こんばんは~
今日は「スタシカ」で~す
サイコロの力で、ドラゴンピークから別の世界にやってきたスターワンのメンバーたち。
そこで出会った男は何者なのか
彼の過去が語られます。
第24話
24.男の願い
”あなたの星”と言った事が男に誤解されたと思って慌てるスターワン。
「い、いや、僕たちが本当に星なわけじゃなくて…」
「私にとっては輝いてる星さ。魔法も使えて、こんな召喚獣も連れてる。彼らは純粋な人間を好むしな」
ソルが返答に困っていると、ビケンが言った。
「とにかく、こんな貴重な物は貰えませんよ」
「魔法が未熟なんだろ?だったら、なおさらこれが必要だ。私がこれをやる代わりに、君たちは私の頼みを聞くという契約を結ぶのはどうだ?」
男はビケンの頭を撫でながら目を合わせた。
ソルは2人を交互に見ながら、改めて2人が似ていると感じた。
まるで双子の兄弟のように…
「もう私には必要無いものだ、受け取ってくれ。それから、これから何かを渡す代わりに対価を求める相手がいたら、必ず”何が欲しいのか”と尋ねるんだ。誓約というのは公平でない場合が多いからな」
男の言葉を聞き、ユジンの頭の中で鳥肌がたつような猫の鳴き声が響いた。
”代わりに対価を払ってもらう。どうだ、契約するか?”
何でもするって答えたっけ…
微かな不安が込み上げてきた。
「じゃあ、あなたの望むものは何ですか?」
すでに手遅れな気もしたが、ユジンは忠告通り、男に聞き返した。
男は細く息を吐くと、単純な願いを答えた。
「私の話を聞いてくれ。話終わったら、君たちを元いた場所に返してやろう」
メンバーたちは顔を見合わせて頷いた。
「誓約完了だ。長い話になるが、早速始めようか」
男はもう会えない人達の事を思い浮かべているような、感傷に浸った目をしていた。
男が杖を軽く振ると、先に光が灯った。
その光が大きな球体になり、その中にとある風景を映し始めた。
黄土色の荒地の真ん中に黒い穴が空いており、その穴は次々と出現し、周りの生物たちを飲み込んでいった。
「黒い虚無。我々はそう呼んでいた。世界にある日突然現れたんだ」
「伝染病みたいなものですか?」
タホが質問した。
「そうではない。あれは…魔法なのかもしれない」
男は遠くを見ながら言った。
「魔法の発現から長い時を経て、我々はまるで自分たちが神になったかのようにこの世を支配していた。そして、いつからか感情まで失ってしまったんだ」
ソルはふと、茂みの中にいる男が、今もなお雪原に立っているように感じた。
「我々は滅亡を避けたかった。聞いてくれるか?”我々の話”を」
スターワンは男の周りを囲み、輪になって座り込んだ。
「黒い虚無は広がり続け、世界のすべてを染めてしまった」
男の腕には灰色のまだらな痕があった。
「黒い虚無に触れた所は感覚も痛みもない。飲み込まれれば、感情や意思もなくなるんだ」
男は話を続けた。
「魔法の発現によって、人間たちは食べる事も眠る事も何もせずに生きていけるようになった。そのせいなのか、黒い虚無で終末を迎える事が当然だと主張する者が出てきた。我々は全てを手にし、それ以上何も必要なかったからな」
ソルはすぐに聞き返した。
「みんな死ぬのに?世の中すべてが、黒く塗り潰されてもですか?」
「あぁ、半数ぐらいは、これも運命だと受け入れようとしていた。彼らは死に対する感覚が崩れていたんだ。君たちはどう思う?」
メンバーは口々に否定した。
「私たち残りの半分も必死に抵抗した。飲み込まれるなんて御免だったからな。友人たちと懸命に方法を探したよ」
タホが真剣な目で尋ねた。
「黒い虚無にどうやって打ち勝ったんですか?現れた原因は分かったんですか?」
男はゆっくりと首を振った。
「原因はまだ分からない。永遠に生きようとした人間が禁忌に触れたのかもな…そして、まだ打ち勝ってもいない」
「え?でも俺たちの世界はまだなんともないし、ここにも黒い何かなんてないですよね」
ビケンが不思議そうに言った。
「完全に消えたわけじゃない。私と友人たちが命をかけて封印しただけだ」
男がそうい言い杖を振ると、木の板を打ち合わせたような箱が空中から降りてきた。
「……この中にな」
スターワンは唖然とその箱を見つめた。



