基本的に当ブログではできる限り難しい話をやさしく解説するよう心がけるつもりだが、何せ慣れていない面もあるため、しばらくはそのことが気持ちだけにとどまってしまうかも知れない。つまり、少し難しいこともあるが、我慢してもらいたいということである。
さて、今回のテーマは、株はなぜ動くのかという点について述べる。多分、この問いかけを10人にすると、7、8種類の答が返ってくるだろう。そして、その多くはこれだけの質問であればおそらく間違っていない。しかし、ここで考えるのは、その答の中の最も大元にある原理原則である。これを理解しておくと、なぜ株価を予測するのに、企業分析をするのかがきちんと押さえられるのである。それでは、始めよう。
-株式会社と株式-
株価に発行済み株式数をかけたものが時価総額で、これが企業全体の値段となる。ここでは、この企業の値段について考える。
-複式簿記-
株式会社では企業の活動を示すために複式簿記という方法を用いている。複式簿記の主要なものが、貸借対照表(BS:バランスシート、表のAとC)と損益計算書(PL:プロフィット&ロス、表のB)である。このほかキャッシュフロー計算書というものもあるが、今は触れない。
-企業の利益(BSとPLの関係)-
まずここでは、ある人が100万円の自己資金を元手に時計店を始めたことを例に、BSとPLの関係を見ることにしよう。初めに敷金50万円を払って店舗を借り、残りの50万円で店舗を改装した。そこで、自己資金がなくなったので、銀行から100万円を借り入れた。そのうち80万円で1個2万円の時計を40個仕入れ、手元に20万円の現金が残ったとする。
ここまでが、期初の状況であり、これをBSに表したものが表Aとなる。左側が現在の資産を示しており、右側がその資金の出所を示している。なお、ここでは元手の100万円を資本金としている。
さて、この状態から第1期目の事業を始める。1個2万円で仕入れた時計が当期中に3万円で30個売れて、10個は在庫として残った。当期中に社長の給料や光熱費、家賃など諸経費が20万円かかったとする。また、銀行に借入金の利息5万円を支払った。その結果、当期中に5万円の利益が計上されることになる。計算を簡単にするため、減価償却費や税金はないものとして、この会社の価値がどう変化したか考えてみよう。
当期の事業の損益内容を示したものが表BのPLである。売上高が90万円、経費が80万円かかって、10万円の営業利益となり、そこから5万円の利息を払った残りの5万円が利益となる。
そして、このように1期目の事業が終わった後のBSがCである。資産合計は期初の200万円から205万円に増えた。借入金は100万で変わらず、株主資本合計が期初の100万円から105万円に増加している。
それでは、この会社の価値は1期の決算が終わった後にどのように変化したのだろうか。ここで企業の価値としたが、企業の価値の尺度にはさまざまなものがあり、価値と言ってもひとつではない。ここではこの価値を最も単純に株主資本合計としてみる。この会社は100万円の資本金でスタートしており、スタート時点の価値は現金である100万円と同等と考えることができる。そして、第1期目が終わった後の株主資本合計は105万円になっているので、期初の100万円の価値が105万円に増えたと考えられる。これが、企業価値の変化の原理原則である。
それに対して、この企業の値段(つまり株価に相当)はどう動くと考えられるだろうか。スタート時点は100万円のキャッシュであるから、これはやはり100万円の値段と考えるのが妥当であろう。1期後に資本が105万円に増加したのであるから、基準はこの105万円となる。それに対して、内部環境、外部環境の変化を加味して値段の基準を考えてみよう。まず、1期間事業を行ったことによって、実際に購入した顧客に加えて、買わなかったけれども買う意思のある見込み客がいるはずである。これは、基準の価値に上乗せして考えられる。一方、仮に近所に大型の時計店が出店したとしたら、かなりのマイナス要因となろう。このようにして、基準となる値段が決まる。
一方、その企業に値段をつける投資家の状況にも時と場合によって違いがある。例えば、1期前と比較して金回りが良くなっていれば、事業に投資する余地が広がることになるので、値段は基準よりも高くていい。その逆で、金回りが悪くなっていれば、低くなる。
これが株価変動の原理原則である。
ここで、企業の値段/企業の価値(株主資本)はPBRに相当する。しばしば投資尺度としてPBRを用いることがあるが、ここに示したメカニズムがその背景である。このことを理解しておけば、単にPBRが低ければなんでもいいわけではないことが理解できよう。つまり、PBRはかなり有効な指標であるが、他の条件との兼ね合いを考慮して用いることで精度が高くなるのである。
さて、今回はとてもややこしい問題からスタートしたが、これが感覚としてわかっていると、株に対する取り組み姿勢にしっかりとしたものができるのである。
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