「Halちゃん、デートしようよ」
突然彼が言い出した。
彼が入籍した日の2日後のこと。
「今までデートらしいデートできなかったし、どこか出かけよう」
誰かに見られたらどうするの。
と、私は聞いた。
「見られてもいいよ。デートしたい」
彼なりの、覚悟だったのだろうか。
嬉しさと不安とが入り混じった不思議な感情。
水族館、行きたい。
恐る恐る希望を言ってみたら、いいよ!行こう!と彼は笑顔で言った。
次の土日車借りて来るから、行こうね。
前の日も泊まるからね。一緒にいようね。
そう言って彼は私を抱きしめた。
約束の土曜日、私はめいっぱいおしゃれをした。
彼が私を連れて歩いてて、鼻が高くなるように。
迎えにきた彼は褒めてくれた。
俺ももっとおしゃれすれば良かった、なんて少し不満げだったのが可愛かった。
途中の本屋さんで、ドライブ用のCDを買った。
歌いながら、笑いながら、ドライブがてら水族館に着いた。
車を降りてすぐ、彼は私と手を繋いできた。
少しぎょっとして、一瞬身構えたのを覚えている。
見られたら、なんて言い訳すれば
そんな私の杞憂も知らずに彼は手を離そうとしない。
正直にいうと、すごくすごく嬉しかった。
私は動物が大好きだから水族館や動物園がとても好きだし、とても楽しかったが動物に興味のない彼からすればつまらなかったかもしれない。
それでもはしゃぐ私を見て、楽しそうに笑っていた。
ときどき、人が少ないところでキスをした。
いい歳した大人が高校生のデートみたいなことをして、と思ったけどとても楽しかった。
途中大水槽の前で座って休憩していた時。
「写真、撮ろうか」
と彼が言った。
でも、私は後で見返したときに苦しくなるのが嫌だったから素直に言って、断った。
今でも少し後悔している反面、撮らなくて正解だったと思う。
夜は素敵なレストランで食事をして、そのままラブホテルに泊まった。
「大好きだよ、ずっと大好きだからね」
私を抱きながら何度も何度もそう言って、私はまた泣いた。
いつまでもこのままいれたらいいのに。
このまま時間が止まったらいいのに。
今月が終わらなければいいのに。
彼がずっと私のそばにいてくれればいいのに。
何度、何度願っただろう。
そんな願い、叶うわけないのに。
片時も離れないで、私たちはずっと一緒にいた。
朝一緒に起きて、一緒に仕事して、一緒に帰って、一緒に寝る。
幸せだった。
好きな人のそばにずっといられることが、幸せだった。
宝物のような時間だった。
でも、楽しい時間はあっという間だった。
もう一度でいいから、あの時に戻りたい。