頂上に着いたのは夕方の5時頃だった。
家に帰るためには、今登った分降りなきゃならない。
気が遠くなる。
そして、寒い。
とりあえず、山頂で食べようと持って来た甘いパンを食べる。
甘い、しかし寒い。
降り始めてから暫くは、砂利みたいな道が続いていて、急な斜面を横へ行ったり来たり。
道は幅広く造られていたけど、端の方から見下ろすと崖みたいだ。
落ちたら死ぬのかも。
日が暮れて来た。
霧が晴れて、雲が海みたいに見える。
夕日の色の雲がどこまでも続いていて、世界の果てみたいだった。
とても奇麗だったけれど、不安にもなった。
砂利道が終わると、砂走りとか言って、砂、砂、砂、たまに突出た石みたいな道というか、道。
周りはドンドン暗くなって、とうとう真っ暗になった。
頼りは足元を照らすピエールが持ってきた懐中電灯だけ。
私のは…、
宿で彼が懐中電灯を用意している時、「そんなんいると?」と言って、重いからと持って来なかった。
ごめんと言ってみたけど、そんなんじゃ済まないと思った。
遭難するんじゃないかと本気で思った。
足が疲れて、もつれて、滑ったり転んだりしながら、真っ暗い中をずっと歩いていた。
転ぶ度に、「ほっといて先に行ってください。」って言ってた。
一刻も早く帰りたかった。
「下山道」と書いてある看板を、"しもやまみち"と普通に読んでしまった自分がおかしかったが、そんなのどうでもよかった。
暗くて静かで、周りに何もないのが、怖くてしょうがなかった。
朝、杖を買ったお土産屋に着いたのは何時だったかも覚えてない。
とにかく、帰って来れて良かった。
頂上で朝を迎えるために登って行く人達を見送る。
「めちゃ遠いですよ!」と心の中で声を掛けてみる。
たぶん、そんなのみんな知ってると思うけど。
帰りの車で、ごめんとありがとうを繰り返して帰った。
何にしても、無事に帰って来られて良かった。
家に帰ってきたら、辛かった事もすっかり忘れて、「また登ってみたいね富士山。」なんて言ってしまう自分がいる。
大体決まって「懐中電灯は重くてもちゃんと持って行ってね。」とピエールは言う。
持って行きます。
防寒も、もちょっとちゃんとやります。
前の日から準備します。
そしてできたら、後先考えられる大人になりたい。
au one gree 2008/02/27