。ヤニングス・風間杜夫…実に泥臭い。カッコ悪い。だがそれがすごくいい。酔っ払ってないけど酔っ払ってるような芝居をする。ザおじさん。そしておじさんだからこそ翻せる前言と叛旗。いるいるこーいうおじさん!と思ってると彼の人間臭さにぐっとくる。グリュンドゲルス・小林勝也…名優。彼の台詞には聞き入ってしまう。しゃべり始めると完全にフォーカスが彼に当たる感じがする。緩急自在で場を操る役者さん。フレーリヒ・平岳大…とにかく華がある。芝居の上手い下手ではない。大柄だってことは役者にとって相当な武器だよね。そして二枚目なところも。笑いを担う人として正統派二枚目を持ってくるあたりが三谷幸喜の侮れないところ。ケストナー・今井朋彦…大好き。かっこ良くて、歯切れがよくて、立ち居振る舞いが日本人ばなれしている。正統派の訓練を積んだ役者というものはこういうものだ、とつくづく思う人。ケストナーの最後の独白は芝居が初演と変わっていて、呟くような感じが心に残った。ツァラ・シルビア・グラブ…美しい。そしてとても鬱陶しいw最後の最後で低い声を出すところがめちゃくちゃかっこよかった。いい女。レニ・新妻聖子…髪型は初演のほうが好きだけど、芝居がぐっと丸くなっていてよかった。エルザを諭すシーンがかっこよくて好き。エルザ・秋元才加…とにかくデカイ。初演の吉田羊のエルザにかなり引きずられている芝居をしているように感じた。必死さが先に立っていてまだ余裕がないように見える。いい意味でカンパニーから浮いているのが実にエルザらしい。コヒさんとのイチャつきシーンはかわいくてよかった。まだ幕開きなので、これからどんどん芝居が変わっていくかと思うと、東京の千秋楽付近で是非もう一度見ておきたいし、できれば福岡の大楽を見届けたい。芝居としての好きさかげんで言えば「コンフィダント・絆」のほうが上なんだけど、この「国民の映画」には笑いでコーティングした人間の狂気みたいなものを感じるので、作品として残るのはこっちなのかなあ、とも思っている。いや、コンフィダントも再演あったら絶対見たいけど。あれはキャスト変えないでほしいしなー。国民の映画 (PARCO劇場DVD)/パルコ¥6,800Amazon.co.jpコンフィダント・絆 (PARCO劇場DVD)/パルコ¥6,800Amazon.co.jp