大河ドラマ八重の桜も第10話「池田屋事件」において長州藩を中心とした急進的な攘夷思想とそれを阻む血に飢えた狂犬のような新選組、事態に戸惑う会津藩士といった対比でいよいよ幕末度合いも盛り上がってまいりました。 池田屋事件については妙にミニサイズの斉藤一がありえないと思ったぐらいで。おおむね及第点だったと思いました。
 
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しかしやっぱりこれが気になるというよりは、やめてほしいのは例の謎銃。 
川崎尚之助は、すぐれた洋学者、砲術家であり、ところが変われば大村益次郎のようになった可能性がある人ですが、このような後装式銃を開発した事実はありません
ドラマの尚之助は元込めの謎銃を完成して試射までおこない、「これならゲベールの3倍速く撃てる」「兵が3倍いるのと同じだ。」などと言っている。 しかしこれは、相手も同じゲベールならの話で、後装銃でもライフリングが無ければゲベール相当の銃であるのです。
 
有効射程約95mのゲベールは有効射程約270mの前装式ミニエー銃や有効射程約450mのエンフィールドには絶対勝てない、たとえ2~3倍あってもだめなのです。 すべてアウトレンジされてしまうからです。(有効射程とは約50パーセント程度の命中率の距離で最大射程はその3倍程度となります。)
 
江戸期の日本国内では尾栓のねじ切りはできても、銃身にライフリングすることはできなかったのだから、後装式にゲベールを改造してもあまり戦力アップにはならないのです
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尚之助の後装銃の劇中モデルとなったのはブロ友のbrassさんによるとウエストリチャード銃だとのことだが、調べてみるとフランス語読みでレカルツ銃といわれていたものようで、弾丸が紙製の薬莢式(下図B)だが雷管は別という過渡期の後装式ライフルです。 ドラマではパトロン式の弾薬苞(下図A)をそのまま銃につっこんでいるが、あれも、薬莢式の弾薬苞(下図B)を開発したという前提にしないと無理なような気がする。
 
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パトロン(上図A)は前装銃の弾丸と装薬を一発分まとめたもので、実際には『袋を破り、装薬を先に銃口から入れあとから弾丸を入れ、こぼれないよう紙をつめ、さくじょうで突き固める。』というもの。
 
レカルツ銃の藥室は意外と奥にあるので薬莢を奥まで押し込まないといけなさそうなのに、パトロンをただはめるだけなのはありえなと思う。 (佐賀藩が前装式エンフィールド銃用で押し込むだけのパトロンを国産化しようとした例はあるようです。)
 
またコミック板では八重がパトロンを考案したことになっているそうで、いいかげんにしろと言いたいですね。 なにがなんでも八重と尚之助をすごい人にしようとする捏造です。