かつて愛読した音楽雑誌「ミュージックライフ」。iPad/iPhone向けの電子書籍版として、復刻が始まっていました。
あのミュージック・ライフがデジタルマガジンで帰ってくる!
http://www.shinko-music.co.jp/musiclifeplus/
このオフィシャルWebsiteでは、Music Life Plusという無料のウェブマガジンを案内しているのですが、そのマガジンを読むためのアプリで、むかしのMusic Lifeも読めるようになっていたのです(こちらは有料、1冊450円 - 1,200円)。
60年代70年代のを順次販売してゆくとのことで、App Storeへ行ってみたところ、いまの時点では、ビートルズ来日の66年と、クイーンが大人気の75年が中心、それ以外は年末年始の号のみで、計24冊。
今後のリリースにもおおいに期待したいところです。
現在販売中のラインナップ。
1960年12月号
1961年12月号
1963年12月号
1966年 1月号 1966年 2月号 1966年 3月号
1966年 4月号 1966年 5月号 1966年 6月号
1966年 7月号 1966年 8月号 1966年 9月号
1966年10月号 1966年11月号 1966年12月号
1967年 1月号
1968年 1月号
1969年 1月号
1970年 1月号
1971年 1月号
1975年 5月号 1975年 6月号 1975年 9月号
1975年10月号臨時増刊
まずはピンク・フロイドの記事が読みたいっ、というわけで、さっそく各号のサンプルページを閲覧。
あいにくと目次のページがサンプルに含まれていないケースが多く、フロイドの文字をみつけられないままでしたが、とりあえずバンドのプロデビュー67年以降をまとめ買いすることにしました(久しぶりの大人買い?)。
これらの電子書籍版は、読み物のページがほとんどスキャン画像ですけど、広告ページも含めてまるごと一冊分ですから、60年代70年代の資料の宝庫です。
シンコーミュージックさん、ありがとう。
これからのリリースにも期待しています。
たいへんでしょうけど、60年から79年までの20年分、全冊復刻してください(……って、240冊?)。
表紙になった回数から予想すると、ZEPやEL&Pが優先されそうですけど、ただ一度だけピンク・フロイドが表紙を飾った71年の5月号も、ぜひ!
できましたら、PC/Mac版も出していただきたいです……。
さて、最初にダウンロード済みとなった1970年 1月号。
表紙は、イアン・アンダーソン(ジェスロ・タル)。
目次には、フロイドの名前はありません。
ちいさな記事でも広告でも……と、ぱらぱらめくって、ようやくP62で写真を発見。
P60 - 65の読み物に含まれていたのでした。
特集/今年はロック・オペラがブームになる(岩浪洋三)
ロック・オペラ“トミー”とは?
記事のタイトルからもおわかりのように、内容はThe Whoの『Tommy』のことなんですけど、ピンク・フロイドのメンバー四人の写真がいちばん大きく登場するのです(トップページP60の写真もフロイド。P62と同じ写真がセピアカラーで使われています)。
彼らについての解説が出てくるのは、P65、記事の終わりのほうです。
そのまえに、岩浪洋三氏によるこの特集記事の流れをご紹介しましょう。
最初のセクション【ロック・オペラ,開幕までの序曲】では、ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツやエルビス・プレスリー以降のロックの歴史が、ジャズの歴史と比較されて語られています。
次のセクション【ロック・オペラいよいよ開幕】では、ロック・ミュージックが進化してニュー・ロックになってきたこととヴォーカルによる言葉の表現に着目されていました。
(このセクションの途中には、編集スタッフ一同からの新年のご挨拶が入っています。チーフ・エディター星加ルミ子氏を筆頭に七人の連名)。
そして3つ目のセクション【ロック・オペラ「トミー」プロローグからエピローグまで】、ここでは、『Tommy』の内容紹介に入る前に、〈ひと頃,トータルLPという言葉がよく用いられた。つまり,一曲,一曲,独立して聴くというより,全体として,ひとつのまとまったものを表現するという行き方である。このトータルLPなるものをさらにドラマティックに演劇的に構成したものが,ロック・オペラである。〉と記されています。
そうして『Tommy』の二枚組LPと映画のストーリーなどがくわしく語られます。
最後の、4つ目のセクション【ロック・オペラ,70年に挑戦】。ここでは、ふたたびロックの進化状況に話題が移ります。
まずは岩浪洋三氏が『Tommy』の映画化で思い起こした映像作品として、ビートルズの『マジカル・ミステリー・ツアー』『イエロー・サブマリン』が挙げられ、〈この二作は,ステージ・ショウではないが,映画の上に展開されたロック・オペラといってもいいような気がする。ストーリーがあり,しかも幻想的なイメージが生かされ,ロック・ミュージックが従横に駆使されていた。〉と記されていました。
ピンク・フロイドのことが話題になるのは、その次です。
その部分から引用します。
ところで、最近ニュー・ロックのユニークなグループとしてピンク・フロイドが注目されている。シド・バレット(リード・ギター、リーダー)ロジャー・ウォーターズ(ベース・ギター、ヴォーカル)リック・ライト(オルガン、ピアノ)ニック・メイスン(ドラムス)からなる4人組で,日本でもすでに発売されているLP「神秘」が示すようにたいへんミステリアスで,幻想的な作風をもっている。LP全体で表現するような作品が多く,ザ・フーの「トミー」まではいかないが,多分にロック・オペラ的なものを含んでおり,今後そういったものに発展していくかもしれない大きな可能性を含んでいる。
ピンク・フロイドの曲を〈LP全体で表現する〉という捉えかたが、このころ(記事が書かれたのは69年晩秋あたり)からあったなんて、ちょっと感動。
このセクションの前に〈トータルLP〉という言葉が出てきましたが、それが後年にコンセプト・アルバムという呼びかたになったのでしょう。
引き続き、フロイドに関するパートからの引用です。
聴き手の心に万華鏡のような多彩なイメージを写し出してみせるという点で,きわめてファンタスティックなグループといえそう。またかれらは,モダン・エレクトロニック・サウンドを追求しているようなところもあり,その面でも期待できるものがある。
ピンク・フロイドは最近「モア」(オデオン)という映画のサウンド・トラック・アルバムと,「アマグマ」(オデオン)
“Ummagumma”と題された二枚組のアルバムを出したが,前者のファンタジーとフォーク・ソング的なナイーヴな音楽もおもしろいが,二枚組のほうにより鮮明に彼らの意図するものが出ている。過去に吹き込んだことのある「神秘」や「太陽讃歌」をさらに拡大した形で再吹き込みしているのが注目される。ドラマティックであるとともに,このグループの特色である神秘性と幻想的なイメージがよく生かされている。
たしかに『Ummagumma』は、当時のフロイドらしさ全開だったと思います(後追いで聴いたわたしなので断定的な言い方はできないんですけどね)。
『サイケデリックの新鋭』『神秘』でスタジオバージョンだった3曲を69年春のライブバージョンで出し直して、未発表の「ユージーン…」もライブ、そしてソロワークの競作でジャズロックやミュージック・コンクレート風の作品までやっていますから。
岩浪洋三氏の記事は、このあとキンクスのアルバムに触れて、次のような締めくくりになります。
またキンクスの「アーサー」(パイ)は,"アーサーまたは英国皇帝政治の衰退と没落"と題されたドラマティックな作品である。
ニュー・ロックが一方でジャズと結び付いて,インストゥルメンタル・パートの重要性が浮かび上ってきたが,他方,ヴォーカルを利用して,ニュー・ロックがロック・オペラのような,よりドラマティックな方向へも発展しつつあるのは興味深いことだ。こうして,ニュー・ロックはさらに幅の広いものになろうとしているのである。
記事の終わったあとには、〈ロック・オペラの代表盤〉として、3枚のアルバムがリストアップされています(タイトル・アーティスト名・収録曲のみ)。
・TOMMY / THE WHO (発売中)
・ARTHUR OR THE DECLINE AND FALL OF THE BRITISH EMPIRE / THE KINKS (発売未定)
・UMMAGUMMA / PINK FLOYD (本邦発売未定)
………ウマグマって、ロック・オペラでしたか………。
『Ummagumma』は、69年10月米国11月英国で発売。
日本では70年4月25日に発売されました(上の記事が載ってから四ヶ月ぐらい先のことですね)。
この日付は、映画『砂丘』が日本で公開された日でもあるのですが、このあたりでようやくピンク・フロイドを知る人が少しふえたということなんでしょうか。
……ともあれ、このミュージックライフ70年1月号は、『原子心母』で注目される前のフロイド評に触れることができたということで、たいへん貴重な一冊になりました。
ミュージックライフの復刻版、ほかの号もこれから少しずつ読んでいきますので、各号の内容紹介等はいずれまた近いうちに……。
関連記事:「雑誌ミュージックライフの歴史、70年代ロック・ミュージシャン人気投票の結果」(9月2日)




