あれは、5月の連休だった。
高校の同級生が久しぶりに帰ってきてて、自慢のバイクに乗せてもらって、遊びに行った帰り。
うちの近くには、海をちょっと埋め立てて造った船着き場があって、漁船がいっぱい繋がれていた。
その中に、どんな時に使うのかわからないけど、ボートみたいな船も繋がれていた。
友達と二人、コンクリートに座って海を眺めながら、近況など報告しあっていた。
普通に日が暮れて行く。
なのに。
突然彼が話すのを止めてニヤニヤ。
なんだろうと思って、彼の視線を追う。
ボートみたいな漁船の近くに麦わら帽子が浮いている。
何が面白いと?
彼が笑いを堪えながら説明してくれた。
船の上でおっちゃんが何か作業してたら、被ってた麦わら帽子が風で飛ばされて、海に落ちたらしい。
おっちゃんが、帽子を取ろうと船から身を乗り出していたら、そのまま海に落ちたらしい。
私が見たのはその麦わら帽子。
なんで、そんな場面を見逃したのか、自分の間の悪さを呪った。
しかし、想像力でカバー。
もう、たまらん。
二人とも我慢できずにゲラゲラ笑い出した。
我慢できずに大声で笑っていた。
「そこのカップルー、笑うなー!」
声の方を見ると、ずぶ濡れのおっちゃんが。
麦わら帽子を持って立っていた。
やばい!!!
笑いを必至で我慢していると、おっちゃんが近付いて来た。
「あんた、うららさんとこの、はるやろ。」
なんで知ってると?
「おいは何でも知っとるけん。」
やばい逃げられない!
でも面白い。
やばい面白い、やばい面白い…。
あー私どうしたら・・・。
私が固まっていると、
「デートの事は黙っとくけん。」
そう言い残すとおっちゃんは去って行った。
いえ、デートでは…。
おっちゃんは振り返らない。
夕日に照らされたおっちゃんの背中は、ずぶ濡れだった。
遠くまで見送った。
おっちゃん、泳ぐにはまだ早いよ。
5月だよ。
おっちゃん、誰だかは今でもわかんないけど、
グッドラック。
au one gree 2008/02/28