私はなんでも安易に考える。
それ故、物凄くたいへんな目に遇ったりする。
その代表格が富士山だ。
富士登山。
みんな登ってるから、なんか自分も登れるんじゃないかという幻想に執りつかれ、小学校の遠足ぐらいの勢いで、ピエールを口説き落とし、登る事になった。
私の中では…、
頂上まで遊歩道みたいなのが整備されていて、みんな一列に並んでドンドン登って行く。
登るのに3時間ぐらいかな。
朝から登って、昼過ぎに頂上で軽くごはんなんかを食べて、ま、疲れてるだろうから、宿には晩ご飯の時間ギリギリに着いて、旅館の人に"すみません。"なんて謝りながら、でも旅館の人も"いいんですよ。"なんて、ごはんを食べさせてもらって、風呂にゆっくりつかって、早めに寝る。
みたいな事になっていた。
そして、ついに登山当日。
富士山はよく写真で見るような富士山だった。
杖はお約束ってかんじで買って、余裕で登り始めた。
この山の中を抜ければすぐ頂上のはず。
暫くすると、なんだか変な風景に気付いた。
山がなかなか終らない、富士山もさっきと同じ、ぜんぜん近付いてもこない。
こんなに歩いているのに。
腹も減ってきた。
もう着いてもいいんじゃない?
ようやく山も抜けて岩場みたいなエリアに入った。
富士山はまだ写真のまま。
岩場を抜けると今度は砂。
足を取られて歩きにくい。
ドンドン寒くなってくる。
雨も降って来た。
"山の天気は変わり易いぜ。"なんて冗談を口にしても、内心はもう頂上まで辿り着けないんじゃないかと不安でいっぱい。
でも、誘ったのは私。
それは口に出せない。
しかし、疲労は頂点に。
自分の親のような年代の人達にドンドン追い抜かれていく。
みんな晴々とした笑顔で挨拶を交わす。
途中の山小屋で休憩する度、このまま降りた方が楽なんじゃないかと頭を過ぎる。
でも、降りても歩く事には変わりない、登るか降りるか、どうせ歩くなら、登るしかない。
途中で引き返す勇気もない。
登るしかない。
"山小屋で一泊して、残りは明日登る?"とピエールが聞く。
そんな事したら、明日は疲れと筋肉痛で起き上がれなくなってしまいそう。
どうしても、今日、今、登るしかない。
長い休憩は、私には危険。
短く休憩を取ってもらいながら、ひたすら登る。
まわりの景色を楽しむ余裕もない。
寒い、足が重い、辛くて涙が出てくる、鼻水を拭く気力もない。
女の子なのに。
どんな顔で登っているのかもの凄く気になる。
けど、それをどうする事もできない。
自分も同じぐらい疲れているのに"大丈夫?"なんて聞いてくるピエールに、また涙が出た。
"あとどれくらい。"、"あともう少し。"と励ましてもらいながら、足を交互に前に出す。
それが全て。
他に何も考えられない。
最後に、落ちたら死ぬんじゃないかと思うような、岩場を登り、やっと頂上へ。
やっと平らな地面が。
フラフラしながらその地面を歩く。
どんなに辛くても、てっぺんまで行くと決めたら、行ける。
私、証明できた。
やっと着いた。
やっと…。
「すみませ~ん。」声がする。
見ると若者二人組み。
「写真撮ってもらえませんか~?」
なんて、元気なんだ君達。
おばちゃんもうヘトヘトよ。
なんて、言える気力もなく、「いいですよ~。」
鳥居の前で記念写真を撮った。
どんなに疲れていても、いい人でありたい。
という、願望。
au one gree 2008/02/26