ミュージックライフ1972年5月号…ピンク・フロイド再来日の続報、“狂気”プロトタイプの魅力 | プログレッシブBBSの思い出_ピンク・フロイドmemorandum

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〈ザ随筆〉での執筆記事も再録準備中.




2013.04.04 執筆
2013.04.07 更新
後半に写真解説・参考資料・ライブ音源embedの追加




ピンク・フロイド3月上旬再来日公演の特集記事が載ったのは前号、72年4月号でした。
この記事は、先月にアップした「ミュージックライフ1972年4月号…ピンク・フロイド別冊付録の再来日レポート」(1) および
(2) からの続きになります。


この5月号には、カラーグラビアで
ピンク・フロイド再来日の特集があります。掲載されている写真は、3月6日夜の東京公演のステージと、同じ日の昼間に行われた記者会見会場ホテル・ニューオータニ内の日本庭園。
編集上の都合で前号4月号に載せられなかったことがあきらかにうかがえますが、その前号は、別冊付録とはいえまれにみる充実ぶりでした。この号のカラーグラビアは、前の号で再来日特集を楽しんでいた読者
の方々には、ゴージャスなディナーにふさわしいデザートのような感じだったのかもしれませんね。

ちなみに、前号のような来日記事特集だけの別冊付録というのは、コンパクトなところが保存用にも好都合というか、リアルタイムで購入された読者の方々にとっては、長く手元に残しやすかったのではないかと思われます。
逆にいうと、後追い派にとっては、じつに入手困難なアイテムなんですよね。わたしの場合はたまたまのぞいてみた海外のサイトでタイミングよく出会えましたが、そもそも、古書店にある古雑誌で付録付き(または付録だけ)というケースは、きわめて少ないのです。
音楽雑誌に限りませんが、興味のない部類だったら処分されやすいのが付録の宿命ですから……。

漫画好きの友人の話によると、1960年代前半の月刊漫画雑誌では、本誌の連載の続きがその号の別冊付録というパターンがありがちで、復刻を望む声が多くても付録が揃わないので復刻できない作品がかなりあるということでした。
そうとう古いバックナンバーを閲覧できる国会図書館でも、付録までは残していないということです。
現在は付録ごと収蔵されているのかもしれませんが、昨今の付録は本誌よりもかさばるものがありますから、どうなんでしょうね……。

さて、余談が長くなってしまいましたが、ミュージックライフ1972年5月号です。
まずは表紙と目次のラインナップを見ていきましょう。


表紙/アルヴィン・リー(TYA)


目次


〈カラー・グラビア〉
ディープパープル、トラフィック、ブレッド、マーマレード、オシビサ、ニッテイグリッティ・ダート・バンド、ジェフ・ベック・グループ、イアン・マシューズ、リンゴ・スター、ビョルン&ベニー、セルジオ・メンデスとブラジル77、ホセ・フェリシアーノ、ディオンヌ・ワーウィック、ビー・ジーズ、ピンクフロイド、CCRゲイシャ・パーティ/本誌特写

〈グラビア〉
ビー・ジーズ・コンサート、インタビュー、大けがをしたジョージ・ハリソン夫妻、
CCRゲイシャ・ハウス・パーティ、イエス、オン・ステージ/レスリー・ウエストとフェリックス・パッパラルディ、スティーヴ・ミラー・バンド、ヴァーデン・アラン、エマーソン・レイク&パーマー、イッツ・ア・ビューティフル・ディ、フォト・トピックス、チェイス、ポール・アンカ・イン・ジャパン、ニュー・シーカーズ、オーシャン、ニュー・ライダーす・オブ・パープル・セイジ、バッドフィンガー、ミッシェル・デルぺッシュ

〈主な記事〉
・ロッド・スチュワートの告白…ジェフ・ベックとの奇妙な関係(リッチー・ヨーク)
・ジョン・レノン、ポール・マッカートニーの最近の動き(湯川れい子)
・3大ブリティッシュロックグループ来日直前詳報!
  アルヴィン・リー、ディープ・パープル、プロコル・ハル厶
   (大貫憲章、田中京、越谷政義)
・とぎすまされた世界の住人達…イエスとフレッド(木崎義二・八木誠)
・来日特報 ビー・ジーズのヒミツ「レコード会社より映画会社を作りたい」
・フランス・ロック界をしょって立つ男
  ミッシェル・ポルナレフは狂人か天才か?(立川直樹)

〈シリーズ〉
・ロック・ピープル:楽観的ニヒリスト、スティーヴン・スティルス(松平維秋)
・ロックの詩:マーク・ボランのキッチュでエッチな詩の世界(金坂健二)
・徹底的研究:最初で最後のアンチ・コマーシャル・グループ、
   グレイトフル・デッド(大森庸雄、立川直樹)
・ぼくの落書き帳から:ラヴィ・シャンカールと連合赤軍(三橋一夫)
・みゅうじっく・えっせい:
  レコード購買層にみる最近の傾向(日本楽器銀座店・ささき東右)
  ラジオとレコードの相助作用(文化放送ディレクター・江川雄一)
  ロンドンでレコーディングしたレコードのことなど(ベーシスト・山内哲)
・ROCK IN JAPAN レコード・話題・人間訪問:
  フラワー・トラヴェリン・バンド(東郷かおる子)



目次に並ぶラインアップ、この時代ならではという感じがします。
日本国内の音楽業界の方やミュージシャンが登場するエッセイのコーナーには、山内哲氏の登場、また、人間訪問という
インタビュー・コーナーには、フラワー・トラベリン・バンドのインタビューもあります。
この72年というのは、日本のロック・ミュージシャンが、ようやく海外での活躍をするようになった時代でもあるのですね。

せっかくですから、この号で取り上げられている洋楽のヒット曲や最新アルバムもリストアップしてみます。


・レッツ・シング(P152 - 153)
  孤独の旅路
ニール・ヤング 
  愛のつまづき
フォーチュンズ

・アルバム・コーナー 今月のML推薦アルバム(P188 - 194)
    話題盤を含めて、計32枚の紹介

  今月の話題盤:こわれもの/イエス

  そのほかの主な新譜:
   ルーツ/カーティス・メイフィールド

   アイランド
/キング・クリムゾン
   踊るヴァイオリン群とエレクトリック、そしてボーカルは如何に/E.L.O
   愛のわかれ道/ブレッド
   イッツ・ア・ビューティフル・デイイッツ・ア・ビューティフル・デイ
   ババクー厶・リー/フェアポート・コンヴェンション
   四季/マグナ・カルタ

・ブレイクアウト・シングル これがヒットだ!(P131 - 136)
    ベストテンを含めて、計30枚の紹介


  今月のベスト・テン:
   バック・オブ・ブガルー/リンゴ・スター
   ファミリー・オブ・マン/スリー・ドッグ・ナイト
   ラウンドアバウト/イエス
   ラニング・アウェイ/スライ&ファミリー・ストーン
   ラン・ラン・ラン/ジョー・ジョー・ガン
   名前のない馬/アメリカ
   可愛いダンサー/エルトン・ジョン
   ネヴァー・ビフォー/ディープ・パープル
   バングラ・デシュの歌/ジョーン・バエズ
   ジャン・バラヤ/二ッティー・グリティー・ダート・バンド

  そのほかの主な新譜:
   5セントの歌/メラニー
   孤独のリズム/サンタナ
   チェンジ・ザ・ワールド/テン・イヤーズ・アフター
   
アローン・アゲイン/ギルバート・オサリヴァン
   知りもしないで/アル・スチュワート
   別れの時まで/エルビス・プレスリー

   悲しきハプニング/ショッキング・ブルー
   果てなき想い/ディオンヌ・ワーウィック

   ライオンは寝ている/トーケンズ(再発売)


では、ピンク・フロイドです。再来日の東京公演カラーグラビアと、それぞれのページのキャプションから引用します。
今回の記事のメインのはずが、ほかのあれこれで最後になってしまいましたが、まぁ、食後のデザートみたいなものだと思ってください……。


P37

PINK FLOYD ON STAGE JAPAN

総量7トンの機材を運搬してきた今回のピンク・フロイドのステージは、照明効果をうまくあしらった興味あるものだった。ただ事前にライト・ショウと発表されていたため、もっと派手なものを想像していった人達には、もの足りなかったようだ。機材の特製を研究しつくした技術陣の巧みな操作にも拍手をおくりたい。


P38 - 39

PINK FLOYD ON STAGE JAPAN

デイヴ・ギルモアのギターがますます冴えていたのが印象的。テープを使い、照明効果をフルに活かしたピンク・フロイドのステージは、ナマ演奏をききながらレコード演奏をきいているような奇妙な感じをうける。一名ドラッグ・ミュージックといわれるのもうなずけよう。


では、ここで当日の演奏を聴いてみましょう。
音源については、ひとつ前の記事と同じく、cinnamonさんの全面的ご協力をいただきました。
3月6日東京都立体育館でのライブというところは前の分と同じですが、こちらは、会場のオーディエンス録音を放送したFM東京の番組がソースになっています。

『狂気』プロトタイプ(アルバム発売の約1年前)を終盤近くまでまるごと流していたというのもすごいですが、最後の“D. J. Talks”で解説を聴くと、「えっ? なんでそうなるの?」……という感じです。
正式な放送権なしでオンエアに至ったことがうかがわれますが、それはラジオ局内でじつに頭の回転のいいひとたちがやってくれた仕事なのだということが、よくわかります。それゆえで、40年あまり後の時代のわたしたちの耳にも届いてくれたりするわけですね。

オリジナルソースの録音状況や収録ディスクの詳細については、cinnamonさんの最新ブログ記事↓をごらんいただければ幸いです。


Data: Pink Floyd - Dark Music (Sirene – 118)



拍手が手拍子になってゆくオープニングです。

Speak To Me (00:57)

Uploaded on Apr 4, 2013 by xcinnamon000


このあたりはスタジオアルバムに結構近いんですけど…

Breathe (02:52) ■

Uploaded on Apr 4, 2013 by xcinnamon000


アルバムのシンセサイザーものとは全然違う曲になってて、ジャズロック風なのです…

On The Run (05:56)

Uploaded on Apr 4, 2013 by xcinnamon000


このあたりはかなり仕上がってる感じ……でも女性コーラスがないんですよね(サックスもまだ入ってない時代です)。

Time (06:16)

Uploaded on Apr 4, 2013 by xcinnamon000


Breathe (Reprise) (01:03)

Uploaded on Apr 4, 2013 by xcinnamon000


ここではクレア・トリーのスキャットではなく、聖書の一節を朗読。リック・ライトのオルガンが教会のミサのような雰囲気で荘厳に響き渡ります。

The Great Gig In The Sky (03:59)

Uploaded on Apr 4, 2013 by xcinnamon000


金属音が多めのイントロには、動物の鳴き声も入ってます(犬みたいですけどたぶん豚ですね)。

Money (07:43)

Uploaded on Apr 4, 2013 by xcinnamon000


ML72年4月号別冊P55 今野雄二氏評〈“Me and You……” “Black and Blue……” “Up and Down……” “With, Without……” という反意語を並べた歌詞の部分、デイヴが自分のウラ声のスキャット・ヴォーカルにユニゾンでギターを重ねていく部分などを経て、曲は終結部へ進んでいく。

Us and Them (01:19)

Uploaded on Apr 4, 2013 by xcinnamon000


D. J. Talks (00:11)

Uploaded on Apr 4, 2013 by xcinnamon000


もしかしたらテープの都合によるものかもしれませんが、どうやら放送時間の都合があったらしく、Us and Them (01:19) の途中までの収録になっています。いたしかたないですね。こういったbootディスクにはありがちなことですし、40年あまり前にこれをオンエアして下さった方やエアチェックして下さった方の気持ちを、今のわたしたちも共有しているということなんです。

このあとの、デイヴのギターがきれいな ”Any colour You Like ”については、いずれまた別の機会に、別の会場での音源を……。
Brain Damage (04:05)、Eclipse (02:43)は、「ミュージックライフ1972年4月号…ピンク・フロイド別冊付録の再来日レポート(2)」のほうで、この3月6日東京のオーディエンス録音がソースの音源を紹介していますので、そちらをどうぞ。





P40

PINK FLOYD ON STAGE JAPAN

第1部のステージでは、えんえん50分に亘って新曲“ザ・ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン”を聞かせ、第2部ではおなじみのナンバーをたっぷりと披露してくれた。熱のこもったステージとはウラハラに、東京では会場が寒くて、全員ふるえ上っていたようだ。


デイヴのステージ衣装は、オフタイムと同じみたいですね。前号、4月号別冊付録の写真特集ではモノクロでしたから色がわかりませんでしたが、うすいインディゴブルーのセーターです。

箱根のときも寒かったらしいですね、夏場ではあっても日が暮れてからの山のなかで、霧も出ていたということですし。
この東京体育館は早春ですが、なぜ寒かったのかというと、改装前でまだ暖房がなかったからだそうです。
シンコーミュージッックMOOK『ロックジェットvol24(2006年6月発行、特集:ピンク・フロイド讃歌)のP86上段、夏川翠氏のロングエッセイ「あなたがここにいて欲しい」にも、そのことが記されていました。
ちなみに夏川氏がフロイドの追っかけを楽しんでいた頃を含めて私的なフロイド史をふりかえるこのエッセイ、今現在はネット上でも閲覧できます。興味のある方はどうぞ。

ピンク・フロイド あなたがここにいて欲しい(その3)(夏川翠の「ネット図書館」)

こちらは、当日のライブを体験した当時高校生のファン、エンブリオさんのレポート。
1曲ごとのロジャーたちのステージ上の動きやしぐさなどが、具体的にくわしく語られています。心臓の鼓動があらゆる方向から聞こえてきたというオープニングから、アンコールのまえにはどの曲にするかでメンバーが口論になりそうなくらい話しあっていたというところまで、とっても臨場感のあるレポートです。

僕は4人フロイドを観た(PINKオヤジの客間 フロイドの2度目の来日公演)



2013.04.04 執筆
2013.04.07 更新
後半に写真解説・参考資料・ライブ音源embedの追加