文化庁生活文化普及支援事業に将棋が選ばれ、各地で親子ふれあい将棋教室が開かれていますね。
我が家も先日、飯島先生の広尾のイベントに参加させていただきました 。
書こうかどうかしばらく迷っていたのですが、やはり書いてみようと思います。
あらかじめおことわりしておきますと、現在各地で将棋教室を開かれているみなさまの、普及のためのご尽力に異をとなえるものではありません。
せっかくの予算と機会なので、もう少しこうしたら、もっと効果が出るのではないでしょうか、という、いちファンとしての提言として読んでくださったらたいへんありがたいと存じます。
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企業で何か新しい製品を発売したり、自社の事業や商品の啓蒙活動を行おうとするときには、あらかじめマーケティング活動を行うことが多いと思います。
すなわち対象となる商品を
①どんな人たち(国籍、性別、年齢、住んでいる地域、趣味や嗜好などなど)に知ってもらいたいのか、あるいは買ってもらいたいのか(ターゲットの特定)
②その対象となる人たちは、どれくらいの数がいて、どれくらいの頻度で買ってくれるのか
③手にとってもらえない、買ってもらえないとしたらその理由は何か
③ではどうしたら興味をもってもらえるか、買ってもらえるか
その上で、対象となるマーケットが何人で、市場規模はいくらくらいで、そのうちの何%くらいが実際に買ってもらえる(シェア)といくらくらいの売り上げになって、するといくらくらいの利益があがるから、そのうちの何割をセールスプロモーション活動に使えるか。
そんなことを計画、立案するために、通常は様々な仮説をたてますね。
コムズカシイ話は置いておいて、これを今回の親子ふれあい将棋教室に置き換えると、
最大の目的は、間違いなく、『将棋の普及』特に子供たちとその親に対する普及ですね。
でも、子供たちといってもさまざまです。
将棋をみたことも聞いたことも、もちろんルールなんて知らない子供たちをターゲットとするのか、ある程度将棋はできる子供たちに、教室などで本格的に将棋を学ぶようになってほしいのか。
ターゲットとする子供の棋力や年齢などが設定されたら、今度はその子供たちに、イベントのことをどうやって告知していったらよいのか。
せっかくの親子ふれあい教室の開催も、将棋にまったく縁のない子供たちのところまで、開催情報が届くような体制になっているのでしょうか。
そもそも、『どんな状況になれば、普及活動が成功した』と言えるのか、すなわち『目指すべき姿』『あるべき姿』とはどんな状況なのでしょう。
別の視点で、もしも子供が将棋を敬遠するとしたら、その理由はなんでしょう。
私なりの仮説は、いきなり強い子とばかり指してしまい、ちっとも勝てないので、将棋の楽しさを知る前に嫌いになってしまう子が多いような気がします。
他方、もしも親が敬遠するとしたら、その理由はなんでしょう。
この問いに対する仮説は、「将棋にまだまだ『暗い』『ダサい』イメージがあるかなあ」と。
でも一方で、将棋は日本人なら誰もが認める日本の伝統文化ですから、「将棋くらい指せるほうがいい」と考えている親も多いと思います(現に私たちがそうでした)。
日本の伝統文化にふれようという名目と、ひょっとして脳の発達によいことがありそうだ、という教育的効果は、親心を上手にクスグるような気がします。
そんなたくさんの仮説と、普及活動によって実現したい「あるべき姿」が明確に設定されて初めて、有益なプロモーション、すなわち普及活動が実現するように思います。
そして、マーケティングと同じくらい大切なのが、実際の開催(アクション)に対するチェックと振り返りだと思います。
イベントにはどんな属性の子供たちや親たちが参加し、その人たちはその後、継続的に将棋に触れてくれるようになったのか。
逆に継続してもらえなかったとしたら、その原因はどこにあるのか。
このトレースと反省がないと、せっかくの普及活動も単発に終わってしまうリスクが高くなってしまうと思いますし、次の普及活動がさらに洗練されたものになっていく機会を失ってしまうと思います。
この点においては、参加者の満足度の把握もとても重要だと思います。
主催者側が考える、満足してもらえるメニューと、はじめて将棋に接する親子が感じる満足では、微妙に質や内容が違って当然だと思うからです。
JTの大会は、東京だけで親も子もそれぞれ1,000人以上集める大きな大会ですが、そんなに大きな将棋大会は、私が知る限り他に例がありません。
JTの大会だけ、なぜそんなに子供たちが集まるのでしょう。
私はJTという会社が、CSR(企業の社会的責任)活動と企業イメージの向上をかねて、綿密なマーケティングと結果のフィードバック(振り返り)のもとに大会を運営されていることと、明確な相関があるように思っています。
だからJTの大会には、たしか保護者アンケートが配られていましたよね。
日ごろから将棋に熱心に取り組んでいて優勝を目指そうとしている子供も、将棋を覚えたての子供も、どちらも楽しんで帰ってもらえる。
それは簡単なようで、極めて難しいことのように思っています。
現在各地で開かれている親子ふれあい将棋教室は、間違いなく将棋の普及に貢献していると思いますが、その効果の最大化を図ろうと思ったら、もう少し綿密なマーケティングとイベント後のトレース、あるいは反省があったほうがいいのではないかと感じています。
普及活動の実践は各地の道場や指導棋士の先生にお願いするとしても、統一されたビジョンやコンセプトのもとに、活動の全体をコントロールするコントロールタワーがあってもよかったのではないか。
この点だけ見ても、将棋連盟はやはり外の風をもう少し積極的に取り入れたらいいのになあ、と思います。
そういうことに関しては超一流の、梅田さんのような方が少しずつ将棋界に関わるようになってくださっているのですから。
繰り返しになりますが、現在各地でご尽力されている現場の方々を批評する意図は毛頭ありません。
飯島先生の教室に参加させていただいたときに、まったくの初心者、あるいは初級者のお子さんたちが大半であったことは、うれしく、またホッとする出来事でした。
これだけの「初めて」の子供たちを集めるためには、相当の告知活動があったものと想像します。
私も、将棋を指す子供たちがもっともっと増えてくれることを願ってやみません。
そのために、大切な税金が使われて普及活動が行われるのですから、是非最大の効果が得られるよう、充実した、かつ継続的な活動となることを、新米ファンのひとりとして願う次第です。
懲りずに生意気なこと書いて申し訳ありませんが、ここまで読んでくださった皆様は、どのようにお考えでしょうか。