アリアケジャパンの第4回目となり、いよいよ今後同社の高成長を牽引する欧州での事業展開の話に入る。

 欧州での展開に当って、ひとつの重要な役割を演ずるのが、高名な三つ星レストランのシェフであるジョエル・ロブションとのコラボレーションである。

 同社は97年に大規模な設備投資を行ったが、その後200011月には工場に併設してR&Dセンターを作った。そこに高級レストランのシェフがやってきて、厨房で行っているのと同じやり方でフォンドボーやスープベースを作る。同社はそのやり方をそっくり真似て、工場で同じ味を再現するのである。このようにして、ホテルなど高級レストラン向けに特注のソースやスープベースを供給している。レストラン側にとっては同社にアウトソーシングすることで、人件費を大きく削減できるメリットがある。

 しかし、そのことによって肝心の味が落ちてしまえば本末転倒となる。このような商品に対して、メーカーに要求される技術、コストは極めてシビアなものになる。そのような高度な要求に応えられるのも、同社ならではである。前回、欧州にはおいしい加工食品やデリカがないという話をした。しかし、おいしいレストランは無数にある。この差を埋めるのが、職人技を工業化する技術である。つまり、欧州にはその技術に優れた企業がないということになる。

 同社のその技術力の高さに目をつけたのが、ジョエル・ロブションであった。同氏は説明するまでもなく高名な料理人であるが、もちろん知らない人も少なくはなかろう。実は私も知らなかった。Wikipediaによれば、1945年生まれで、1974年に「オテル コンコルド・ラ・ファイエット」総料理長に就任。1981年に独立し、「ジャルマン」開店、1984年史上最短でミシュランの三つ星を獲得。世界各国のレストランをプロデュース。日本でも恵比寿、六本木などにレストランがある。

 欧州ではロブションがプロデュースしたブイヨンを業務用として販売する。また、共同開発した冷凍食品をロブションブランドで消費者向けに販売。ただし、これらはあくまでロブションを広告塔として使うという位置付けのほうが大きく、ビジネスとしてウェイトが高いのは加工食品メーカー向けである。その加工食品メーカー向けもほぼ目処が立っており、来期には本格的に立ち上がってくる可能性が大きい。

 

 ただし、同社にとっても本格的な海外展開であり、特に欧州の地は初めての経験であったため、これまで計画が延び延びとなってきた。最初の青写真では2005-06年辺りには売上が立っているというものであった。しかし、実際のビジネスに取り組んでみると、経験不足による読み違いが次々と出てきた。まず、欧州の政府による土地取得、工場認可に時間がかかったことがある。さらに、販売に当っては各国ごとに認可を取得しなければならず、ここで再び想定以上に時間を取られた。

 このようにして延び延びとなっていた工場が、ようやく稼働したのが086月である。ベルギーに原料工場、フランスに最終製品工場と製造技術も同社の総力を結集したものを建てた。調味料の世界では衛生基準が最も高いのが欧州、次いで米国、最後がアジアという序列になる。つまり、欧州で製造した商品は米国、日本に持ち込めるが、逆は不可能である。そのため、サンプル供給が可能となった086月から本格的な顧客との商談、商品開発がスタートした。その時点では、09年秋には本格発売という見通しであったが、世界的大不況でやはり数ヶ月延びてしまった。よって、欧州での売上が本格的に立ち上がるのは年明けからであり、売上拡大が業績への寄与となって表れるのは来年夏辺りと見ておくのが無難ではなかろうか。

 日本の1990年代においてもそうであったが、まずどこかの食品メーカーに使ってもらうまでは時間がかかる。しかし、最終的に同社の味を消費者が認めれば、業界内での評価は急速に高まり、それまでの苦労が報われるときがやってくる。私は、同社は1990年代から2000年代にかけて日本で見せたような高成長を、やはり欧州でも成し遂げると考えている。

 

 欧州の立ち上がりは、当初の見通しと比較して遅れに遅れてしまったが、一足先に国内が回復に転じ始めた。かつての国内における同社の成長は顧客数の増加が主たる要因であった。しかし、同社製品がかなり行き渡ってしまったこともあり、その後急速に成長性が低下した。そこで、同社ではここ12年、特に外食関係の顧客内でのシェア拡大作戦に出た。先に少し触れたが、顧客が仕入れている調味料関係を同社に1本化することで、極端に言えば半額にできるという説得手段である。同社の限界利益率は従来と比較して多少下がるが、売上合計が増えることから、営業利益率は上昇するという戦略である。

 それまでは同社の営業マンが顧客の購買責任者と商談していたが、まず経営トップ同士で話し合って合意形成するやり方に変えた。また、外食向けには主としてレディーメイド製品を販売していたが、経営者と合意してから、担当者レベルでの共同開発型に変更している。これまで若干時間がかかっていたが、その努力がここに来て業績面に表れてきたというわけである。

詳細は次回に業績表の分析で述べるが、06年度3Qから減益に転じた連結営業利益は06年度4Q以降09年度1Qまで9四半期二桁減益を続けた。ただし、09年度1Q28%減益だが、前年度に営業外で落としていた欧州工場の稼働前費用を営業費用としたためであり、実質的にはほぼ横ばいであった。そして、09年度2Qには一転40%増益となっている。海外は依然寄与度は小さく、この増益要因は国内の回復である。

 次回は、アリアケジャパンのまとめである。当面の業績動向及び株価の考え方も含めて述べることにしよう。

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