歴史小説の世界において吉川英治と並ぶ大人物です
今更、説明不要かもしれませんが、結構、読まず嫌いの方も居られると思うのでそこはよしなに

まず、最初に断っておきたいのは、文体と内容とのイメージから大きく離れているという事です
司馬さんの作品は概して、文体は古臭く堅苦しいものである事は疑いようの無いことです。文章のひとつひとつが質実剛健であり、現代風の柔らかな表現は見当たらず、字面だけを追うならば、恐らく私のもっとも苦手な部類の作品に当たるでしょう
しかしながら、この人の作品に時間をかけて向き合って読んでいると、その堅苦しい表現の中から、なんと人間性豊かな登場人物が出てくるのでしょうか
歴史小説について多くを語れるほどたくさんのものは読んでいませんが、先に挙げた、吉川英治の「三国志」なんかですと、やはり司馬さんの作品と同じく、堅い文体で終始、書き進められていて、そこに出る主要な人物は皆、すごく文体に合ったような剛直な性格を持つ者ばかりで(前半部分の主人公、劉備玄徳はそうとは言い切れませんが強い信念を持っているということで)、たまに出てくる意志薄弱の者は信念が弱い三下のような扱いです。(作品はすごい面白いので悪しからず)
しかしながら、司馬さんの作品ですと、そんな意思の弱い者ですら、魅力的に書き上げてしまうんです
その最たる例を、今まで読んだ作品の中から選ぶのなら「戦雲の夢」を挙げようと思います
この作品、主人公は自分の意思に反して大名となり、その事からたくさんの火の粉を浴びるはめにあうのですが、普通の歴史小説などの主人公であれば「望むところよ!」みたいな感じで事に挑むのでしょう
しかし、この主人公、そんな感じは一切なく、覇権などに興味を持たず、ただただ、面倒ごとが増えて大変だと言わんばかりです。それでいて、この時代の大名では有りえないほど配下想いでとても気の優しい人物に描かれているのです
実際、現存する資料で調べても性格なんかは推測するしかない訳ですが、ここまで人間臭く推測し描く人は私は他に知りません

一度、読んでみてくだされば、この一見、支離滅裂な書評も納得いただけるかと思うので、私の文章力を疑う前にひとつお願いしますw