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今回は菱食の業績表の検討から始めることにしよう。
すでに、業界の分析(1)から(6)までを読んできた読者は、卸売業に対する理解が進んでいると思う。簡単に整理すれば、一般的に不用と思われている卸売業だが、小売業の競争力の基本ともいえるマーチャンダイジングやロジスティクスを、日本においては卸売業が高度化させたことによって、小売業の競争に大きな影響力を及ぼし、なくてはならない存在となっている。
その結果、卸売業はこの数十年間、コンスタントに右肩上がりの利益成長を遂げてきた。しかし、十数年に一度、メーカーのコストアップによって業績が悪化する局面を迎える。今回は、05年度、06年度と07年度の前半までがそれに当る。そして、08年度、09年度と大幅な回復を見せ、間もなくほぼピークの利益水準まで戻す状況にある。その後は、中長期成長率の巡航速度である5-10%の利益成長ラインに復帰しよう。
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このような背景から菱食の業績も07年度の第4四半期から回復に転じ、営業利益は08年度も22.3%増益、09年度も現時点の会社予想は29.1%増益となっている。しかし、業績表にあるように、終わった第3四半期までの累計の営業利益は、前年同期比33億円の増益である。通期の会社計画は22億円の増益であるから、すでに第3四半期で増益幅がオーバーしているのである。
前回、解説したように大手3社の業績推移を見ると、第4四半期が減益になるとは考えにくい。そこで、表にあるように仮に第4四半期を4.5%の微増益に置いたとしても、通期の業績は会社予想の29.1%増益から47.4%増益に増額修正となる可能性が高い(業績表の参考予想)。さらにもう少し上の業績が出てもおかしくないのではないかと考えている(業績表の上限予想)。
ただし、菱食のややこしいところは、他の四半期と比較して、極端に第4四半期のウエイトが高いところである。同社では、第4四半期にかなりまとめてメーカーからのリベートが計上されるため、それによって業績が大きくぶれる可能性がある。業績表に第4四半期の数字だけを抜き出してあるが、06-4Q、07-4Qと大きくぶれているのがわかる。しかも、前回説明したように、本来なら08-4Qは卸売業の業績が急速に良くなった時期であり、高い伸びでもおかしくなかったはずだが、微増益にとどまっており、かなり読みにくい会社である。
そのように、もう間もなく閉めとなる数字が読みにくい上、同時に公表される来期の数字を考えるということ自体無茶であるが、また来期の数字の出方で、その後の株価の動きは大きく左右される。菱食の場合、加藤産業(9869)とやや異なるのは、業績が悪い時期にかなり低温帯関係で先行投資をしていたということがある。そのため、業績の落ち込みが加藤産業より大きくなっている。それが、徐々に実り始めており、来期の会社計画はやや高めになることも考えられる。仮に業績表にあるように、来期の会社計画が上限予想に近ければ、会社自体に対する市場の評価もかなり高いものになろう。ただし、やはり最近になって、小売業の競争が厳しく、市場環境も厳しくなっていることから、会社側も慎重になっているので、そこまでは出さないかなという気もする。
この会社は世の中が当ブログで説明したような事業の本質を余り理解していないこともあり、業績がいいときに会社のプレゼンを聞くと本当にいい会社に思えてしまう。そのため、時としてかなり高いバリュエーションがつくことがある。1999年のITバブルの時には、セブン・イレブンやヤマト運輸がITの恩恵を被る企業として高評価を受けたが、この会社もその1社であり、当時はPER50倍まで買われた(下図参照)。今回も、来年の2月に決算が発表されるときに、景気に対して悲観論が渦巻いていて、上述の上限値の予想を同社が出してきた場合には、市場の評価が一気に高まることもありえよう。ただし、現時点ではその可能性は50%以下であるが。
ただし、そうなってしまってからでは、いくらファンダメンタルから極めようとしても、もはや不可能である。業績を予想し、それに対してある程度市場がどう反応するかまでは、予想可能である。しかし、市場の過剰反応がどの程度であるかは、予測不可能であるし、そのときの市場環境にも左右される。ところが、市場参加者の多くは図の緑で囲んだところでアナリストの意見を求めたがる。
アナリストとすると、図の赤い点線で囲んだところで頑張って市場に訴えるのであるが、あまり見向きもされない。当時も上期決算が終わった8月の時点で、下期以降の業績に対して強気に転じて、株価に対しても強気に変わったのであるが、そこから半年間株価は軟調が続いた。結果的に2月初旬に日経新聞に終わった期の観測記事が掲載され、そこから算出した下期が当初見通しとは異なる大幅な増益であったことから、株価は急騰して、最後はとんでもない株価になったのである。
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今回は、条件が揃えば、そのチャンスかなと考えられるので、これまで解説してきたとおり、1月下旬に株価が売られたところを仕込むという戦略をくれぐれも忘れないように。もちろん、日経平均が1月末に12,000円になっていたとしたら、やや高めで我慢して買わなければならないかもしれないが。
以上をもって、産業の分析:加工食品卸売業編を終わりにする。ながながとお付き合い頂きありがとうございました。
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